時間とお金に余裕がないビジネスパーソンに愛されている「立ち食いそば」。そして、それを提供する3大チェーンもまた、壮絶な勢力争いで“余裕がない”状況が続く。はたして、この戦いを勝ち抜くのはどこなのだろうか?

■水面下で勃発!?3社の縄張り争い!
「安く・早く・おいしく」食べられる駅そばや立ち食いそば。ところが、いくら日本の国民食とはいえ、ビジネスパーソンの胃袋をつかむのはそう容易ではない。
 総務省統計局の「経済センサス」によれば、2001年まで順調に伸びていたその店舗数3万5000軒前後は、その後、緩やかに減少。さらに、リーマンショックが追い打ちを掛け、09年以降は千軒単位で減り、12年には3万1869店舗にまでに落ち込んでしまう。
 このように、デフレの持つ破壊力は、そばチェーン店にも大打撃を与え続けてきた。
 ただし、そんな苦しい状況のなかでも、勢いのあるチェーンがある。
 それが「名代 富士そば」「小諸そば」「ゆで太郎」の3社だ。ほかのチェーン店は都内に約20〜30店舗を展開するのがやっとというところが多いが、この3大勢力は、それぞれ80店以上も出店しているというのだから突出しているといっていい。
 では、この3社がどうやって勝ち抜いてきたのか、出店戦略や値段・味・店舗設計などの側面から比較検討してみよう。

【名代 富士そば】
■演歌にこだわる「黒い人」狙いのそば
 創業者の丹道夫社長がいまも陣頭指揮を執る「名代富士そば」の歴史は、半世紀に近い老舗そば店だ。24時間営業を日本で最初に導入したことでも知られる。
 その特徴を表すと、良くも悪くも「こだわり」だ。
「普通のそば店のだしはすでに仕込まれたものが多いのですが、うちはかつお節を使ってるので、風味豊かでおいしいだしがとれるんです」(広報・古城氏)
 だが、一方では少々行き過ぎと感じられるこだわりも少なくない。たとえば、床には大理石を採用し、お手軽のそばにはまるでそぐわない、高級感と居心地の良さを前面に押し出す。さらに、「演歌に統一した」店内のポスターとBGM。これはかつて社長が演歌を聴いて励まされたという経験からきているというが若い人には違和感を与えそう。

富士そば

<人気NO.1> 天ぷらそば 380円
そばにかき揚げが乗っているため、なかなかのボリュームがある。価格も安くてお腹いっぱいに食べらるので、大満足の商品だ。


【小諸そば】
■「メタボ」と「金欠」のビジネスパーソンに人気!?
 3大そばチェーン店のなかで「安さ」をウリにして先頭を突き進む「小諸そば」。3社のなかで、かけそばともりそばが「230円」と最安値価格、なんと牛丼より2割以上も安いのだ。
 それだけではない。店内の卓上に置かれたネギは食べ放題。この「無料取り放題ネギ」を使ってダイエットに励む「小諸そばファン」がいるという都市伝説めいた話は有名だ。
 一般に、そばは300キロカロリー前後とカロリーが少なく、ルチンなどの栄養素も多く含まれている。
そばに、ネギを大量投入して食べれば、満足感はもちろん、健康+ダイエット効果が期待できて当然だ。ちなみに、卓上にはそのほか、七味唐辛子、柚子七味、わさび、小梅、さらに店舗によってはポットにそば湯が置かれているところもある。

小諸そば
<人気NO.2> かき揚げそば 330円
かき揚げは、にんじんや玉ねぎ、春菊、桜海老などの食材を豊富に使用。




【ゆで太郎】
■狙うは「家族連れ」!戦国時代の覇者となるか
 3社のなかで最大の店舗数を誇る「ゆで太郎」。とはいえ、じつは信越食品とゆで太郎システムが運営するハイブリットチェーンだ。その2社ではメニューなどが一部異なるが、今回はより店舗数が多い、ゆで太郎システムに話を聞いた。
 3大チェーンのなかで唯一、通常のそば屋がチェーンに拡大したというのがゆで太郎の誇り。そのためか、そばに対するこだわりは他社を圧倒する。その証拠として「そば粉」の割合が55%にも上るのだ。
「町中のそば屋さんでも、50%前後でしょう。駅構内の立ち食いそば店は18%しか使っていないところもあります」(広報・太田氏)
 また、つゆにも強い思い入れがある。
「1日に1回しかだしをとらないそば店も多いですが、これだと、夕方になるまでに風味が失われてしまうため、うちでは午前と午後の2回にわけてだしとりを行います」(太田氏)

ゆで太郎
<季節限定> 親子そば 430円
鶏肉は肉厚みで食べ応え十分。たまごとめんの絡み合いも抜群だ。




取材・文/オフィス三銃士
(全文は『月刊宝島』2014年5月号に掲載)