2015年01月

【百田尚樹のメディア支配 独占スクープ!】疑惑発覚 たかじん未亡人の『週刊新潮』記事改ざん

 本誌先月号の「大特集 百田尚樹の正体!」は大きな反響を呼んだ。特に『週刊文春』が故・やしきたかじんの長女の手記を『殉愛』作家・百田尚樹の圧力でお蔵入りさせたことは、多くの人々に驚きを与えたようだ。
 作家タブーに右往左往する出版社系週刊誌だが、情けないのは『週刊文春』だけではない。週刊誌としては『週刊文春』と双璧をなす、新潮社の看板雑誌『週刊新潮』も負けず劣らず、酷(ひど)いものだった。

■疑惑検証をせずに「殉愛」コンビの主張を丸呑み
『週刊新潮』は13年9月から百田の連載小説「フォルトゥナの瞳」を掲載、その後単行本化している。そのため、新潮社に大きな利潤をもたらしてくれる百田は“大作家センセイ”であり、当然「殉愛騒動」に関しても同誌は沈黙を守ってきた。
 その禁が破られたのは14年12月18日号だ。「故やしきたかじん『遺族と関係者』泥沼の真相」との特集記事を掲載した同誌だが、その内容は思った通り百田とさくら夫人双方を登場させ、2人の一方的主張を垂れ流すものだった。コワモテとしてならした『週刊新潮』が、百田に最大限配慮したであろうチョウチン擁護記事――。
 だがしかし、同誌発売後の12月23日、百田は自身のツイッターでこう不満をぶつけたのだ。
「今、私がいくら本当のことを言っても、多くの人は聞く耳も持たないだろう。『フラッシュ』と『週刊新潮』にはすべて真実を話したのに、記事は全然違うものにされた」
 百田やさくら夫人に疑惑を釈明させ、それをほとんど検証もせず記事化したとしか思えない『週刊新潮』の記事だが、その裏で一体何が起こっていたのか。そしてどこが「全然違う」のか。
「そもそもこの記事は百田自身が編集部に持ち込み、ゴリ押しで掲載させたものでした。しかし、その後はトラブル、ドタバタの連続だったのです」
 こう話すのは「殉愛騒動」に詳しい出版関係者だ。『週刊新潮』編集部に百田から「ネットで騒がれているさくら夫人の重婚疑惑や筆跡鑑定について反論したい」と反論インタビューの依頼があったのは昨年11月半ばだったという。
「すでにネットでは、さくら夫人のブログや過去写真など数々の証拠物とともに多くの疑惑が流布していた時期でしたし、編集部としては触らぬ神に祟(たた)りなし。『殉愛騒動』などには一切触らず、やり過ごすという雰囲気だった」(前出、出版関係者)
 そんなところに降って湧いた百田本人からの取材依頼である。編集部としても自社から作品を出版する売れっこ作家・百田の依頼を無下に断わるわけにはいかない。
「しかも当初、百田が要求したのは、百田自身の単独インタビューだったようです。しかし、いくらなんでも百田の一方的な主張を掲載したら大きな批判が予想される。現場は頭を抱えたらしい。そして苦肉の策として、検証的な記事でさくら夫人を登場させるという線で百田を説得したのですが……」(前同)
 こうして出来上がった記事だったが、案の定、百田とさくら夫人の主張に沿っただけのものだった。
 例えば、さくら夫人の「たかじんとイタリア人男性との重婚疑惑」については、イタリア人男性との離婚届の受理証明書を掲載、12年3月1日に離婚が成立していること、さらにたかじんと結婚したのが13年10月であり“さくらさんに重婚の事実はない”と疑惑を否定させた。
 さらに、たかじんとつき合いはじめた後もイタリア人夫と仲睦(なかむつ)まじく結婚生活を続けていた(注:さくら夫人の過去ブログで判明)という不倫疑惑についても、「私とそのイタリア人男性は結婚の翌年の夏頃にはうまくいかなくなり、翌春には別居状態になっていました」(さくら夫人)などと、都合よく釈明させてもいる。
 さらに、たかじんが書き遺したとされる“たかじんメモ”の偽造疑惑に関しても、「この“疑惑”についてもすでに答えは出ている」と早々に“シロ”と断定した。
 しかし、その根拠は情報サイト「探偵ファイル」が依頼した筆跡鑑定の結果をなぞっただけ。こうしたセンシティブな問題に対しては、本来メディア側の再検証が不可欠だが、『週刊新潮』はそうした検証もせず、ネットメディアの情報に丸乗りする形で断言してみせたのだ。
 ジャーナリズム精神のかけらもない、百田やさくら夫人の言い分に従っただけに見える記事だが、実はこの記事自体がお蔵入りする可能性さえあったというのだ。

