テレビから新聞まで、メディアにもてはやされてきた“時代の寵児”与沢翼(フリーエージェントスタイルホールディングス会長)。「常に現金で1億を持ち歩く」「年商50億で年収12億」……本当なのか? 本人を直撃してみることにした。

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■「秒速で1億稼ぐ男」「20代で年商50億、年収12億」
 ネオヒルズ族の代表格として、今や時代の寵児(ちょうじ)ともいわれる与沢翼氏(本名・與澤翼)。20代でネットビジネスに成功。六本木や広尾、麻布など都内一等地に高級マンションを持ち、フェラーリやベントレーなどの高級外車、自家用ヘリコプターまで“所有”するリッチぶりをテレビや週刊誌で披露してきた。
 与沢氏が一躍時の人となったのは、TBSのバラエティー番組『有吉ジャポン』(2012年7月13日放送)で取り上げられたのがきっかけだ。その後、1冊目の著書『秒速で1億円稼ぐ条件』(13年1月)を出版、「たった1人で5億円稼いだ!」などというコピーが躍った黄色い電車広告を見て「いったい何者?」と怪訝(けげん)に思った人も多かろう。
 テレビ番組では、「常に持ち歩いている」という1億円の現金や高級外車を見せびらかしてきた。この“金持ちアピール”が単なるネタならまだしも、与沢氏の場合は、『週刊ダイヤモンド』といった経済誌や『アエラ』『朝日新聞』などの媒体で気鋭の“実業家”としても扱われてきた。
 しかし、与沢氏が経営する会社の事業規模や金集めの手法について検証したメディアは皆無に近い。そもそも、本当に秒速で1億円を稼げるのか? 与沢氏本人に数々の疑惑を質(ただ)した。

■年商50億、年収12億はあくまでも「見込み」
 「秒速で1億を稼いだことはないですね。秒速で1億円稼ぐ条件っていうのは、フォレスト出版の太田社長が命名してくださった。秒速というのも、1秒でって書いてあるわけじゃないですし、比喩です。1秒で1億稼いでますと言っているわけではないです」
 与沢氏はあっさりと否定したが、与沢氏を取り上げた雑誌記事のほとんどが、不思議なことにこれを疑っていない。グループ企業11社の内実、年商50億、年収12億といった数字についても同様だ。
 そこで、与沢氏の事業を独自に調べてみると、実際には“誇張”“矛盾”があることがわかった。
 まず、グループ企業の実態を見てみよう。11社の概要は別表として掲載するが、これを見ると、グループ会社のほとんどが資本金300万〜1000万円程度の中小・零細企業である。与沢氏を紹介した『週刊ダイヤモンド』(12年10月号)は「グループ企業が11社」あると書いたが、当時はFAW社、HCM社、GIE社、AOM社、A社の5社は法人登記されていなく、会社の体をなしていない。
 また本誌の調べでは、「年商50億」はあくまでも見込みの数字で、実績を表した数字ではなかった。グループ会社のうち実際に決算を出したのは、中核企業のFASH社とA社の2社のみ。FASH社の13年8月期売上は15億円で、A社の売上は月に800万から1000万円程度だ。
「グループ全体で月に4億稼いだことがあって、それをもとに年商50億と言っていました。ただ、今ではそれが進行していって、実際にゴマブックスを含めたグループ会社で、50億近くは売り上げる見込みです」(与沢氏)
 テレビが取り上げてきた「年収12億」という数字も、一度月に1億円稼いだ時期があり、それを単に12カ月で掛けただけだ。最近ではFASH社から毎月5000万円、年間6億の役員報酬と、本の印税などを収益として計上しているYTH社から年間約1億円を受け取っているというが、12億円には満たない。ここにも誇張があった。
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■テレビ局の言う通りに演じてきただけ
 メディアが取り上げてきた富豪生活や大胆なビジネスも、実は単なる演出か、言いっ放しで終わっているものが多い。
 1億5000万円で購入すると言っていたヘリコプターは実際には買っていない。テレビでは1億円以上の現金を持ち歩いていると紹介されてきたが、実は取材のたびに銀行から引き出していた。 
「私は今までこちらから各局に、テレビ出演のオファーをしたことはありません。出演した際は、すでに台本が用意されていて、『ここで不敵な笑みを浮かべてください』とか局側のストーリー通りにしなければいけない。最近はそうした演出を控えようと思っていましたが、双葉社の『NEO HILLS Japan』(与沢氏責任編集の雑誌)の撮影では、すでに出版社側で札束が用意されていた」(与沢氏)
 もっとも、与沢氏が相応のカネを稼いできたのは事実だ。なぜ必要以上に「像」を膨らませるのか。それはセレブ生活を極端に演出し続けることこそ、与沢氏のビジネスの生命線であり続けてきたからだろう。

文/村上力  写真/中筋純

(全文は『月刊宝島』2014年2月号に掲載)