2014年02月

「金メダリスト羽生の隣の“おばさん”」は誰だったのか?!ソチ五輪トリビア

 細部にこだわるリポートが思わぬ波乱を巻き起こす――。街の小ネタから編集部が取材で拾った怪情報まで、記事にならなかった情報を集めた今月のサイド・ストーリー集<「足」で見つけたB級ニュース総集編 一番町情報局TOP10>から、その一部を紹介。

【5位】 ソチ五輪異聞・10日間続いた「羽生の隣のおばさん」ブーム

一番町情報局・5位 ソチ五輪金に輝いた羽生結弦。SP100点越えは見事としか言いようがないが、静かな話題となったのは「隣のおばさん」の仰天表情。
「コーチか」「母か」「通訳か」と話題になったが、実はこの人、レッキとしたスケート連盟のフィギュア強化部長、小林芳子氏。
 ここまでは知っている人も多いが、小林部長の夫が元プロ野球外野手ということはあまり知られていない。1978年ドラフトで阪急に4位指名された小林晋哉氏がその人で、現在はDeNAスカウト。以上。


【10位】 麹町界隈で「ラーメン戦争」勃発 「安さが売り」日高屋危うし

一番町情報局・10位 編集部にほど近い麹町に「俺の創作らぁめん 極や」がオープン。30メートルほどの並びに3軒のラーメン屋が出没、さらに付近の新宿通り沿いにも刀削麺、つけ麺店などがひしめく「ラーメン戦争」エリアとなっている。「極や」ができる前にあったのは24時間営業の「いわもとQ」。同店マニアとして知られ、夜中に隠れて酒を呑むのが趣味だった編集部長老Oの嘆きは深い。それぞれ深夜遅くまで営業しているラーメン店。近くには老舗の出版社もあり、そのうち編集部員のオアシスとなるかも。



(記事の全文は『月刊宝島』2014年4月号に掲載)

人気ラーメン「天下一品」スープの最高の食べ方とは?

 長澤まさみもベッキーも大好きな、天下一品のこってりラーメン。あのスープはスープと呼ぶべきものではない。時に濁りながら、時に渋い光を放ちながら、ただただ麺を底なしの甘美な世界にひたらせるトロットロの液体、それは世界一美味しい「沼」なのである。
 まるで禁断の愛のようにねっとりと絡む沼スープは、最近流行の「鶏白湯スープ」の元祖にして神的存在である。関西出身の人がみんな「いけないものをそっと教えるかのように勧める」そのスープは、『犬神家の一族』の映画のポスターのように、沼の中に箸が2本、凛として立つとまで言われた半個体もどき。なぜ箸が立つのかと言えば、鶏のコラーゲンと野菜のポタージュが絶妙のエキスを凝縮させているからである。
 言うまでもなく筆者は天下一品の沼スープが大好きである。しかし同時に、あのラーメンの「麺」がいただけないとずっと思ってもいる。スープが絡みやすいように、あえて表面をザラザラさせているのであろうその麺は、同時にスープの丸みを消している。よって時には途中で麺を諦め、沼スープを白飯にオンザライスすることもあるのだ。
 そんな沼スープへの偏愛は、もはやラーメンという世界を逸脱させる発想へ切り替わる。天下一品はWEBでも、そして多くの店舗でも調理前のものを販売している。筆者はこれを何人前も買い求め、沼スープだけを使用してさまざまな料理に活用する。とんだ大人買いだが、これが美味い。
 まずは「水炊きスープ」。これはもう普通に最高のスープである。柚子胡椒との相性も抜群だし、鶏肉はまるで故郷に戻ったかのように喜々として沼を泳ぎまくり、ツルッツルの美肌となる。問答無用に美味い。
 そして「天一カルボナーラ」。少し煮詰めて旨味もトロ味も凝縮させた沼に、ラーメンの麺ではなく、パスタと生卵の黄身と胡椒とレモン汁を絡めて食べる。パスタのコシとツルッツル具合とのマッチングが素晴らしい、スープと麺の理想的な国際結婚である。
 一番勧めたいのは「天一フォンデュ」。沼を究極まで煮詰め、野菜やパンをドロッとつけて食す。最高である。ほんの少しナンプラーを混ぜ、レモンを大量投入すると、それはそれは国籍不明の世界遺産級の「ソース」が生まれる。一番つけたい具は「お餅」。雑煮もチーズフォンデュも平伏す、圧倒的な味の魔境。あぁぁぁぁ、ビバ天一!



