中国人富裕層――。バブルは終わったといわれているが、その数は増え続けている。資産1億円以上の富裕層世帯は、2013年で238万世帯。日本の2倍、米国に次ぐ世界2位の数を誇る。莫大なカネを手にした富裕層たちの歪んだ欲望が、中国という国の「品性」を今、映し出している。
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今年4月、上海で行われた「アダルト・エキスポ」の模様。寝た子を起こしたら、とんでもない暴走を始めた(写真/Imaginechina/アフロ)
昨年夏から中国でひそかに話題になっている風俗がある。それは、産後で母乳のよく出る女性の乳を、赤ん坊の気分になりきって吸うことができる「授乳風俗」。本格的な赤ちゃんプレイといったところだが、なぜ、このような風俗が誕生したのか。
『中国のヤバい正体』(大洋図書)の著者、中国人漫画家の孫向文氏がこの奇妙な風俗の成り立ちを説明する。
「2008年、粉ミルクからメラミンが検出され、中国国内で4人の乳児が死亡し、5万4000人が腎臓結石の被害を受けました。その後、粉ミルクへの不満が高まり、乳のよく出る女性には、母乳が必要な家庭のために分け与える仕事が生まれました。そこに目を付けたのが深圳(しんせん)の商人で、彼らは“大人向けの母乳提供サービス”を思いついたんです」
このサービスがネット上で発表されるや、国民は「破廉恥すぎる、モラルの低下も甚だしい」と大反発。その一方、一部の者たちの心を鷲づかみにした。
「その業者は国民の反発に怖気(おじけ)づいて撤退しましたが、その後、ある共産党員が授乳女性をネットで募ったりしました。彼はひそかに授乳パーティをやろうとしたようです。さらに今年6月、もうほとぼりが冷めたと思ったのでしょう、授乳風俗店が正式に深圳でオープンしました」(同前)
店のサービス料金は日本円で1時間2万円程度。中国都市部の平均的な月収は6万円程度なので、かなりの高額といえる。もちろん庶民が手を出せる額ではない。これは、中国国内で急増する富裕層をターゲットにした“風俗ビジネス”だった。
米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の調査によると、中国の富裕層(流動資産が100万ドル=1億円以上)の数は今や日本の2倍以上。ここ数年、年率15%以上の割合で増加している。そんな膨張する資産に比例して、彼らのいびつな欲望も底なしに拡大している。前述の授乳サービスはほんの一例でしかない。
日本の大手電機メーカー広東支社に勤務する島田隆弘さん(仮名)が半ば呆(あき)れながら語る。
「実質、中国は一夫多妻ですよ。官僚を中心として、力のある人はたいてい愛人を侍(はべ)らせています。僕が仲良くしている広州の国営企業の中国人社長は4人の秘書がいます。その4人とも愛人で、それぞれにマンションの部屋を与えていますね」
中国政府系メディア『人民論壇』によれば、2010年に調査や処分を受けた腐敗幹部の95%に愛人がいたと報告された。5人以上の愛人を持つケースもザラで、江蘇省建設庁庁長だった徐其躍に至っては146人もの愛人の存在が確認された。愛人を所有することは成功者のステータス。収入が増すたびに車を買うようにして愛人を侍らせていくのが中国社会なのだ。
■海外に会社を設立、愛人を役員に
島田さんは、その広州の社長の乱れきった下半身のエピソードを暴露する。
「以前、その社長と日本のAVの話で盛り上がったんですが、そのとき彼は自慢げに語っていました。なんでも週末になると、4人の愛人をマンションの一室に呼び寄せ、5Pセックスをするみたいですね。彼が一番自分の権力を実感できるのは、4人を一斉に四つん這いにさせて1人ずつ順番に入れていくときみたいです。あと、金持ち同士でお互いの愛人を持ち寄って乱交パーティすることもあるようですね」
なお、愛人募集の際は、経営者であれば秘書を募るのが一般的。それ以外だと、ミスコンのスポンサーになり、参加女性の中で気に入った女性と連絡を取り合う者や、はたまた「10万元(約160万円)で自宅の猫と遊んでくれる美女を募集」と告知を出した大富豪もいた。さすがに表立って愛人を募ることはできないが、いくらでも抜け道はある。
