急激な円安によるガソリンや灯油価格の値上がりが始まっている。しかしそれは、これから訪れる
だろう“恐怖の値上げラッシュ”への前触れに過ぎない。カギは「価格転嫁」のシステムにある。

■円安による値上がりがじわじわと始まった
 アベノミクスにより、長く続いたデフレ脱却の兆しがみえつつある日本。1ドル70円台で
推移していたドル円相場は、いまや95円(3月13日現在)と100円に届く勢いだ。しかし、
喜ばしいことばかりではない。昨年末から続く円安の流れを受けて、輸入業者は大打撃を
受けているのである。もちろんその余波は一般家庭にもじりじりと襲いかかっている。

 たとえば、ガソリン・灯油といったエネルギー価格。円安で輸入価格が上昇し、昨年11月後半
時点で145円だった1リットル当たりのレギュラーガソリン価格は155円にまで上昇している。
同じく灯油も18リットル缶当たり、200円以上高騰。エネルギー価格の上昇は、民間企業の
輸送コスト増につながり、最終的に商品価格の引き上げに拍車を掛ける要因ともなる。

 また、その大半を輸入に頼るパソコン機器でも価格上昇が始まっている。もちろん外車や
海外ブランド品も次々と値上げを発表。一見すると、家計への影響はそれほど多くないように
みえるが、じつは生活必需品の本格的な価格転嫁はすぐそこまで迫ってきている。

■相次いで値上げが始まる“恐怖の4月”
 そもそも円安が販売価格に表れるのは品目によってタイムラグがある。ガソリン価格の
値上がりが早いのは、為替変動が1カ月後に反映される仕組みができ上がっているためだ。
同じエネルギーでも、電気・ガス代は3カ月間の平均輸入燃料価格が3カ月後に自動的に
価格に転嫁される「燃料費調整制度」があるため、価格転嫁のタイミングは異なる。
それに基づき、電力・ガス各社は、相次いで4月からの値上げを発表している。

 なかでも円安でもっとも家庭を悩ませることになるのが小麦価格の上昇だろう。現在、
輸入小麦は政府が一括輸入し、民間へ売り渡し、4月と10月の年2回、価格改定をしているが
4月には約9・7%の価格引き上げが決まっている。製粉会社の仕入れ価格が上がれば、
価格への転嫁も行われ、小麦を原料とするパン、麺などの値上がりに直結する。2011年に
パンの消費額がコメを追い抜き、「コメ離れ」が進む日本人にはつらい状況となるだろう。
円安による負の側面はこれだけではない。輸入に頼る食品や家具、牛肉・豚肉、ワインなど、
その影響は非常に広い範囲に及んでいくのだ。

 なかには「景気が良くなって給料が上がればなにも問題ない」と思う人も多いだろうが、
20年ぶりの景気浮揚にとまどい、賃上げに慎重な姿勢をみせる日本企業がそう簡単に
重い腰を上げるとは考えにくい。一般に、早ければ夏のボーナスがアップするところもあると
いわれているが、それでは4月から始まる値上げラッシュには間に合わない。今後も一層
加速するであろう円安の流れ。となれば生活必需品のさらなる値上がりは確実。
国民はしばらく我慢を強いられそうだ。

取材・文/オフィス三銃士

アベノミクス





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