「3・11」の超巨大地震のしわ寄せは「歪ひずみの伝でん播ぱ」というかたちで周辺地域に確実に及んでいる。さらに、地震として感じなくともM9を起こした周辺のプレートは、この数カ月間ズルズルとすべってきた(これを余効すべりという)。通常の地震に換算するとその規模はM8・7を超え、「歪みの伝播」に拍車をかけている。

 2012年、最も懸念されるのが首都圏の地震だ。東京直下ではM9に誘発されて以前の数倍のペースで地震が発生するようになった。 問題は活動の減衰が遅いことだ。いまだに震災前よりも3倍以上活発な状態を保っている。余効すべりの影響だろう。東京では1855年安政江戸地震(M7・2)以降、大きな直下型地震は発生していない。歪みが限界に達している断層があってもおかしくない。
 関東地方では、直下型地震といっても深さが数十キロメートルになる。震源が深いと揺れは緩和されるが、逆に被災範囲が拡がる。関東平野全体が影響を受け、大混乱が起こることも予想される。

 次に危険性が指摘されるのは房総沖(銚子沖)と青森県沖で、双方ともM9震源の延長部にあり「歪みの伝播」をまともに受けている。特に、房総沖は首都圏に近く津波発生の危険性も高い。同様に、沈み込む太平洋プレート内部の断層で震」も再度大津波をひき起こす可能性がある。太平洋プレート内の地震発生数は急減しているが、伝播した
歪み自体は大量の小地震をもっても解消されない。

(京都大学防災研究所准教授 遠田晋次)


1/25発売『宝島』3月号より