鹿野 淳(しかの・あつし)●雑誌『MUSICA』を発行したり、音小屋って音楽ジャーナリスト学校始めたり、@sikappeでツイートしたり、自分の名前でFacebookもやってます。


天下一品 <写真>こってり沼スープにお餅をイン! 天一フォンデュ、ぜひお試しあれ。

大王製紙「カジノ事件」、創業家のドン・井川高雄が語る。刑務所の中の息子との面会

上場企業のトップが子会社から巨額の資金を借り入れ、カジノで散財したいわゆる「大王製紙事件」から2年半。井川意高・元会長の刑事裁判は終了したが、その後の大王製紙では創業家のドンと現・経営陣との間で暗闘が続いている。井川意高・元会長の父、井川高雄・大王製紙顧問の告白。

井川高雄 2011年、創業家の会長が巨額の資金を子会社から借り入れ、その多くを海外のカジノで浪費するというスキャンダルに見舞われた大王製紙。
 最高裁判所は2013年6月、会社法違反(特別背任)罪に問われた井川意高・元会長に対し、上告を棄却。懲役4年の実刑判決とした1・2審の判決が確定した。
 現在は栃木県の喜連川社会復帰促進センターに服役する井川意高・元会長は昨
年11月、『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』を出版。
自身の生い立ち、交友、経営、そして賭博の深みにはまり込んでいく焦燥心理が綴られた同書はベストセラーとなっている。
 一方、経営立て直しを図る大王製紙は揺れている。
 佐光正義社長ら現・経営陣と大王製紙が設置した「特別調査委員会」は、事件の背景に創業家の井川一族支配があったと結論付け、意高・元会長の父であり、大王製紙グループの「中興の祖」と呼ばれたかつての最高実力者、井川高雄顧問を追放。
 さらに創業家に対し、大王製紙と関連会社の株を売却するよう求めたのに対し、井川高雄氏は「事件を奇貨とした会社乗っ取りだ」と強く反発した。
 一時は大王製紙グループの分裂危機も囁かれたが、2012年6月、製紙業界5位だった北越紀州製紙が“仲裁”に名乗りを上げる。
 高雄氏ら創業家が保有する株式を北越紀州が引き取り、その売却益で井川家は約59億円の借入金を大王製紙に返済。北越紀州と大王製紙は経営統合含みで資本提携し、高雄氏は顧問に復帰することで一応の決着を見たのである。
 だが、その後も大王製紙ではスキャンダルが相次いでいる。
 不正経理を内部告発した社員の解雇をめぐる民事訴訟。あるいは北越紀州との経営統合路線に逆行する株取引と、インサイダー疑惑。大株主の立場から﹁疑惑解明﹂を求める北越紀州が佐光社長の再任に反対するなど、資本提携したはずの両社は現在、緊張関係にある。
 世間を揺るがせた事件から2年あまり。一代で大王製紙を連結売上高4100億円の日本を代表する製紙大手に育て上げたカリスマ経営者、井川高雄氏はいま、何を思うのか。

刑務所の面会室で対面した「息子」
 昨年の12月、私と妻の2人で、意高が服役する栃木の社会復帰促進センターへ面会に行ってまいりました。「社会復帰促進センター」と言えば聞こえは良いが、要は刑務所ですわな。
「体重も落ちて、健康になりました」
 ガラスの向こう側に座った意高は、母親に心配をかけまいと思ったのかそんなことを口にしました。
 私はこう返しました。
「そりゃ酒飲まんのやから痩せるし、健康にもなるだろう。ま、風邪だけひかんようにせえよ」
 会話らしい会話と言えばその程度です。
 意高の本(『熔ける』)のことですか。ええ、目は通しております。もっとも、私はそんな本が出るなどまったく聞かされておりませんでした。意高は公判中、保釈されている時期が長かったので、おそらくその間に書いたのでしょう。
 感想を1つだけ述べるとすれば、あの事件に関する部分で弁解したり、あるいは他人を批判したり、悪く書いていないことだけは良かったなと思います。
 私はバクチが嫌いですが、アレは好きなんですな。学生のときから麻雀をやって、射幸心が強いと言うのか……息子とはいえ、いまでも分かりません。カジノに入り浸る者の気持ちが。
 私はこれまで、多くの取材をお断りしてきました。
 何かを話すことで、意高の公判を有利に運ぼうとしているのではないかと思われたくありませんでしたし、私もこういう性格なので、水を向けられればつい余計なことを話してしまう。そういう考えで自制しておりました しかし、裁判も終わりました。意高に対する判決について、司法の一事不再理については理解しておりますし、私が何か申し上げることはありません。
 ただ、一連の事件発生後に起きたことを、私がどう考えているのか。この場をお借りしてお話ししておきたいと思います。
 結論から言えば、私はいまでも、大王製紙の現・経営陣と特別調査委員会がやったことに納得していないのです。
 確かに息子の意高は不祥事を起こしました。しかし、その法的責任は父親である私にも及ぶ、という連座の論理で大王製紙は私と井川家を排除しようとした。私が問題にしたいのはこの点なのです。

井川意高氏

<著書を出版した井川意高・元会長>






(記事の全文は『月刊宝島』2014年3月号に掲載)

あなたが食べている魚は本物!? 「マグロ=マンボウ」「真鯛=ティラピア」の実態・・・

 食品偽装がニュースを賑わす現代ニッポン。中でも回転寿司ネタは永遠のグレーゾーンとされている。日本ならではの代用魚文化、その代表種を玄人の視線で大紹介!