■次々と変遷するさくら夫人の証言に翻弄され
 事情に詳しい週刊誌関係者が、その内幕をこう明かす。
「自身の単独インタビューを諦(あきら)めた百田ですが、今度はさくら夫人だけの単独告白記事を要求してきたのです。そして『週刊新潮』はこれを一度は了承した」
 さくら夫人へのインタビューは5時間にも及ぶものだったという。しかし、その内容は週刊誌としては“使えない”ものだった。
「なにしろ、さくら夫人の証言は二転三転したらしいですからね。例えばイタリア時代のブログについても、『家族を安心させるためだった』と言っていたのが、なぜか『途中でやめたが、友達が勝手に更新した』『妹が勝手に更新した』と変遷……辻褄(つじつま)が合わないことの連続だったようです」(前出、週刊誌関係者) 
 しかもインタビューでは語らなかった事実が、ネットで連日のように暴かれていく。これでは記者と取材対象者の信頼関係が築けないのは当然で、通常の取材なら企画自体がボツになっていたはずだ。その後、菅原文太が死去(11月28日)したことで追悼記事を急きょ入稿することになり、いったんは「殉愛」原稿は流れるかに見えた。
「しかし、それを察知したのか、百田は新潮社の上層部、『週刊新潮』の編集長などに対して、原稿掲載を強く要請、懇願したそうです」(前同)
 その間もネットでは新たな疑惑が次々と浮上していく。そのため再度さくら夫人に話を聞くことになったが、それでも状況は変わらなかった。
「さくら夫人には『ネットではこう言われてますが、本当はどうなのか』という質問を繰り返したようです。しかし、結婚歴について聞くと『ストーカーが』『レイプされそうになって』などど、話自体がよく分からないものだった。
 さらに帰化した時期(注:ネットでは韓国籍から日本国籍への帰化が指摘されていた)や“さくら”という改名についても、理解しがたい説明を繰り返したようです」(前同)
 このままさくら夫人の単独インタビューを掲載することは『週刊新潮』もさすがに躊躇(ちゅうちょ)したのだろう。たかじんの長女(注:遺産相続や『殉愛』の内容を巡って百田、さくら夫人側と対立)からコメントをもらうなど、周辺取材を行い、検証記事の体裁を取らざるを得なかったという。
 百田とさくら夫人に翻弄(ほんろう)され毅然(きぜん)とした態度に出られない『週刊新潮』の姿勢には呆れるばかりだが、しかしさくら夫人はなぜか校了直前、記事内容の大幅な差し換えを要求するという厄介事も起こしていたのだ。

■校了直前に原稿の書き換えをねじ込む
 ある新潮社関係者がこう打ち明ける。
「問題となったのは、たかじんの自宅に置いてあった2つの金庫の中にあったという2億8000万円に関する記述だったようです。2つの金庫のうち“たかじん用”の1億円は当初から遺産に含まれていましたが、“さくら夫人用”とされる1億8000万円を、さくら夫人は“自分のものだ”と主張しています。
 さくら夫人は『週刊新潮』のインタビューに際して、『1億8000万円のうち1億円は乳腺炎になったり、耳が聞こえなくなったために主人から貰った慰謝料』『残り8000万円は伯父から貰ったもの』と説明していました。当然、原稿もそれに沿った記述だった。しかし校了直前、全く違う内容に書き直したいと言ってきたのです」
『殉愛』では、伯父から“借りた”額は5000万円であり、一部報道ではさくら夫人は乳がんを患ったとされているが、まあ、それはおいておこう(笑)。実際に『週刊新潮』に掲載された2億8000万円に関するさくら夫人のコメントは、以下のようなものだ。
「私と主人は業務委託契約を交わしていましたが、それはただの書類に過ぎず、私は1円ももらっていません。一方、2人の生活費として主人は毎月、いくばくかの現金を私に渡していて、私がやりくりする中で余った分は、100万円ずつまとめてリボンにくるみ、主人が私の金庫に入れておいてくれたのです。それに加えてクリスマスや私の誕生日には、病気でどこにも連れて行ってあげられないから、と300万円を金庫に入れておいてくれたりもしました」
 何度読んでも「業務委託で1億8000万円」なのか、「生活費の余剰をリボンでくるんだ100万円」は貰ったものなのか、「300万円」はどんな扱いなのか、よく分からない。それも当然かもしれない。校了直前になって編集部にねじ込んで書き換えさせたこの“1億8000万円”こそ、さくら夫人が証言を変遷させる理由の“鍵”を握っていたからだ。

文/宝島「殉愛騒動」取材班
(全文は『宝島』2015年3月号に掲載)


P16-21たかじん
<写真>
「OSAKAあかるクラブ」のイベントで熱弁をふるうたかじん(2011年8月29日撮影)

うなぎ、クロマグロから、イワシ、タコまで!? 5年後に食卓から消える!?今のうちに食べておきたい「絶滅危惧食品」

昨年11月、太平洋クロマグロが「絶滅危惧種」に指定されたというニュースが大きく報道された。ニホンウナギもすでに同様の指定をされており、価格的にはすでに庶民が「食べられない」レベルの超高級品となっている。しかし、これ以外にもさまざまな理由で食べられなくなる可能性のある食品が存在する。

P46-1食品リスト 2014年3月、日本による南極海での調査捕鯨が、国際司法裁判所により中止命令を受けた。日本は捕獲するクジラの頭数を13年度までの計画の3分の1となる333頭に減らすことで国際的理解を求め、15年冬から再開したい構えだが、反捕鯨団体などによる抵抗もあり、雲行きは怪しい。
 ネット通販大手の楽天も、国際的批判を恐れ、鯨肉の販売を禁止。国際展開する飲食チェーンなどにも、鯨肉メニューの提供を中止する動きが出ており、鯨食文化の消滅を危惧(きぐ)する声もある。
 しかし、近い将来、食卓から消える恐れがあるのは、鯨肉ばかりではない。
 11月、国際自然保護連合(IUCN)が公表したレッドリストに、太平洋クロマグロが「絶滅の危険性が増大している種」と定義される「絶滅危惧粁燹廚鵬辰┐蕕譴燭海箸わかった。IUCNのレッドリストは、生物種の絶滅可能性について、「絶滅」から「軽度懸念」までの8段階で評価している。これまで太平洋クロマグロは、最も低い「軽度懸念」に分類されていたが、一気に“2階級特進”となった。
 IUCNは、「寿司や刺身用に未成魚が捕獲されており、過去22年間に19〜33%減少した」として、日本食をやり玉に上げている。世界一のクロマグロ消費国である日本が名指しされたようなものである。
 とはいえ、IUCNのレッドリスト自体には法的拘束力はなく、直ちに漁獲が制限されるわけではない。しかし、今回のレッドリスト入りを機に太平洋クロマグロの保護を求める国際世論が高まれば、16年に開催予定のワシントン条約締約国会議でも議題にのぼることとなる。ワシントン条約で絶滅危惧種に指定されれば、漁獲や国際間取引の禁止という厳しい措置が取られる可能性もある。
 そうした状況を避けるため、日本や米国、EU、台湾など26の国・地域が加盟する中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)は、15年から適用する重さ30キロ未満の未成魚の太平洋クロマグロについて、02〜04年の平均漁獲量から半減させた漁獲枠に設定することを決めた。これにより、日本の漁獲枠は年4007トンとなる。
 ところが、WCPFCに加盟していながら、漁獲枠制限を免れることになったのが中国だ。水産庁資源管理部の広報担当者によると、
「中国は、WCPFCが求めるクロマグロの漁獲量を報告していなかった。そのため、中国には目標設定ができず、規制の対象から外れることになった」
 という。しかし中国では、所得の増加や日本食ブームのなか、太平洋クロマグロの消費量が急増しており、制限を免れた中国がクロマグロを乱獲、“焼け野原”となる可能性も否定できない。

