半グレ集団が傍聴席から怒声浴びせる「六本木クラブ襲撃事件」の異様な法廷で、ベストセラー『いびつな絆 関東連合の真実』の著者・工藤明男が明かした真相
■傍聴席のガラが悪く裁判員が怖がる
<写真:11月13日に開かれた傷害致死等の裁判員裁判に証人出廷する直前の工藤明男氏>
この11月13日、私は「六本木クラブ襲撃事件」の被告人AとBの裁判員裁判(傷害致死罪、凶器準備集合罪等)で、証人として東京地裁に出廷した。AとBとは、拙著『いびつな絆 関東連合の真実』でも触れた、私が支援する2人のことだ。
いまだ海外逃亡中の見立真一君(殺人犯として国際指名手配中)が、「先に出頭した裏切り者のAとBの2人に罪をなすりつける」という方針を崩さず、事件で逮捕された後輩たちに「AとBも含めた先輩たち3人に命令されてやった」と供述させている。
私に証言を依頼してきたのは、A・Bの弁護団と検察側双方で、関東連合内部の人間関係や見立君と被告の関係を証言してほしいというものだった。
11月11日から14日まで続いた両被告の裁判は、初日から異様な雰囲気だったと聞く。目立ったのは33席の傍聴席に対して、それを上回る数を動員した見立派のメンバーだった。傍聴は抽選となり、開廷前から裁判所玄関前には不良風の若者が列をなした。
「傍聴席のガラが悪くて裁判員も怖がってしまい2人の印象が悪くなる。どうにかならないか」
弁護士から相談されたが、私や2人を敵対視している相手に「来ないでくれ」と言ったところで聞くわけがない。彼らは見立君の意を汲(く)んで、見立君の事件関与を供述した2人を、威圧するのが目的だったはずだ。
「僕の証人出廷の際はヤジを飛ばされるはずです」
すでに私の証人出廷の情報は、関東連合関係者の間で広まっていた。
「そうなったら退廷を命じられるから大丈夫です」
弁護士は私を安心させるように言ってくれた。
そもそも私が拙著を書いたのは、事実に即して六本木の事件を裁いてほしいという願いがあったからだ。事件を首謀した見立君はいち早く海外に逃亡、犯行に誘われた同級生のAとBや後輩の百井茂被告などに罪を着せようと画策した。見立君の意に反して、「事実」を供述すると決めて出頭したAとB、彼らを支持した私は関東連合の裏切り者とされ「工藤を殺(や)れ」と、いまも命を狙われ続けている。
最良の形は、この事件の裁判で拙著が証拠に採用されることだった。
「弁護団会議で弁護団の方針に採用させてもらうことになりました」
私の願い通り、拙著はA、B両被告の弁護方針に採用された。そして、その内容に沿って証言台に立ってほしいという依頼があったのだ。本を出版して最も達成感を感じた瞬間だった。
■裁判所前に若い不良集団が
<写真:事件後、海外にいち早く逃亡し国際指名手配を受けた見立容疑者>
11月12日の裁判は、解剖医の証人尋問だけで、関東連合関係者と思われる者は法廷にいなかったようだ。
翌13日、証人出廷当日の朝9時、傍聴券を手に入れようと裁判所の抽選の列に並んでいた担当編集者からの電話で目覚めた。
「初日よりも大勢の関係者らしき者が傍聴券の抽選に並んでますね」
その日は、裁判所の前で『月刊宝島』の撮影の予定が入っていた。証人出廷にあたって、その様子や感想を手記にまとめてほしいという依頼があり、その記事に関係する撮影だった。雑誌の発売がA、B両被告の判決後だったので、引き受けることに決めていた。
出廷当日の午前中は、共犯者である百井被告の証人尋問が行なわれていた。前日までの法廷内の様子を聞く限り、関東連合関係者は、事件当事者が出廷する裁判では必ず傍聴席を埋めている。その日、百井被告が出廷していれば、見立派の主要メンバー全員が裁判所の中にいるはずだ。撮影は桃井被告の出廷中に決行されることになった。出廷前に彼らとはち合わせして、小競り合いや悶着を起こしたりすれば、私の証言者としての印象まで悪くなる。それだけは避けたい。
11日は傍聴にあぶれた若い連中が、喫煙を禁じられた裁判所前でタバコをふかして群れていたという。撮影には時間をかけられない。編集者の事前の段取りで、手際よく2、3分で終わった。
A、B両被告の弁護士とは裁判所の中で落ち合う約束だったが、午前中の公判に出席している弁護士をロビーで待っていては、彼らとはち合わせする可能性もある。弁護士の配慮で、私は司法協会の会議室で待機することになっていた。待っていると、午前中の法廷を終えた弁護団が現れた。
「百井被告に対する検察の証人尋問では、今回証言しようと思った気持を聞かれると、『本当は先輩(AとBのこと)については言いたくなかったけど、2人の支援者がマスコミなどを使って見立君にすべての罪を被(かぶ)せようとしている。その方針に納得がいかない。きちんと話そうと思った』などと答えていた。検察官は逆に『罪を誰かに被せようということで話をしてませんか?』と、念を押すかのように質問していた」
検察官は2人に対して厳しい姿勢で臨んでいるようだった。検察官は両被告に対して、見立君と同世代だという理由で重い責任を問おうとしているのだ。この点は、罪を2人になすりつけたい見立君の方針と部分的であれ合致する。私には少しでも検察官の見立てを覆すことが期待されていた。