しかし、こうして性を謳歌(おうか)しているのはごく一部の金持ちでしかなく、庶民は、その割りを食っている。都内の日本語学校に通う蔣正銘(ショウ ショウメイ)さんは忌々しげに語る。
「習近平政権になってから、汚職を厳しく取締まるようになった。だから、腐敗官僚がたくさん捕まっています。最近は、扱われ方に不満を持つ愛人が、密告するケースも増えています。ざまあみろですよ。中国女性はだいたい打算的で金のある男にすり寄る。貧乏人の男と結婚するぐらいなら金持ちの愛人のほうがいいと考えるんです。だから、金のない男は今、中国では本当に結婚できません」
一人っ子政策を実施している中国においては、お腹(なか)の子が女児だと判明すると堕胎するケースが多く、人口比は男が117に対して女は100となっている。しかし、一部の金持ちがいい女を独占するため、多くの中国人男性があぶれてしまっているのだ。そして、蔣さんが何よりも富裕層に対していら立ちを覚えるのは、その売国行為にあるという。
「汚職で私腹を肥やしてきた官僚とかが、その金で海外に会社を設立している。そして愛人を会社の役員などで登用しているんですよ。ゆくゆくはあいつらも海外の永住権を取得して中国から去りますよ。僕ら貧乏人から搾り取った金は全部、中国に還元しないで海外に流れていくんです」
ロサンゼルスやカナダのトロントでは、ここ数年で中国の高級官僚たちが名だたる高級住宅地を買い漁った。彼らは愛人に別荘の管理をさせており、この地域は地元で「愛人村」と呼ばれている。
大気汚染や食の汚染、不動産バブルの終焉(しゅうえん)、習近平の汚職の取締まり強化を考えると、彼らにとって今後も中国にとどまり続けることは賢い選択ではないのだろう。
■不況の吉原を救った中国マネー
中国人富裕層の欲望の矛先は、この日本にも向けられている。反日のお国柄でありながらも、中国国内で日本は屈指の人気観光スポットになっている。とりわけ今年はアベノミクスによる円安効果で、中国人観光客は前年比で70%増が予想されている。日本へ観光に来るのは中産階級以上だ。
都内の高級デリヘル(90分6万円)の店長Sさんは、中国人の経済力を肌身に感じている。
「風俗サイトの運営会社から、『中国人観光客に向けた中国語サイトを作るけど、中国人対応は大丈夫ですか?』って尋ねられたから、オーケーと答えたんです。そしたら、1カ月後には半分以上の客が中国人になった(笑)。あわてて中国人留学生を電話対応に雇ったね」
店の女のコたちは当初、中国人を相手にすることを嫌がっていた。実際、顔射されたり、生で挿入されそうになったりとトラブルは絶えなかったという。ただ、中国人富裕層の中には金離れのいい者も多くて、チップも弾んでくれることから、むしろ率先して中国人客を相手にしたいと考える女のコもいるそうだ。
そして、中国人観光客の恩恵を最も受けている風俗スポットは吉原だといわれる。バブル崩壊後は4万円以上の中流店が軒並み売上げを落とし、2万円以下の激安店が続出したが、そんななか救世主として登場したのが中国人だった。もともと吉原は「外国人お断り」の店が多かったが、不況の今はそうも言ってられず、多くの店が外国人客を受け入れている。
「中国でも、吉原こそ日本最高の風俗スポットだという情報は知れ渡っています。金持ちだったら、せっかくの思い出づくりなので、安いところじゃなくて、高級店を選ぶと思いますよ」(前出・孫向文氏)
吉原の高級ソープ店に勤める元企画系AV女優のKさんは、これまで20人近くの中国人客を相手にした。
「中国人客は、日本人と違って、ソープのマットサービスに慣れていません。抜き挿しだけの淡白なセックスしか知らない。だから、ローションを塗りたくってマットサービスしたら大興奮するんです。挿入した頃にはもう破裂寸前で、すぐにイッちゃいます。日本人客よりも挿入時間が短くて楽ですね。でも言葉も通じないし、なかには暴力的な人もいるから怖いこともあります」
■AV女優に一晩1000万円を提示
吉原以上に中国人の心を捉えて離さない存在が、AV女優である。中国はポルノが違法というお国柄もあって中国産AVは生産されていない。そこで中国国民は、ネットなどに違法アップロードされた日本産のAVを観ている。日本のAV関係者は、そんな中国でのAV人気に乗じて中国マネーを取り込もうと躍起になっているのだ。