■土用の丑の日には「うなぎ」ではなく「穴子」が一般化する
 同じく日本ゆかりの魚で、太平洋クロマグロより先にレッドリスト入りしているのが、ニホンウナギだ。太平洋クロマグロよりも1ランク上で、「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い」と定義される「絶滅危惧IB類」に分類されている。太平洋クロマグロ同様、ワシントン条約によって絶滅危惧指定されれば、漁獲や国際間取引が禁止される可能性がある。
 しかし、そうでなくてもニホンウナギはすでに、庶民には手の届かない物となりつつあるのが現実だ。
 毎年土用の丑の日に、養殖物と天然物の価格差が伝えられるニホンウナギだが、稚魚はいずれも天然物である。
 太平洋のマリアナ海溝近くで生まれた稚魚が黒潮に沿って北上したところを、日本や中国、韓国、台湾の付近で捕獲され、そこから成魚になるまで養殖される。一方の成魚になってから捕獲されたものが、天然うなぎと呼ばれるのだ。
 水産庁の統計によると、1963年に232トンあった稚魚の漁獲量は、2014年には16トンと、長期的には激減している。天然のうなぎも1978年まで年間2000〜3000トンの漁獲があったが、2012年は165トンにまで減っている。
 総務省の統計によると、うなぎの蒲焼き(国産。天然か養殖については言及なし)の100グラムの実勢価格は、05年には600円台だったが、14年には約1200円にまで高騰している。
 こうしたなか、すでに庶民の間ではうなぎ離れが起きている。大手食品小売チェーンの社員が声を潜めて言う。
「土用の丑の日には、うなぎの価格の3分の1ほどの、穴子の蒲焼きも人気です。販売量が増え始めたのが、中国産食品への不安が高まった2013年あたりから。もともと、安価な中国産養殖うなぎの人気が高かったですが、『中国産うなぎを食べるくらいなら』と穴子を選ぶ人が増えたのでは。一方、うなぎの販売量は毎年減っているので、このままいけば5年後には両者の立場は逆転するかもしれない。ただ、うなぎの代用品となっている穴子も土用の丑の日前後には、確保が困難になりつつある」
「個体数の減少」以外の理由により、食卓から消えゆく食品もある。
 13年、良品計画が製造販売していた、無印良品ブランドの「ごはんにかける ふかひれスープ」に対し、国際動物愛護団体らがサポートする形で販売中止を求める署名活動がネット上で巻き起こった。
 彼ら、ふかひれ反対派の主張は、捕獲したサメのヒレ部分だけを切り取り、魚体を海に捨てる「フィニング」と呼ばれる漁法が横行しており、残酷であるというものだ。
 14年5月には、化粧品や入浴剤などを販売するラッシュジャパンが、「残酷なフカヒレ漁反対キャンペーン」を開始。フィニングを行っていないと主張する気仙沼遠洋漁協が、「サメ漁に対するマイナスイメージが広がる」としてこれに反発する一幕もあった。
 しかし、海外ではすでに、フカヒレ漁包囲網が広がっている。
 10年12月20日、アメリカは国内でのフカヒレ採取を目的とした漁を全面禁止としている。また同国ハワイ州では10年7月に売買を禁止する州法が施行され、カリフォルニア州では11年10月にフカヒレの売買と所持を禁止する州法が成立した。さらに同月には、カナダのトロントでも消費禁止の条例が導入された。
 また、「ザ・ペニンシュラ」やヒルトングループが世界に展開するホテルでは、フカヒレの提供を中止している。

■「食べるのはかわいそう」という感情的な国際的批判
P46-2フォアグラ フカヒレと同じく、動物愛護の観点から残酷との国際的批判にさらされているのが、世界三大珍味のひとつに数えられるフォアグラだ。
 問題とされるのは、生産過程で行われる、「ガバージュ」と呼ばれる強制給餌(きゅうじ)だ。フォアグラ用のガチョウや鴨は、生後3カ月ほどすると、ケージの中で、胃袋にまで達する管を口から差し込まれ、ペースト状の餌を強制的に注入される。12日ほどすると、肝臓は通常の10倍以上に肥大し、極度の脂肪肝となる。これが、フォアグラである。
 12年には、米カリフォルニア州で、フォアグラの生産・販売が全面的に禁止する州法が施行されている。
 また、ベアトリクス前オランダ女王は09年、宮廷でフォアグラを用いることを禁止。さらに英貴族院でも12年、院内の高級レストランからフォアグラが消えた。
 さらに、英歌手のレオナ・ルイスや映画「タイタニック」のヒロインとしても知られる、ケイト・ウィンスレットなど、セレブリティたちも、フォアグラの食用に反対する立場をとっている。
 こうしたなか、日本のファミリーマートも、14年1月に、フォアグラを使った弁当の発売を中止している。同社は、消費者からフォアグラの生産法について、残酷だという批判を受けたことを理由としている。
 ある動物愛護団体から、フォアグラ料理の提供をやめるよう、抗議を受けたというのは、都内のフランス料理店経営者の男性だ。
「郵送されてきた角形の茶封筒の封を開けると、鴨にガバージュが施されている様子や、解体されてフォアグラが採取される様子を収めた血なまぐさい写真が同封されていました。食文化に関してはそれぞれの意見があっていいと思いますが、抗議のやり方が不気味で、背筋が凍りつきました」
 男性によると、ガバージュを行わなくても、フォアグラは採取できるというが、「濃厚な味を出すのが難しく、量も取れないので価格は10倍以上になる」とのこと。
 ガバージュに対する国際的批判が高まれば、ファミレスや居酒屋などの低価格なフォアグラメニューは、間違いなく一掃されることになるだろう。
 動植物の保護や安全面を理由に、固有の食文化が否定される時、否定側からしばしば挙げられるものに「ほかにも食べるものはある」という主張がある。しかし、人間にとって食べることは、車にとってのガソリンの補給とは違う。選択の幅の広さや多様性こそが食文化の深度である。食文化の消滅にかかわる議論には慎重にならなければ、近い将来、人類がサプリメントだけで生活するような時代もやって来るかもしれない!?