■日本のお家芸・代用魚
 食品偽装問題がメディアを賑わす昨今、<偽装のトップランナー>と外食業界で言われ続けているのが<代用魚>だ。回転寿司のコストカットに一役も二役も買い、回転寿司を外食の王様に押し上げてきた立役者でもある。元消費者生活センター勤務の飯塚茂樹さんは、代用魚は食品偽装ではないの? という疑問にこう答える。
「食品表示を偽れば違法になりますが、タイ(鯛)とお品書きにあっても、お役所向けの店内書類に<エソその他加工>と明記されていれば、ギリギリ法には触れないというようなグレーゾーンなんです。歴史を遡れば、明治時代に政府のお墨付きでソウギョをタラなんかの代用魚にしたこともあり、代用魚は、いわば日本のお家芸なんです」
 では、このお家芸と長年、卸業と現場でネタとして付き合ってきた<代用魚の通>に登場願おう。築地市場仲買人歴53年である岩瀬康夫さんと、寿司屋Tで41年間カウンターに立ち続けた平野元さんだ。

■アカマンボウ
岩瀬「マグロの代用といえばアカマンボウ。こいつ、マンボウって呼ばれてるけど深海魚でリュウグウノツカイの仲間なんだ。漁師に聞いたり、知り合いの学者に言わせると謎の深海魚らしいね」
平野「え? それは私も知らなかった。2メートル超えて、300キロのアカマンボウを那覇で見たけど、表面はタチウオみたいにギラギラしててね。ヒレと眼の周囲が真紅なんですよ」
岩瀬「アカマンボウは傷がつきやすくて流通的に難しかった。だから市場では敬遠されてきた。だけど切り身にしたり、即加工が可能になってマグロの代用にされ始めた。この5、6年の間に急成長した魚」
平野「歯ざわりは似てるけど、ちょっと濃いかなあ……腹を生で出すと中トロくらいの脂分を感じる。背肉はムニエルとかで出す」
岩瀬「外食でしか出回りにくい魚だな。消費期限が短いし漁獲の絶対量が少ない。流通網が整ってないとダメ。回転寿司チェーンはアカマンボウ用の加工流通を整備して対応してるから安くお客さんに出せる」
平野「珍重魚から外食の花形代用魚になりつつある代表選手ですね」

アカマンボウ
<マグロの代用で人気急上のアカマンボウ。大型深海魚で釣りでは珍重。形は似ているがマンボウではない。>






■ナイルパーチ・アカメ
岩瀬「スズキの代用、ナイルパーチはアフリカの淡水魚。デカいんだ、2メートルクラスが釣り上げられてる」
平野「白身魚のフライと呼ばれるものの肉はコレです。2003年のJAS法改訂でスズキと表示しちゃダメってなりました」
岩瀬「アカメ、メヒカリはスズキの生食代用で回転寿司で見かけるね。生態じたいも河口に棲んでるし、とっても近い。南西諸島でたくさん獲れてるアカメモドキって小型のアカメが最近は流通量が増加してる。バラマンディって近縁種は輸入されてるけど、スズキと食べ比べて分かんない味」
平野「輸入物、養殖物では問題なしですけど、国産天然アカメは絶滅危惧種に指定されているほど希少。これは代用乱獲の結果だと疑われています。裏業界でウナギの密漁が取り沙汰されましたが、天然アカメはマイナーだから注目されなかった」
岩瀬「アカメの稚魚密漁は問題だよ。組織的に行われていて、ウナギの一件と同じ奴らが絡んでいるんだ。ヤクザのしのぎにも使われている」

ナイルパーチ
<その名の通りナイル生息のスズキの一種。巨大になるので釣りで人気に。白身魚のフライといえばこの魚肉!>




■ティラピア
平野「ティラピアは真鯛の代用で、寿司屋からは『あんなニセモノ』って冷たくあしらわれてきた魚。だけどギリシャとか行くと普通に食べられてる大衆魚なんです」
岩瀬「川魚でタイと呼べる代物じゃないのにイズミダイとかチカダイって名前で店に売られていたんですよ。国内養殖されてたけどコスト高と真鯛の養殖普及で近年は敬遠されてます。輸入物はまだ安いから代用に使ってる回転寿司店もある。身に臭みはないし、味は普通にイケる」
平野「焼き物で使えば下手な養殖鯛より美味いと言っていいほど美味しい」

ティラピア
<欧州や中東では大衆魚であるティラピア。焼くと美味しい魚。ナイル種は最もメジャーで観賞用にもなっている>




 ウナギの希少化、マグロの高騰など話題に事欠かない漁業界だが、品薄・値上がりがあれば代用魚という図式はこれからも変わらないという。

(記事の全文は『月刊宝島』2014年3月号に掲載)


取材・文/岸川真
月刊宝島
記事検索