中堅どころのAV事務所のマネジャーHさんは、中国でのアダルトビジネス事情を教えてくれた。
「うちも中国では撮影会をやったり、AV女優だけの歌のユニットを結成してライブをやったりしています。日本だと、ろくに客が入らなくても、向こうだとAV女優というだけで客が殺到するんです。時には中国側のイベント運営者から『AVのコを一晩買いたい人がいる』と相談を受けることもありますよ。ただ、AV女優は一般人相手に体を売る仕事じゃないので、うちは受けていません。一晩の額は1000万とか提示されたこともありますけどね。特にマカオでのイベントの際は、中国の富裕層がたくさん集まってくるので、あり得ない額を出してきます」
マカオは、今やラスベガスの5倍以上もの市場を誇る世界最大のカジノスポットだ。収益金の8割はVIPルームの客が落としているといわれており、最低賭け金が2500万円のテーブルも存在している。もちろん、中国人富裕層も多く存在する。そんな桁外れの金持ちにしてみれば、一晩1000万円も格安なのかもしれない。ちなみに、中国にもいくらでも美人はいるはずだが、日本人女性の何が受けるのか。
「確かにスタイルとかルックスでいうと、中国人女性のほうが上でしょう。バストも大きいし、足も長いし、目鼻立ちの整った170センチ以上の美女がそこら中にいる。でも、中国にはかわいいという概念がない。日本のアイドルみたいにほほ笑んだり、かわいらしい仕草とか声色を使えない。かっこよく見せようとする意識は強いけど、かわいらしいメイクも全然できないんです」(同前)
今や世界を席巻する日本産の「kawaii」は、中国人に対しても絶大な効力を発揮しているようだ。
先月8日、中国が今年、GDPで米国を追い抜いて世界1位になるとの試算が国際通貨基金(IMF)によって発表された。どこまでその成長が続くかは定かではないが、中国人富裕層の性的欲望はしばらく収まりそうにはない。
取材・文/井川楊枝
(『宝島』12月号より)
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上海のセックス産業展示会に出演した日本のAV女優。AV女優がいると人の集まり方が違うという(写真/アフロ)
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今年4月、上海で行われた「アダルト・エキスポ」の模様。寝た子を起こしたら、とんでもない暴走を始めた(写真/Imaginechina/アフロ)
昨年夏から中国でひそかに話題になっている風俗がある。それは、産後で母乳のよく出る女性の乳を、赤ん坊の気分になりきって吸うことができる「授乳風俗」。本格的な赤ちゃんプレイといったところだが、なぜ、このような風俗が誕生したのか。
『中国のヤバい正体』(大洋図書)の著者、中国人漫画家の孫向文氏がこの奇妙な風俗の成り立ちを説明する。
「2008年、粉ミルクからメラミンが検出され、中国国内で4人の乳児が死亡し、5万4000人が腎臓結石の被害を受けました。その後、粉ミルクへの不満が高まり、乳のよく出る女性には、母乳が必要な家庭のために分け与える仕事が生まれました。そこに目を付けたのが深圳(しんせん)の商人で、彼らは“大人向けの母乳提供サービス”を思いついたんです」
このサービスがネット上で発表されるや、国民は「破廉恥すぎる、モラルの低下も甚だしい」と大反発。その一方、一部の者たちの心を鷲づかみにした。
「その業者は国民の反発に怖気(おじけ)づいて撤退しましたが、その後、ある共産党員が授乳女性をネットで募ったりしました。彼はひそかに授乳パーティをやろうとしたようです。さらに今年6月、もうほとぼりが冷めたと思ったのでしょう、授乳風俗店が正式に深圳でオープンしました」(同前)
店のサービス料金は日本円で1時間2万円程度。中国都市部の平均的な月収は6万円程度なので、かなりの高額といえる。もちろん庶民が手を出せる額ではない。これは、中国国内で急増する富裕層をターゲットにした“風俗ビジネス”だった。