<牛レバーに続き豚レバーも「禁止」へ 日本の生食文化は消滅の危機!!>
P46-3レバー 食品衛生の観点から、日本で禁止されつつあるのが、肉の生食である。
 内閣府が設置する食品安全委員会の専門調査会は12月10日、レバーをはじめとする豚肉の生食について「豚肉の生食にはE型肝炎や、細菌、寄生虫による食中毒の危険があり、禁止は妥当」とする結論をまとめた。これを受け、厚生労働省は食品衛生法の規格基準を改定し、飲食店などに非加熱の豚肉の提供を禁止する見通しだ。
 そもそも豚レバーは、2012年に生食が禁止された牛レバーの代替品として生で提供する飲食店が増えたという経緯がある。そんななか、「相次ぐ後出しジャンケンはやめてほしい」と話すのは、都内の居酒屋経営者の男性だ。
「生肉好きは『探してでも食べるという』熱狂的ファンが多い。うちも、新鮮なものが入った時にしか豚の生レバーは出していないが、『生レバーあります』と書き出しているだけで客の入りが違う。豚レバーが出せなくなると、間違いなく売上げにも影響する」
 また男性は、厚労省が納得のいく説明を行っていないことにも不満を募らせ、こう提案する。
「魚介類の刺身だって食中毒事件はたびたび起きている。肉の生食が魚と比べて具体的にどれくらい危険性が高いのか、科学的根拠があるのかどうか、いまいちはっきりとした説明がない。どうしてもと言うなら、ふぐみたいに免許制にすればいい」
 厚労省の薬事・食品衛生審議会は、鳥刺しやとりわさなど、鶏肉の生食についても、規制検討の候補にあげており、魚貝類以外の生食文化が完全に消滅する恐れもある。

取材・文/奥窪優木
(『宝島』2015年2月号より)

「2ちゃんねる」を「ひろゆき」から強奪!謎の「元アメリカ軍人」の正体 〜唯一インタビューに成功した記者がそのベールを剝ぐ〜

2014年2月に起きた「2ちゃんねる」のお家騒動。創設者でありサイトの“象徴”でもあったひろゆき氏が「追放」されたのである。乗っ取った人物の「正体」については「元アメリカ軍所属」という経歴も相まって、さまざまな憶測が流れているのだが……。唯一インタビューに成功した記者がその「正体」を徹底分析する。

P42-1ワトキンス<写真>
「2ちゃんねる」の現管理人、ジム・ワトキンス氏







 2014年の2月19日、コンピュータデータ代金(サーバ代)の支払いを巡る問題をきっかけに、大手掲示板「2ちゃんねる」においてクーデターが勃発。創設者である「ひろゆき」こと西村博之氏が、サーバーの管理を委託していた米国企業「レースクイーン社」からアクセスをシャットアウトされ追放されたのだ。
「2ちゃんねる」を乗っ取ったレースクイーン社の代表であるジム・ワトキンス氏は「元アメリカ軍人」。その経歴から、ネット界隈では各種の噂が広まった。曰(いわ)く「ワトキンス氏は米軍かCIAの秘密工作員で、日本最大の掲示板を乗っ取り、米国によるネット支配を企んでいるのではないか」といった一種の陰謀論などである。
 しかし、ワトキンス氏「占領後」の「2ちゃんねる」では、彼に対して好意的な書き込みが目立った。その一因として考えられるのは、「2ちゃんねる」では過去の書き込みログが有料会員でないと見られないなどの「制限」があったのだが、ワトキンス氏が管理人になって以降、その制限がなくなったからだ。
 また、ワトキンス氏の人柄もある。ツイッターでの問いかけにはすぐさま物腰低く対応し、毎朝行うヨガの練習をYouTubeで流している愛嬌溢れる人物だからである。
 しかし彼は、裁判はすべて無視、賠償金を一銭も払わず「2ちゃんねる」を10年以上にわたって抜け目なく運営してきた、あの西村博之氏を追放した策士であるということを忘れてはいけない。

