■たったワンコインでフォアグラ!?
「世界三大珍味」の一つに数えられるフォアグラ。高級食材とのイメージが強いが、13年の夏以降、高級レストランだけでなく、ファミリーレストランや居酒屋でも「激安価格」でメニュー提供が相次いでいる。
 ファミリーレストラン「ジョナサン」では、13年8月末から10月中旬にかけ、「フレンチフォアグラ&ハンバーグ」や「フレンチフォアグラ&ポテト」などを提供。それぞれ税込1039円、499円というリーズナブルな価格だった。よほど好評だったのか、12月には「フォアグラ&フィレステーキ トリュフソース」「フォアグラ&ハンバーグ トリュフソース」を提供している。「ココス」でも、年末年始に「フォアグラと牛フィレ肉のステーキ(バルサミコソース)」を復活販売した。
 さらに、「白木屋」「魚民」などの居酒屋チェーンを経営するモンテローザでも、13年6月から9月にかけ全国の店舗で「牛フィレステーキとフォアグラのロッシーニ トリュフソースがけ」を税込1029円で提供し、話題を集めた。またコンビニでは、フォアグラペーストを用いたポテトチップスまで販売されている。
 フォアグラには、アヒルのフォアグラとガチョウのフォアグラの2種類がある。財務省の貿易統計によると、輸入元はフランスとハンガリーの2カ国のみで、アヒルはフランス産が、ガチョウはハンガリー産が大半を占める。12年度の輸入量はアヒルのフォアグラが121.5t、ガチョウのフォアグラが75.9t。12年度前期と13年度前期の輸入量を比較すると、アヒルの輸入量は14%増(ガチョウはほぼ横ばい)となっている。

フォアグラ1<写真> “強制給餌動画”がネットで波紋を呼ぶも、大半の日本人は「問題なし」?





■「残酷な強制給餌は禁止」が時代の潮流
 一方、ネットでは「フォアグラの作り方」を記録した動画が大きな波紋を呼んでいる。アヒルやガチョウに餌を強制的に過剰摂取させ、人工的に肝臓を肥大化させ脂肪肝としたものがフォアグラだ。その生産過程を目の当たりにし、「残酷だ」とショックを受けるネットユーザーも少なくない。
 現に海外では、動物愛護の観点から「フォアグラ禁止」の動きが相次いでいる。米カリフォルニア州では12年7月以降、フォアグラの生産・販売・提供を法律で禁止。フランスではこれに対抗してカリフォルニアワインの供給停止を呼びかける動きが起こるなど、大騒動となった。また、08年には英国のチャールズ皇太子が自邸でのフォアグラ使用を禁止。13年10月には、英国のAmazonがフォアグラの販売を中止するなど、世界的な広がりを見せている。ドイツ、イタリア等、強制給餌を禁じる国も多い。
 流通業界に詳しいジャーナリストは、こう話す。
「売り場を失いつつあるフォアグラですが、その受け皿として期待されているのはアジアです。中国で12年に予定されていた大規模なフォアグラ農場の設置計画は、愛護団体等の反対活動を受け中止となりましたが、比較的抵抗感の少ない日本や中国に売り込みをかける動きは今後も続くと思います」
 なぜか日本でばかり広がるフォアグラ食。生産の実態が、あまり知られていないからなのだろうか。

フォアグラ2<写真>各国の動物愛護団体が、フォアグラの生産・販売禁止を呼びかけている。フランスに本拠を置き、日本語サイトを用意する団体も。また、植物性の「フォアグラもどき」を勧める団体もある。