米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の調査によると、中国の富裕層(流動資産が100万ドル=1億円以上)の数は今や日本の2倍以上。ここ数年、年率15%以上の割合で増加している。そんな膨張する資産に比例して、彼らのいびつな欲望も底なしに拡大している。前述の授乳サービスはほんの一例でしかない。
日本の大手電機メーカー広東支社に勤務する島田隆弘さん(仮名)が半ば呆(あき)れながら語る。
「実質、中国は一夫多妻ですよ。官僚を中心として、力のある人はたいてい愛人を侍(はべ)らせています。僕が仲良くしている広州の国営企業の中国人社長は4人の秘書がいます。その4人とも愛人で、それぞれにマンションの部屋を与えていますね」
中国政府系メディア『人民論壇』によれば、2010年に調査や処分を受けた腐敗幹部の95%に愛人がいたと報告された。5人以上の愛人を持つケースもザラで、江蘇省建設庁庁長だった徐其躍に至っては146人もの愛人の存在が確認された。愛人を所有することは成功者のステータス。収入が増すたびに車を買うようにして愛人を侍らせていくのが中国社会なのだ。
■海外に会社を設立、愛人を役員に
島田さんは、その広州の社長の乱れきった下半身のエピソードを暴露する。
「以前、その社長と日本のAVの話で盛り上がったんですが、そのとき彼は自慢げに語っていました。なんでも週末になると、4人の愛人をマンションの一室に呼び寄せ、5Pセックスをするみたいですね。彼が一番自分の権力を実感できるのは、4人を一斉に四つん這いにさせて1人ずつ順番に入れていくときみたいです。あと、金持ち同士でお互いの愛人を持ち寄って乱交パーティすることもあるようですね」
なお、愛人募集の際は、経営者であれば秘書を募るのが一般的。それ以外だと、ミスコンのスポンサーになり、参加女性の中で気に入った女性と連絡を取り合う者や、はたまた「10万元(約160万円)で自宅の猫と遊んでくれる美女を募集」と告知を出した大富豪もいた。さすがに表立って愛人を募ることはできないが、いくらでも抜け道はある。
しかし、こうして性を謳歌(おうか)しているのはごく一部の金持ちでしかなく、庶民は、その割りを食っている。都内の日本語学校に通う蔣正銘(ショウ ショウメイ)さんは忌々しげに語る。
「習近平政権になってから、汚職を厳しく取締まるようになった。だから、腐敗官僚がたくさん捕まっています。最近は、扱われ方に不満を持つ愛人が、密告するケースも増えています。ざまあみろですよ。中国女性はだいたい打算的で金のある男にすり寄る。貧乏人の男と結婚するぐらいなら金持ちの愛人のほうがいいと考えるんです。だから、金のない男は今、中国では本当に結婚できません」
一人っ子政策を実施している中国においては、お腹(なか)の子が女児だと判明すると堕胎するケースが多く、人口比は男が117に対して女は100となっている。しかし、一部の金持ちがいい女を独占するため、多くの中国人男性があぶれてしまっているのだ。そして、蔣さんが何よりも富裕層に対していら立ちを覚えるのは、その売国行為にあるという。
「汚職で私腹を肥やしてきた官僚とかが、その金で海外に会社を設立している。そして愛人を会社の役員などで登用しているんですよ。ゆくゆくはあいつらも海外の永住権を取得して中国から去りますよ。僕ら貧乏人から搾り取った金は全部、中国に還元しないで海外に流れていくんです」
ロサンゼルスやカナダのトロントでは、ここ数年で中国の高級官僚たちが名だたる高級住宅地を買い漁った。彼らは愛人に別荘の管理をさせており、この地域は地元で「愛人村」と呼ばれている。
大気汚染や食の汚染、不動産バブルの終焉(しゅうえん)、習近平の汚職の取締まり強化を考えると、彼らにとって今後も中国にとどまり続けることは賢い選択ではないのだろう。
■不況の吉原を救った中国マネー
中国人富裕層の欲望の矛先は、この日本にも向けられている。反日のお国柄でありながらも、中国国内で日本は屈指の人気観光スポットになっている。とりわけ今年はアベノミクスによる円安効果で、中国人観光客は前年比で70%増が予想されている。日本へ観光に来るのは中産階級以上だ。
都内の高級デリヘル(90分6万円)の店長Sさんは、中国人の経済力を肌身に感じている。