P42-2経緯<写真>
ワトキンス氏が「2ちゃんねる」乗っ取り後に掲載した経緯



■高校を出てアラスカへ 漁師になった後に陸軍に入隊
 ワトキンス氏は今や、日本ネット界の最重要人物の一人である。しかし、その「正体」は判然としていない。乗っ取りの背景や管理人としての考え方を直接ヒアリングする必要があると筆者は考えた。
 意外に思われるかもしれないが、これまでワトキンス氏のインタビューが日本で報道されたことは一度もなかった。そこで筆者はこの11月、「2ちゃんねる」や彼のツイッターアカウント、メールなどを通してインタビュー取材を申し出た。意外にもすんなりとOKが出て、筆者が運営するニュースサイト「エコーニュース」に計3回に分けてロングインタビューを掲載するに至った。ワトキンス氏はフィリピンに在住しているため、インタビューはもっぱらメール、ツイッターを通して行われた。
 ワトキンス氏によれば、彼は1963年にアメリカ西海岸のワシントン州に生まれ、「小さい頃から祖父の書棚で本に親しみ、10代にはペーパーボーイ(新聞報道)や農園の手伝いをした。母と祖父はボーイング社に勤務」なのだという。そして、米軍に入った経緯については以下のように語った。
「高校を出てもすぐには大学へ入らずアラスカまで行って、やってみたかった漁師になることにした。ただ漁師は過酷な仕事のためワンシーズンで辞めることになった。だからもう少し楽な仕事に就きたいと思って陸軍に入った」
 そして米軍でコンピュータの正式な訓練を受けたという(ただ、今回のインタビューでは具体的にどんな任務に従事したかなどは質問していない。警戒され途中でインタビューがストップしてしまっては困るからだ。なるべく彼の生い立ちの話などから入り、どういう行動原理で動いているかなど、その素性の「傍証」を探ることにした)。
 なるべく無難なことを聞いたのだが、いくつか興味深い点があった。

■韓国最大のIT企業を相手に「訴えたらサイバー攻撃をする」
 まず「武力への信仰」とも言える傾向がある点だ。尊敬する人物を尋ねると「ペルシャのキュロス大王、ユリウス・カエサル、東郷平八郎、ジョシュア・チェンバレン、エディ・リッケンバッカー」を挙げたのだが、すべて軍人なのである。彼は現在ビジネスマンだが、価値観の根底には軍人への憧憬が見てとれる。
 次に、彼によればインタビュー取材に来た共同通信の記者を撮影し、YouTubeにアップしたという。動画を撮ってネットにさらす──この手の行為は通常「ドキシング」と呼ばれて典型的な嫌がらせ行為の一つである。それを取材記者に対してやるというのは、ワトキンス氏に「マスコミへ不信」のようなものがあるのではないと思われた。
 また、彼の発言でもっとも興味深い点は「2ちゃんねる」の転載について生じている、LINE社との権利問題についての見解だ。LINE社が提供する「まとめサイト」はいずれも「2ch.sc」(西村博之氏がオリジナルの2ch.netの書き込みを毎日コピーしているサイト)からの転載を続けており、ワトキンス氏はLINE社に訴訟をちらつかせている。一方でひろゆき氏(LINE社の親会社であるNAVER日本法人の役職に就いていた)も自分自身が「2ch.net」の所有者であると主張して、ワトキンス氏らに協力するボランティアには、民事・刑事の両方で法的手段をとることを今年4月1日に宣言している。
 LINE社は韓国最大のIT企業であるNAVER社の100%子会社。そしてこのNAVER社は、韓国政府年金基金が株式の8%を保有しており、さらに創業者が韓国諜報部のシステム開発者であるなど、密接に韓国政府との結びつきがある“特別な企業”だ。
 この「2ちゃんねる」とLINE─NAVERとの紛争についてワトキンス氏に尋ねたところ、返ってきたのは思いもよらぬ答えだった。「彼らが私を訴えたら、私はサイバー攻撃で対抗します。うちにはそれをやるだけのプログラマーがいるのです」というのだ。そして、「それがわかっているから彼らが私を訴えることもないだろう」とも答えた。

P42-3ひろゆき<写真>
「ひろゆき」こと西村博之氏は現在、「2ch.sc」を運営しつつ「2ch.net」の所有者だと主張し続けている








■アメリカ消滅後の大陸を舞台にした小説を執筆中
 冷静にこの発言を読むと「法的手段には、犯罪行為であるハッキングで報復する」というやや普通ではない見解の持ち主のように見える。しかも相手は韓国政府とも近い巨大IT企業であるNAVER社とその子会社であるLINE社だ。それらに訴訟を思いとどまらせるだけのハッキングを行える組織は、筆者の見立てでは一握りしかない。たとえばアメリカ国防総省の諜報部門「NSA」(国家安全保障局)などである。
 とはいえ、ハッキングで反撃できるという発言は、もしかすると「ブラフ」かもしれない。しかし、彼の発言と「2ちゃんねる奪取」という日本インターネット史上、“最大のクーデター”を訳もなく行えた、その実行力から考えると、彼はアメリカ軍でインテリジェンス系の部門にいた、もしくはいる人間ではないだろうか。法律よりも実力行使が優越するという考え方は、完全に諜報機関のそれだろう。
 だが、彼が米国政府に忠実な人間なのかというと、筆者にはそうとは思えない。政府に忠義を尽くすには余りにも独立心が強すぎるのだ。彼によれば「今小説を書いていて、それはアメリカ合衆国消滅後のアメリカ大陸が舞台」だと言う。
 またNSAを裏切り、アメリカの傍受プログラムを大量に暴露したエドワード・スノーデン氏のことも擁護している。そして尊敬するユリウス・カエサルとキュロス大王は、いずれも反乱、または内戦を経て新しい体制を構築した人物だ。こうした点からワトキンス氏が米軍、もしくはCIAの工作員ということは考えにくい。
 彼が「2ちゃんねる」を利用してどのようなヴィジョンを描いているのか。筆者は今後もウオッチングしていくつもりである。

文/江藤貴紀(エコーニュース編集長)


