「食品添加物は体に悪い」という「常識」を抱いていないか。「無添加」の表示に、
意味もわからず安心していないだろうか。そんな思い込みを利用したビジネスも増えている。
「食品添加物を怖がるほうが高リスク」と説く専門家に話を聞いた。

 食品添加物とは、食品の加工や保存の目的で使用されるものを指す。昔から、身の回りに
あるものが利用されてきた。たとえば、豆腐を作る場合に、固めるために入れるにがりや、
コンニャクを作る際には消石灰を使ったりする。これらは1000年以上も前に、中国から
伝えられた手法だといわれている。

 食品添加物は大きく4種類に分けられている(表)。厚生労働大臣が指定した
指定添加物(有機化学的合成化合物)と、天然由来である既存添加物、天然香料などである。
まずは、その安全性がよく取り沙汰される指定添加物について見ていこう。

■食品添加物に課せられた厳しい規制
 大妻女子大学教授・堀江正一氏は、食品添加物についての正しい理解を呼びかけている一人である。
「現在、厚生労働大臣により指定されている添加物は、そのほとんどが化学的に合成された
ものですが、安全性と有用性を確認して指定されており、心配すべきものではありません。
もちろん、基準量を超えての摂取は望ましくはありません」

 堀江氏によると、全ての食品添加物には、原則的に表示の義務がある。また添加物は
安全性が確認され、人体に影響がない量での使用という配慮がなされているという。

 「まず、『閾値(いきち)(無毒性量)』について説明しましょう。化学物質とは、閾値を超えない限り、
実験動物に有害な影響を及ぼしません。たとえば食塩のように、常識的な量では無害の食品も、
一気に150gほど食べると死に至ります。

 一方、ダイオキシンのように毒性が極めて強いものでも、その量をどんどん減らしていくと
生体に影響が出なくなります。化学物質の有害性は摂取する量に依存し、影響が出なくなる
閾値を知ることが大切です。閾値は物質ごとにそれぞれ異なりますが、1日に食べてもよい量が、
閾値より定められています。

 日本の基準では、通常閾値の量、すなわち無毒性量に100分の1という『安全係数』を掛け算して、
添加物の一日許容摂取量(ADI)というものを定めています。100分の1という係数の根拠は、
実験動物と人間のあいだの種差として10分の1、さらに人間の中でも性差や年齢差などの
個人差を考慮して10分の1を掛け合わせるというルールです。より慎重に対応しているということです」

 指定添加物=がんの原因と見る風潮が一部にある。
「指定添加物の成分の多くは、体内に蓄積しにくい性質のものが使われていますので、
PCB(ポリ塩化ビフェニル)のように蓄積による心配もないと考えます」

 最近は「無添加=安全」というイメージをうたう企業も増えている。堀江氏は
「無添加の基準があいまいであることも多く、消費者を迷わせ、ミスリードする危険性がある」
と懸念している。

■自然由来の添加物こそ合成添加物より危険
 「無添加」を表示する商品や店の中には、指定添加物は入っていなくても、天然添加物
(表の◆銑ぁ砲六箸錣譴討い襪海箸ある。鈴鹿医療科学大学教授・長村洋一氏はこう指摘する。

 「とある外食チェーンでは指定添加物を排除していることを売りにしています。しかし、
天然添加物は使用している。『天然素材由来の既存添加物=安全』という論理でしょう。
ですが専門家から言わせてもらうと、天然のものにもリスクはあり、『確認されていないから
わからないだけ』というものがかなりあります。

 たとえば、クチナシ色素は天然色素として有名ですが、アメリカでは『変異原性』(DNA合成に
影響を与えたり、構造を変えること)が認められて使用禁止になっています。日本では、発がん性が
認められないことと、クチナシ色素は日本の伝統的な食文化に根差したものであることなどから、
許可されています」

 長村氏によると、一方の指定添加物はここ38年間、一度でも問題を起こして禁止されたものは、
一つもないと言う。

■無添加のリスクは食中毒と発がん!?
 長村氏は、行きすぎた「無添加至上主義」について警鐘を鳴らしている。
「世の中のものが無添加の商品ばかりになったら、流通社会が危なくなります。どんな食品でも
時間が経(た)てば化学的に変化します。無添加のために腐敗したり、見えないカビが生えたり
した食品を食べて、食中毒になったり、発がんしてしまうほうがよほど恐ろしい話です。“自然の
状態である”ということは意外に“怖い”ことであるのです」

 とはいえ、長村氏は指定添加物の行き過(す)ぎた使用を推進しているわけではない。
「添加物は、有機合成品であれ、天然であれ、その規定量が守られている限り、豊かで安全な
食生活をもたらすことに役立っているのです」

 前出の堀江氏も、無添加のリスクに目を向けてほしいと訴えている。
「添加物に対する偏った情報を流したがるマスコミにも責任の一端があります。有害性が
見いだされたことに対しては、大きく取り上げる。その報道は消費者にとって極めて重要です。
しかし、安全性が確認されても取り上げない。繰り返しになりますが、無添加のものは腐りやすい。
微生物が増殖しやすいので、食中毒の原因にもなります。添加物で死に至ることはありせんが、
食中毒は死に至る可能性があります」

取材・文/山守麻衣

無添加
<表:食品添加物の種類>