証拠捏造、個人情報漏洩、虚偽報告、セクハラ・・・、警察官の不祥事が依然として
連日のように起きている。さらには、その巨大な力が、いまや個人に容赦なく牙をむいてくる。
市民には厳しく身内には甘い−、そんな警察の無軌道ぶりを、警察ジャーナリスト・
寺澤有(てらさわ・ゆう)が斬る!

★第1位!富山殺人放火事件の元警部補を処分保留
2010年4月に富山県警の警部補が会社役員夫婦を殺害し、自宅に放火したとされる事件で、
富山地検は加野猛被告(54)を処分保留と発表。加野被告は、別件(守秘義務違反の罪)で
逮捕、勾留されている。被害者遺族は手記で無念の思いを地元紙に発表。

➡身内に甘すぎるという警察の腐った体質の好例。現役警察官の殺人放火なんて前代未聞。
本部長以下、県警幹部全員が厳しい処分を受けて当然だが、それだけは避けたいという
バイアスがこの結果を招いた。初動捜査ができていないから今後の進展は望めない。

★第2位!大阪府警の警察官らが虚偽調書作成
昨年12月に大阪府警堺署の留置場で起きた公務執行妨害事件(勾留中の男が
警察官を殴り現行犯逮捕)で、当初、警察官らは自分たちの正当性を強調する調書を捏造。
その後、調書の矛盾に気づいた別の警察官が再び調書を捏造した。

➡調書や捜査報告書の捏造は、全国の警察で日常茶飯事。表沙汰になった背景に
警察内部の足の引っ張り合いなどがあったのではないか。虚偽調書やそれに基づく偽証を
検察官や裁判官が見破れないのも問題。

★第3位!「職質」は違法! 都に賠償命令&無罪判決
職務質問で、十徳ナイフ所持により送検され、起訴猶予処分になった男性が起こした
損害賠償裁判で、東京地裁は職務質問の違法性を認定。また警察官が女性を職務質問して
麻薬を見つけたが、令状が必要な強制性があったとして、広島地裁が無罪判決。

➡任意と言いながらほぼ強制で前々から問題視されていた「職務質問」だが、前者は民事、
後者は刑事で、両面から違法性が認められたのは大きい。警察では職質にもノルマを
課していることが背景にあり、点数稼ぎに防犯と関係のない職質が行われている。

★第4位!香川県警警部補がOBに暴力団前科などを漏洩
香川県警の50代の男性警部補が、再就職した元上司の求めに応じて暴力団関係者の
前科などを伝えていたことが判明。

➡昨年も長野県警で警察OBの要請にこたえて個人情報を漏えいした事件が発覚したが、
これも全国の警察で行われていることだ。なぜ企業が警察OBの天下りを受け入れるのか、
考えれば誰でもわかる。

★第5位!埼玉県警、60歳の元警察署長が官舎でキス
越谷署長だった警視が女性と夜桜見物に行った際、抱きしめたり、署長官舎でキス。
知人の情報提供で発覚した。

➡警視は依願退職したが、巨額の退職金を受け取る。強制わいせつ罪なのだから逮捕して
懲戒免職にするのが当然。本当に身内に甘すぎる!

■警察を取り締まる警察をつくらない限りダメ
 「まったくなくなる気配がない警察不祥事や、警察に関する報道から、特に見逃せないものを
取りあげてほしい」という編集部からの依頼を受けてあげたのが上のラインナップだ。

 1位の「現役警察官による殺人放火事件で処分保留」こそ、めったにはないダントツの
不祥事なのだが、それでさえ県警の責任者である本部長が辞任することもないのだから、
警察はどこまで身内に甘い組織なのか、ということに尽きる。

 3位の「職質」の違法性が認められたのは大きい。これまでに断れない「職質」で犯罪者扱い
されてきた人も多いから、これで少しでも不毛な「職質」が減れば非常にいいのだが。

 ただし、2位の虚偽の調書作成、4位の個人情報漏洩、5位のセクハラ事件などは、
新しい話ではなく、これまでにもよく起きていることだ。大事だから繰り返すが、どれもこれも
全国の警察で、当たり前のように発生しているということを忘れてはならない。

 ピックアップできなかったが、上記以外にも、交通違反の反則切符を捏造したり、
ストーカー事件で被害者から相談されていたのに対応しなかったばかりか、対応したと
虚偽の説明をしたり、女子トイレや女子浴場に侵入したとか、警察手帳を見せて女子高生を
クルマで連れ去ろうとしたとか、問題行為は山のように発覚している。

 なぜ警察の不祥事がなくならないのかとよくいわれるが、自分を処分するとなれば誰だって
甘くなるに決まっている。では解決方法がないのかといえば、実は簡単だ。不祥事を見逃して
しまった場合は、見逃さなかった場合より、処分を重くすればいいのである。

 例えば富山の現役警察官の殺人事件も、犯行当時見逃してしまった本部長は今からでも
懲戒免職(=退職金なし)、にする。そうすると、犯行当時見逃さなければ、
依願退職(=退職金あり)で済んだだろうから、不祥事は減る方向にいく。

寺澤 有(てらさわ・ゆう)
1967年2月9日、東京生まれ。大学在学中の1989年からジャーナリストとして、
警察や検察、大企業などの聖域となりがちな組織の腐敗を追及。
近著に『本当にワルイのは警察』(宝島SUGOI文庫)