<軍事のプロが分析する「ワトキンス=工作員」の可能性>
 ワトキンス氏自身が語ったところによると、彼は高校卒業後、短期間の漁師経験を経てアメリカ陸軍に入隊。除隊後に米国内で基地の敷地を整備する会社を経営している。その後、基地近くのカフェやゴーゴーバーのオーナーとなったが、経営に失敗して転職。その後の経緯は不明だが、フィリピンを拠点にITビジネスに乗り出して成功したということである。
 この経歴自体が虚偽のカバーストーリーであれば話は別だが、事実であれば、アメリカ国内で基地整備の会社や飲食店を経営することは、工作員の偽装としてはほとんど意味がない。それらに身分偽装しても、日常的に接触して内部情報にアクセスできるのは、あくまで米軍だからである。
 それよりも重要なのは、その後、彼はどういう経緯でITビジネスに参入し、成功していったかという過程だが、このインタビューではそこまでは詳しく触れられていない。その質問にあえて話を避けたのであれば、そこに何らかの秘密があるのかもしれない。
 また、同インタビューで注目されるのは、彼が「NSA」の元契約スタッフで、NSAによる盗聴やネット監視を告発したスノーデン氏を擁護していることだ。
 ワトキンス氏はスノーデン氏の行為を賞賛しているが、アメリカ政府も軍も、スノーデン氏の暴露によって多大な損害を被っている。そんな人物を賞賛し、その行為を扇動するような発言は、仮にワトキンス氏が現在も米軍やCIAのために働いているとしたら、まず出てこないはずだ。また、ワトキンス氏は、自分が陸軍にいたときにアメリカが嘘をついているのを知ったとも証言しているが、この発言も偽装工作員らしくないものと言える。
 そうした点からは、彼は米軍やCIAとは無関係であることが推測できる。ただし、それ自体が偽装工作の一環である可能性もあり、断言することはできないが。


文/黒井文太郎(軍事ジャーナリスト)
(『宝島』2015年2月号より)

「原発健康被害」の揉み消しに加担する「朝日新聞」の“非科学”記事 〜誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第4回 後編】〜

「記事取り消し」や「社長引責辞任」の不祥事で揺れる朝日新聞社。新社長の就任で、膿は出し尽くされたのか。そこで同社の「原発事故」報道を検証したところ、続々と問題記事が見つかった。真っ先に取り消されるべきは、こちらの記事ではないのか?

■記事を信じた読者は救われない?
P50-3福島被ばく図 福島第一原発事故発生から間もない11年4月24日付『朝日新聞』朝刊の「ニュースがわからん! ワイド」欄に、
「年間100ミリシーベルトを超えなければ、体に影響は出ないとされている」
 とする記事が掲載された。書いていたのはまたしても前出・岡崎明子記者である(第4回 前編記事掲載)。一体、どこの誰が「影響は出ないとされている」ことにしたというのだろう。
 日本の法令では、被曝を伴う仕事をする人の健康を守るため、放射線管理区域の基準を「3か月当たり1.3ミリシーベルト」と定めている。この放射線管理区域に立ち入るためには、特殊な資格が必要となる。一般人の被曝許容限度はさらに厳しく、「1年間に1ミリシーベルト」である。そして、個々の原発に対しては、1年当たり50マイクロシーベルトを被曝の目標値とするよう定められている。
 福島第一原発事故が起きるまでは、被曝に対してこれほどまでに気を使っていたのだ。にもかかわらず、原発の大事故が起きたらいきなり、
“100ミリシーベルトを超えなければ問題ない”
と言われても、面食らうばかりである。
 この記事が、事故直後の混乱期に書かれていることにも着目してほしい。この記事を読み、信じた読者は、被曝への警戒心をきっと緩めたに違いない。しかし、朝日新聞社広報部は「回答」の中でこう語る(カッコ内は筆者の注)。
「(記事は)100ミリシーベルト以下なら影響なしと断定したものではありません」
 まるで、記事を信じた読者のほうに責任があると言わんばかりだ。

 現在の朝日新聞社には、「100ミリシーベルト」という線量値に対し、異常なまでに執着する記者たちが存在する。彼らが福島第一原発事故以降に書いた記事には、「100ミリシーベルトまでなら、健康に影響なし」としか読めない文言が盛んに登場するのだ。以下、例を挙げると、
●13年2月27日10時11分配信の朝日新聞デジタル「甲状腺の内部被曝『1歳児50ミリ未満』30キロ圏内」記事中にある、
「100ミリシーベルト以上でがんが増えるとされている」
 との記述。
●13年5月27日10時15分配信の朝日新聞デジタル「福島事故の甲状腺集団線量『チェルノブイリの1/30』」記事中にある、
「がんが増えるとされる100ミリ以下だった」
 との記述と、記事に添えられた解説中にある、
「甲状腺局所の線量が、100ミリシーベルトを超えると甲状腺がんが増えるとされる」
 との記述。
●14年4月2日5時00分配信の朝日新聞デジタル「原発事故後の福島県民分析、がん増加確認されず 国連科学委」記事中にある、
「甲状腺への被曝が100ミリシーベルトを超えると、がんのリスクが高まると考えられている」
 との記述。
 これら3つの記事の筆者は、医療や被曝の問題を担当する同社福島総局の大岩ゆり記者(元・科学医療部)。まるで世間の常識か定説であるかのような書きぶりだが、そもそも、どういった学者らによって「…と考えられている」のかが明らかにされていないところが、全く科学的でない。
 それに、「…とされる」「…と考えられている」などと、語尾がすべて濁してあるのは、
“これは記者自身の意見や考えでは決してないのだ”
 という、万一の批判に備えた逃げ口上のつもりなのだ。先に記した広報部の「回答」は、彼らが“確信犯”的に言葉を使い分けている証拠──と言うことができるだろう。
 彼らは責任を取らない。なので、読者の皆さんも、新聞記事を読む際にはそんなところにも注意を払って“自衛”していただきたい。