写真/中筋純
(記事の全文は『月刊宝島』2014年1月号に掲載)
■傍聴席のガラが悪く裁判員が怖がる
<写真:11月13日に開かれた傷害致死等の裁判員裁判に証人出廷する直前の工藤明男氏>
この11月13日、私は「六本木クラブ襲撃事件」の被告人AとBの裁判員裁判(傷害致死罪、凶器準備集合罪等)で、証人として東京地裁に出廷した。AとBとは、拙著『いびつな絆 関東連合の真実』でも触れた、私が支援する2人のことだ。
いまだ海外逃亡中の見立真一君(殺人犯として国際指名手配中)が、「先に出頭した裏切り者のAとBの2人に罪をなすりつける」という方針を崩さず、事件で逮捕された後輩たちに「AとBも含めた先輩たち3人に命令されてやった」と供述させている。
私に証言を依頼してきたのは、A・Bの弁護団と検察側双方で、関東連合内部の人間関係や見立君と被告の関係を証言してほしいというものだった。
11月11日から14日まで続いた両被告の裁判は、初日から異様な雰囲気だったと聞く。目立ったのは33席の傍聴席に対して、それを上回る数を動員した見立派のメンバーだった。傍聴は抽選となり、開廷前から裁判所玄関前には不良風の若者が列をなした。
「傍聴席のガラが悪くて裁判員も怖がってしまい2人の印象が悪くなる。どうにかならないか」
弁護士から相談されたが、私や2人を敵対視している相手に「来ないでくれ」と言ったところで聞くわけがない。彼らは見立君の意を汲(く)んで、見立君の事件関与を供述した2人を、威圧するのが目的だったはずだ。
「僕の証人出廷の際はヤジを飛ばされるはずです」
すでに私の証人出廷の情報は、関東連合関係者の間で広まっていた。
「そうなったら退廷を命じられるから大丈夫です」
弁護士は私を安心させるように言ってくれた。
そもそも私が拙著を書いたのは、事実に即して六本木の事件を裁いてほしいという願いがあったからだ。事件を首謀した見立君はいち早く海外に逃亡、犯行に誘われた同級生のAとBや後輩の百井茂被告などに罪を着せようと画策した。見立君の意に反して、「事実」を供述すると決めて出頭したAとB、彼らを支持した私は関東連合の裏切り者とされ「工藤を殺(や)れ」と、いまも命を狙われ続けている。
最良の形は、この事件の裁判で拙著が証拠に採用されることだった。
「弁護団会議で弁護団の方針に採用させてもらうことになりました」
私の願い通り、拙著はA、B両被告の弁護方針に採用された。そして、その内容に沿って証言台に立ってほしいという依頼があったのだ。本を出版して最も達成感を感じた瞬間だった。
■裁判所前に若い不良集団が
<写真:事件後、海外にいち早く逃亡し国際指名手配を受けた見立容疑者>
11月12日の裁判は、解剖医の証人尋問だけで、関東連合関係者と思われる者は法廷にいなかったようだ。
翌13日、証人出廷当日の朝9時、傍聴券を手に入れようと裁判所の抽選の列に並んでいた担当編集者からの電話で目覚めた。
「初日よりも大勢の関係者らしき者が傍聴券の抽選に並んでますね」
その日は、裁判所の前で『月刊宝島』の撮影の予定が入っていた。証人出廷にあたって、その様子や感想を手記にまとめてほしいという依頼があり、その記事に関係する撮影だった。雑誌の発売がA、B両被告の判決後だったので、引き受けることに決めていた。
出廷当日の午前中は、共犯者である百井被告の証人尋問が行なわれていた。前日までの法廷内の様子を聞く限り、関東連合関係者は、事件当事者が出廷する裁判では必ず傍聴席を埋めている。その日、百井被告が出廷していれば、見立派の主要メンバー全員が裁判所の中にいるはずだ。撮影は桃井被告の出廷中に決行されることになった。出廷前に彼らとはち合わせして、小競り合いや悶着を起こしたりすれば、私の証言者としての印象まで悪くなる。それだけは避けたい。
11日は傍聴にあぶれた若い連中が、喫煙を禁じられた裁判所前でタバコをふかして群れていたという。撮影には時間をかけられない。編集者の事前の段取りで、手際よく2、3分で終わった。
A、B両被告の弁護士とは裁判所の中で落ち合う約束だったが、午前中の公判に出席している弁護士をロビーで待っていては、彼らとはち合わせする可能性もある。弁護士の配慮で、私は司法協会の会議室で待機することになっていた。待っていると、午前中の法廷を終えた弁護団が現れた。
「百井被告に対する検察の証人尋問では、今回証言しようと思った気持を聞かれると、『本当は先輩(AとBのこと)については言いたくなかったけど、2人の支援者がマスコミなどを使って見立君にすべての罪を被(かぶ)せようとしている。その方針に納得がいかない。きちんと話そうと思った』などと答えていた。検察官は逆に『罪を誰かに被せようということで話をしてませんか?』と、念を押すかのように質問していた」
検察官は2人に対して厳しい姿勢で臨んでいるようだった。検察官は両被告に対して、見立君と同世代だという理由で重い責任を問おうとしているのだ。この点は、罪を2人になすりつけたい見立君の方針と部分的であれ合致する。私には少しでも検察官の見立てを覆すことが期待されていた。
写真/中筋純
(記事の全文は『月刊宝島』2014年1月号に掲載)