病院などの医療機関で診察料を支払う際、提示された金額を見て驚いた経験はないだろうか。患者の予想以上の金額となる理由のひとつに「管理料」や「指導料」などの加算がある。納得して医療費を払うために、患者に提示される診療報酬が決まるカラクリを解き明かす。

P30医療明細書■診察せずに2000円上乗せの可能性が――
 医師の診察を受けた際に支払う診察料。数分程度の診察に、なぜこんなに支払わなければならないのか疑問に思うこともあるだろう。
 病院経営に詳しい医療コンサルタントの森清光氏、医療分野のQMS(品質マネジメントシステム)調査員の渡邊喜二氏は「患者さんは診察後に診療明細書を必ず確認するべき」と口を揃える。診療明細書は医療機関で診察を受けると必ず発行されるが、見てもよくわからないからと、よく読まずに捨ててしまう人も少なくないだろう。
「明細書には、かかった医療費の内訳が診察内容ごとに明記されています。“基本料金”ともいえる診察料のほかに、『加算』というものが数多く存在し、この加算が患者が知らない間にプラスされ、患者の予想以上の金額になることがあるんです」(森氏)
「加算」はあらゆる診療行為に設定されている。たとえばCT検査の場合、診察する医師とは別に、検査画像の診断を専門とする医師(画像診断専門医)が読影することがある。患者と直接話をすることはないが、この診療行為についても別途料金がプラスされている。こうした加算はきちんと専門医を配置しているからこそで、信頼できる病院といえるが、なかには次のようなケースもある。
「よく目にする加算で代表的なのが『特定疾患療養管理料』です。金額は医療機関の規模によって異なり200床未満の病院で870円、診療所では2250円で、月2回まで算定され、200床以上の病院では算定できません。この加算は糖尿病や高血圧症など特定の疾患をもつ患者に対し、症状を改善するために医師が食事量や運動量などについての指導を行い、その内容をカルテに記載した場合に算定できるとなっています。にもかかわらず、実際は一言、二言でのアドバイスで加算されてしまうケースも多くあります」(森氏)
 症状改善のための指導内容を患者に丁寧に説明した上で注意点をまとめた紙などを渡してくれるのであれば加算も納得できるが、糖尿病などの患者が薬をもらうために再診に訪れるごとに、大した管理・指導も行わず、再診料に加えて管理料が「加算」された金額を払っていることもあるのだ。
 そうした行為が横行していることも考えられるため、渡邉氏は医療機関を審査する際にこの「特定疾患療養管理料」の加算状況を必ずチェックしているそうで、極端な例では、カルテに指導内容の記載がなくても対象となる疾患の患者であれば受付で自動的に加算されるケースも過去にはあったという。加算対象には慢性的な疾患が多く含まれており、継続的に必要以上の費用を支払っている患者は少なくないと考えられる。

■明細にないと逆に危険『感染防止対策加算』
 ただし、当然ながら加算は必要な医療を受けるためのもの。逆に、加算されていないとかえって危険なものもある。たとえば入院時のケースだ。
 通常、入院すると診療報酬に『感染防止対策加算』という加算が含まれている。感染防止対策加算には1と2があり、加算を取るためには各種条件があるが、1は専従(他の業務を兼任しない)の看護師などが配置されていることで4000円、2は専任(他の業務も兼任可能)の看護士などが配置されていることで1000円が加算される。これについての施設基準は院内に掲示されている。また、院内が清潔に保たれていることも感染防止に繫がるので観察するとよいだろう。
「つまり、もし入院先の病院でこの加算がなければ、院内感染について何も対策をしていない病院である可能性が高いといえます」(渡邊氏)

■明細の項目が不明なら質問するべき
 ほかにも、医療費を余計に支払っていると考えられるケースがある。
 たとえば外傷の場合、傷の大きさによって処置料が変わり、5冖にまでは4700円といった具合に、冀碓未悩戮く決められている。だが、「実際は縫った針の数などを元にした医師の感覚で決められている事例もある」(森氏)ため、処置料はしっかり確認するべきだろう。
 とはいえ、加算の状況は複雑で、また種類が膨大な数に上るため患者側が理解するのは難しい。これについて渡邊氏は「わからなければ質問したほうがいい」という。
 「もし受付などで質問して嫌な顔をされたら、患者としっかり向き合う意識が希薄ということ。最近はどの職種でも説明が求められることから、対応の悪い医療機関はお勧めできません」(渡邊氏)
 また、同じ診断でもかかった医療機関の規模によって金額が変わることがある。たとえば、先に述べた画像診断専門医によるX線撮影などの処置を受けた場合に「画像診断管理加算1、2」が診断料にプラスされるが、小規模な医療機関に適用される1は700円であるのに対し、総合病院など大きな医療機関に適用される2は1800円と、倍以上の開きがある。
「とりあえず総合病院」と考えるのではなく、軽傷であれば、クリニックなど小規模な医療機関を利用するほうが賢明といえる。
「事前に保険の枠の有無や支払金額を聞くことが習慣となっている欧米と違い、日本で医療を受ける場合には支払いの時まで金額がわからない」(森氏)のが実情。患者は自らの症状を勘案し、適切な医療機関を選ぶことが必要だ。



森 清光(もり・きよみつ)
医療ジャーナリスト。順天堂大学医学部附属順天堂医院勤務を経て、1991年に株式会社ジャパンコンサルタントアンドメディカルサービス入社、2005年に代表取締役社長就任。医療・福祉関連企業を中心にコンサルティング業を行っている。

渡邊 喜二(わたなべ・よしじ)
民間病院のコ・メディカル部長として、薬剤科、放射線科、検査科、医事課等の管理を行う。また医療安全管理者の経験を活かし、2004年から医療・介護専門の品質マネジメントシステム審査員として活動中。2013年より日本医療科学大学看護学科非常勤講師も務める。


(『宝島』2015年6月号より)