■「100ミリシーベルト以下は影響なし」説は記者の誤解?
P50-5福島朝日 さらに問題なのは、こうした見解が、ICRPの「2007年勧告」(注1)や、我が国の放射線医学総合研究所(放医研)の見解(注2)に真っ向から反していることだ。
 ICRPは、
「100ミリシーベルトを下回る低線量域であっても、被曝線量が増えるのに比例して、ガン死リスクは増加する」
 との見解。一方の放医研は、
「100ミリシーベルト以下ではガンが過剰発生しないと、科学的に証明されたわけではない」
 としている。放医研はICRPの勧告内容に合わせて見解を見直しており、従って両者の間に見解の相違はありえない。
 ところで、11年に放医研が作成した「放射線被ばくの早見図」では、100ミリシーベルト以下では「がんの過剰発生がみられない」と解説していた。このため、「100ミリシーベルト以下ではガンが過剰発生しないことが科学的に証明されている」かのような誤解を招いてしまう。実際、記者稼業をしている者の中にも、誤解したままの者が少なからず存在する。
 そこで放医研は12年に「早見図」を改訂する。100ミリシーベルト以下の解説を削除したうえで、100ミリシーベルト以上になると「がん死亡のリスクが線量とともに徐々に増えることが明らかになっている」と、表現を改めたのだ。
 これに嚙(か)みついたのが、大岩記者だった。13年7月25日付『朝日新聞』朝刊で、放医研が「一般向けの『放射線被ばくの早見図』を十分な説明なしに改訂している」と批判。続く同日の朝日新聞デジタル記事では、
「改訂は昨春だが、変更の履歴も理由も書かれておらず、ツイッターなどで最近、『(こっそり変更は)ひどい。多くの人にしらせないといけない』『(100ミリ以下でがんが出た時の)責任逃れの証拠隠滅?』と話題になった」
 と畳み掛ける。科学と縁遠いSNSからわざわざコメントを引用しているあたりに、「科学記者」大岩氏の怒りと動揺のほどがうかがえよう。まさか、大岩記者が唱える「100ミリシーベルト以上でがんが増えるとされている」説の科学的根拠が、改訂前の放医研「放射線被ばくの早見図」だったわけでもあるまいし……。
 そこで、この件に関しても、朝日新聞社広報部を通じて大岩記者に尋ねることにした。質問は次のとおり。
「大岩記者はこの記事を書くまで『(100ミリ以下で)がんが過剰発生しないと科学的に証明されている』と誤解していたのではないでしょうか」
 大岩記者からの回答は、なかった。

■「朝日新聞がわからん!」
 放医研が作成した「放射線被ばくの早見図」の改訂で見逃せない点は、もともとは「がんの過剰発生がみられない」としていたのを、「がん死亡のリスクが線量とともに徐々に増える」と、「死亡」の2文字を入れたところだ。
 ガンになることと、ガンで亡くなることは、次元の異なる話である。従って、朝日新聞が言う「がんが増えるとされている」と、ICRPや放医研が言う「ガン死リスクは増加する」は、全く違う話をしていることになる。
 ようするに朝日新聞の言説は、国際的な見解とは全く異質の独自見解なのである。果たして朝日新聞は、どんな科学的根拠をもとにして記事を書いているのだろう。当方の質問に対し、朝日新聞社は真正面からの回答を拒んだため、謎は今も残ったままだ。
 原発事故を引き起こした原子力ムラの人々が、原発事故で毀損(きそん)した自らの権益を守るべく、
「100ミリシーベルトを超えなければ、体に影響は出ない」
 と、法令違反を承知で主張したいのであれば、勝手にやればいいだけの話である。だが、新聞記者が同じ趣旨の発言をすれば、その人はジャーナリストではなく、原子力ムラの「代弁者」と見なされる。それは報道機関による「事故の過小評価」にほかならないからだ。
 朝日新聞社の名を冠した「朝日がん大賞」は、11年に山下俊一・福島県立医科大学副学長(当時)に大賞を贈ったことで批判を浴びていたのは、記憶に新しい。ところで、同賞の選考委員には、同社の科学医療部長や元社長がいる。
 朝日新聞社「改革」の道程は、相当険しい。


(注1)ICRP「2007年勧告」より抜粋
「がんの場合、約100mSv以下の線量において不確実性が存在するにしても、疫学研究及び実験的研究が放射線リスクの証拠を提供している」
「認められている例外はあるが、放射線防護の目的には、基礎的な細胞過程に関する証拠の重みは、線量反応のデータと合わせて、約100mSvを下回る低線量域では、がん又は遺伝性影響の発生率が関係する臓器及び組織の等価線量の増加に正比例して増加するであろうと仮定するのが科学的にもっともらしい、という見解を支持すると委員会は判断している」
(注2)放医研「放射線被ばくの早見図」より抜粋
「(100ミリシーベルトを超えると)がん死亡のリスクが線量とともに徐々に増えることが明らかになっている」



取材・文/明石昇二郎(ルポルタージュ研究所)+本誌取材班
(全文は『宝島』2015年2月号に掲載)

福島で赤ちゃんを産み育てるのは安全?「朝日新聞」の“非科学”記事 〜誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第4回 前編】〜

「記事取り消し」や「社長引責辞任」の不祥事で揺れる朝日新聞社。新社長の就任で、膿は出し尽くされたのか。そこで同社の「原発事故」報道を検証したところ、続々と問題記事が見つかった。真っ先に取り消されるべきは、こちらの記事ではないのか?

