今年も4月段階で被害総額50億円超と、とてつもない規模で荒れ狂う振り込め詐欺だが、
その犯行を縁の下で支える「道具屋」の一人に、その実態を聞いた。道具屋とは詐欺グループ
に電話をかけるためのターゲット名簿や、トバシ携帯や逆転送などの不正な通信環境を
提供する協力業者のこと。道具屋のTが言う。

 「振り込め詐欺で的になるのは『独居・高齢・有資産』。ピンポイントで電話するために、
電話帳を使ったローラー作戦みたいな真似はやらず、取れるところから効率よく取る。
振り込め詐欺の手口は10年前と大して変わらないけど、道具屋は大きく進化しています」

 T曰く、道具屋には大きく分けて「収集」「下見」「パッケージ」の業務があるという。
「ここ2年ほどは、まず収集班が金に困って闇金から金をつまんでるホームヘルパーに
『認知症気味で金を持ってる高齢者の情報』をピンポイントで引いたり(入手したり)、
浄水器とかソーラーパネルとか他の訪販のヤラレ名簿(悪徳訪販の被害にすでに遭った
顧客リスト)を引いたりして、騙されやすいターゲットのベース名簿を作成。高齢者向けの
健康食品の購買者名簿とかは、かなり数が集まりましたね。

 そこに下見班が国勢調査を装った電話や訪問調査をかける手口がブームでした。これで、
資産状況や家族との連絡頻度などを聞き出す。この時点で、もう話しただけでこいつ
騙せないだろうみたいな相手は削除して、確実に一発向き(振り込め詐欺)の案件、
投資詐欺向きの案件などとパッケージ(分類)して、詐欺屋に提供するんです」

 何も手を加えない名簿に比べ、相手の属性から家族の情報まで網羅した名簿は、倍では
効かない大きな収益を詐欺グループにもたらす。だが道具屋の手口はまさに日進月歩。
2013年に入って、Tの関係する道具屋は収集班と下見班が合体した新たな手口で
“プレミアムな名簿”を作成している。

 「金を持ってる高齢者が興味をもっているのは、自宅のバリアフリー化とか、介護つき
高級老人ホームとか住宅型サービス、あと相続についてです。バリアフリーなんかは
リフォーム業者の見積書、相続はそれ専門の弁護士なんかから相談者名簿が流出してますが、
注目したのは高級老人ホームに入所を考えている高齢者です。

 そこでまず、独居高齢者ベースの名簿に、『介護施設入所コンサルタント』を名乗って
接触する部隊を作った。これなら国勢調査を騙るのと同じように、今の居住形態や
資産状況から息子の勤務先や部署・給料まで、洗いざらい調査できますからね」

■高齢者と接触して資産状況と性格を調査
 ターゲットの高齢者と接触する調査スタッフは、きちんと施設紹介業者としての企業
パンフレットも持参している。Tが見せてくれたパンフレットは、「提携施設事業者」の
設備紹介や魅力ポイントの紹介、体験入所の提案プランまで記載された本格的なものだった。

 「本格的で当たり前ですね。フォーマットは実在する紹介業者のホームページから
丸パクリですから。それをベースに、ターゲットになる相手の居住地域に合わせて
紹介する介護事業者の情報を差し替えているんです。トークにしても『介護事業者側は
入所者向けの資料送付は通常しない』とか、『そういうクローズな状態だから僕ら
紹介業者が要るんです』みたいなことを騙りますが、これも実在する紹介業者の丸パクリ」

 ターゲットとなった高齢者は、まさかこれが振り込め詐欺の情報収集とは思わないだろうし、
実際介護事業者を紹介するわけでもない以上、このネタ集めそのものが詐欺のような
ものだが、Tは「偽った社名で営業活動するだけでは詐欺罪にはならない」と笑う。

 「手間かけただけの見返りは道具屋にも十分あります。大体最近は高齢者が多く住む
郊外のニュータウンとかエリアで絞って100人規模の名簿を作って売りますが、確実に
数千万は上がってるみたいですからね」

 巧妙化・専門化する道具屋の裏事情。この段階で食い止めなければ、今後も詐偽被害は
拡大する一方だ。

詐欺
<名簿作りに携わる道具屋は、警察が名称を「母さん助けて詐欺」としたり「この通話は録音されている」と事前アナウンスを入れる電話機等の様々な対策を「全部無駄」と嘲笑する>