「風俗サイトの運営会社から、『中国人観光客に向けた中国語サイトを作るけど、中国人対応は大丈夫ですか?』って尋ねられたから、オーケーと答えたんです。そしたら、1カ月後には半分以上の客が中国人になった(笑)。あわてて中国人留学生を電話対応に雇ったね」
店の女のコたちは当初、中国人を相手にすることを嫌がっていた。実際、顔射されたり、生で挿入されそうになったりとトラブルは絶えなかったという。ただ、中国人富裕層の中には金離れのいい者も多くて、チップも弾んでくれることから、むしろ率先して中国人客を相手にしたいと考える女のコもいるそうだ。
そして、中国人観光客の恩恵を最も受けている風俗スポットは吉原だといわれる。バブル崩壊後は4万円以上の中流店が軒並み売上げを落とし、2万円以下の激安店が続出したが、そんななか救世主として登場したのが中国人だった。もともと吉原は「外国人お断り」の店が多かったが、不況の今はそうも言ってられず、多くの店が外国人客を受け入れている。
「中国でも、吉原こそ日本最高の風俗スポットだという情報は知れ渡っています。金持ちだったら、せっかくの思い出づくりなので、安いところじゃなくて、高級店を選ぶと思いますよ」(前出・孫向文氏)
吉原の高級ソープ店に勤める元企画系AV女優のKさんは、これまで20人近くの中国人客を相手にした。
「中国人客は、日本人と違って、ソープのマットサービスに慣れていません。抜き挿しだけの淡白なセックスしか知らない。だから、ローションを塗りたくってマットサービスしたら大興奮するんです。挿入した頃にはもう破裂寸前で、すぐにイッちゃいます。日本人客よりも挿入時間が短くて楽ですね。でも言葉も通じないし、なかには暴力的な人もいるから怖いこともあります」
■AV女優に一晩1000万円を提示
吉原以上に中国人の心を捉えて離さない存在が、AV女優である。中国はポルノが違法というお国柄もあって中国産AVは生産されていない。そこで中国国民は、ネットなどに違法アップロードされた日本産のAVを観ている。日本のAV関係者は、そんな中国でのAV人気に乗じて中国マネーを取り込もうと躍起になっているのだ。
中堅どころのAV事務所のマネジャーHさんは、中国でのアダルトビジネス事情を教えてくれた。
「うちも中国では撮影会をやったり、AV女優だけの歌のユニットを結成してライブをやったりしています。日本だと、ろくに客が入らなくても、向こうだとAV女優というだけで客が殺到するんです。時には中国側のイベント運営者から『AVのコを一晩買いたい人がいる』と相談を受けることもありますよ。ただ、AV女優は一般人相手に体を売る仕事じゃないので、うちは受けていません。一晩の額は1000万とか提示されたこともありますけどね。特にマカオでのイベントの際は、中国の富裕層がたくさん集まってくるので、あり得ない額を出してきます」
マカオは、今やラスベガスの5倍以上もの市場を誇る世界最大のカジノスポットだ。収益金の8割はVIPルームの客が落としているといわれており、最低賭け金が2500万円のテーブルも存在している。もちろん、中国人富裕層も多く存在する。そんな桁外れの金持ちにしてみれば、一晩1000万円も格安なのかもしれない。ちなみに、中国にもいくらでも美人はいるはずだが、日本人女性の何が受けるのか。
「確かにスタイルとかルックスでいうと、中国人女性のほうが上でしょう。バストも大きいし、足も長いし、目鼻立ちの整った170センチ以上の美女がそこら中にいる。でも、中国にはかわいいという概念がない。日本のアイドルみたいにほほ笑んだり、かわいらしい仕草とか声色を使えない。かっこよく見せようとする意識は強いけど、かわいらしいメイクも全然できないんです」(同前)
今や世界を席巻する日本産の「kawaii」は、中国人に対しても絶大な効力を発揮しているようだ。
先月8日、中国が今年、GDPで米国を追い抜いて世界1位になるとの試算が国際通貨基金(IMF)によって発表された。どこまでその成長が続くかは定かではないが、中国人富裕層の性的欲望はしばらく収まりそうにはない。
取材・文/井川楊枝
(『宝島』12月号より)
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上海のセックス産業展示会に出演した日本のAV女優。AV女優がいると人の集まり方が違うという(写真/アフロ)