■福島で赤ちゃんを産み育てるのは「安全」という記事
「誤りは自ら速(すみ)やかに正(ただ)す新聞社だと評価していただける日まで、体を張ってやり抜く覚悟だ」
 2014年12月5日、朝日新聞社の渡辺雅隆・新社長は、就任後の記者会見でこう述べた。
 連載4回目のテーマは、同社の「福島第一原発事故」報道についてである。社長の「覚悟」のほどがさっそく試されることになるかもしれない。

 14年10月2日付『朝日新聞』朝刊の「記者有論」欄に、
「先天異常変化なし 福島への誤解解く情報を」
 と題した記事が掲載された。筆者は、同社科学医療部の岡崎明子記者である。
 記事は、福島第一原発事故以降に福島県内で行なわれた厚生労働省研究班などの「妊産婦調査」結果を紹介したもので、
「福島で生まれた赤ちゃんに先天異常が出る割合は、東京電力福島第一原発事故後も、全国平均と変わらない」
 のだという。この記事が言う「先天異常」とは、妊娠中に強い放射線を浴びることで発生する「二分脊椎(にぶんせきつい)」といった症状に代表される、いわゆる「奇形児」のことを指している。調査の中には流産や中絶の割合を調べたものもあり、
「これも事故前と後では変化がない」
 そうだ。
 岡崎記者は同記事中で、
「事故後4カ月の被曝量は福島県民の99.8%が計5ミリシーベルト未満だった」
と断定。さらには、「国際放射線防護委員会の勧告では、100ミリシーベルト未満の胎児被曝なら中絶の必要はない」としたうえで、
「現時点でも数字上は、福島で赤ちゃんを産み育てるのは安全なように思える」
 との持論を展開している。
 記事では何も書かれていないが、「県民の99.8%が計5ミリシーベルト未満」という値は、福島県や環境省が公表している「県民健康調査」の外部被曝線量推計結果(14年5月発表)と全く同じものだ。ただし、この調査におけるアンケート回収率は、たったの25.9%。そもそも推計値なのだから、断定するための科学的根拠とするにはとても心もとない。
 だが、この記事における最大の問題点は、そのことではない。岡崎記者が先天異常の調査結果のみをもって「安全なように思える」と即断していることだ。

■ジャーナリスト失格の早とちり
 妊婦の被曝で懸念される健康被害には、小児ガンもある。つまり、放射線や放射性物質は、先天異常を引き起こす「催奇性」と同時に、「発ガン性」という毒性も兼ね備える。
 当連載の第3回「WHO『福島県でガン多発』報告書の衝撃」でも触れたように、妊婦の腹部への被曝が生誕後の小児ガンの原因となることは、半世紀ほど前から広く知られている医学的知見だ。こうした研究は1950年代から世界的に行なわれており、子宮内で胎児が10ミリグレイ(およそ10ミリシーベルト)程度のX線被曝を受けると、小児ガンのリスクが必然的に増加するという結論が、すでに出ている。病院のX線撮影室の入口に表示してある、
「妊娠している可能性がある方は、必ず申し出てください」
 という表示は、こうした医学的知見を根拠にしたものだ。
 さらに付け加えておくと、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の13年報告書『2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響』は、とかく「過小評価」との批判が付きまとうシロモノだが、この報告書でさえ、福島第一原発事故発生時に妊娠中だった女性の中で、子宮に20ミリグレイの吸収線量を受けた(=被曝をした)人が「少数」ながらも存在する可能性があることについて、わざわざ言及している。こうして産まれてきた子どもたちもまた、原発事故によって重大な健康リスクを負わされた被害者であることに、異論を挟(はさ)む余地はない。
 そこで、疑問が浮上する。なぜ岡崎記者は「先天異常」多発の有無だけで、原発事故後の福島県で子を産み育てることを「安全」と思うに至ったのか? 小児ガン多発の有無や可能性も点検したうえで読者に判断材料を提供するのが、「あるべき科学記者」の姿勢なのではないのか?
 記事を読み返してみたところ、岡崎記者の主張の根幹は、産婦人科の大学教授であるという人物が話していたことの受け売りだった。果たしてこの産婦人科医は、小児ガンのリスクについてどう考えているのか。記事で産婦人科医は、小児ガンのリスクについて何も触れておらず、
「福島で調査した数字を見て、福島で産み育てる人が増えて欲しい」
 とだけ、コメントしていた。関心のある読者は、自分でこの医者に確認せよとでもいうのか。取材が甘い記事と言うほかない。
 仕方がないので、記事に登場する産婦人科医──福島県立医科大学の藤森敬也教授に取材を申し込んだ。回答は次のとおり。
「放射線と小児ガンの関連などについての調査や見解は専門外であるため、コメントは控えたい」
 子どもたちが無事であるに越したことはないが、どちらか一方の毒性しか見ないで「安全」と報じるのは、科学記事と呼ぶに値しない早とちり以外の何ものでもない。
 そればかりか記事は、福島での出産や子育てを恐れるのは「誤解」だとした。そして岡崎記者は、そうした「誤解」を解くべく、
「これからも最新の知見を発信していきたい」 
 と、この記事を勇ましく締め括(くく)っている。
 人々の不安を「誤解」と決めつけるからには、被曝による「小児ガンのリスク」の有無についても、記事中できちんと触れるべきだろう。この点について、朝日新聞社広報部を通じて岡崎記者に尋ねたところ、とても回答とは言えないような“回答”FAXが同社広報部から寄せられる(カッコ内は筆者の注)。
「厚生労働省研究班の調査結果や国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告をもとに、記者が先天異常について自分の考えを述べたものです」
 そんなことは、質問していないのである。そればかりか、肝心の「小児ガンのリスク」に関する質問への回答が、一言も書かれていない。朝日新聞社は、説明責任を放棄した。
 岡崎記者は、質問に答えることすらできないのである。つまり、小児ガン多発の有無や可能性は何も点検しないまま、人々の不安を「誤解」だと決めつける、恐れ入るばかりの非科学記事だったのだ。
 岡崎氏よ、あなたは「科学ジャーナリスト」失格である。



取材・文/明石昇二郎(ルポルタージュ研究所)+本誌取材班
(全文は『宝島』2015年2月号に掲載)
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