「30・1」−これが何の数字かわかるだろうか?答えは第一子を産む母親の平均年齢だ。
厚生労働省が昨年6月に発表した2011年の人口動態統計調査によると、最初の子どもを持つ
女性の平均年齢が初めて30歳を超えた。加えて、芸能人の出産が増えていることもあってか、
雑誌やテレビなど多くのメディアで「高齢出産」が取り上げられるようになった。著名人の妊娠・出産
エピソードや幸せそうな子育て話が並べば、高齢出産でも“大丈夫なんだ”と考えがちになる。
だがその一方で、わかっているようで意外と知られない妊娠関連の事実も多い。
ポイントをQ&A形式で解説する。

Q:卵子は老化するってホント?
A:本当。そもそも、卵子は生まれる前、母親のおなかにいるとき(胎生20週=妊娠22週)に一生分が
つくられる。その数は約700万個。この約700万個をピークに、卵子の数はどんどん減っていき、
出生時には約200万個、初潮を迎える思春期には約20万〜30万個まで減少する。初潮以降は
大体月1回のペースで排卵され、同時に多くの卵子が排卵されることなく消滅してしまう。毎月排卵する
ので、その都度新しい卵子がつくられているように錯覚してしまいがちだが、母親のおなかにいるときに
既に卵子は誕生しているので、自分の年齢よりも1歳プラスした年齢が卵子の年齢だ。卵子も一緒に
年齢を重ねていく、つまり老化しているのだ。

Q:閉経すると子どもは産めない?
A:厳密にはそうともいえない。閉経とは加齢に伴い卵巣の機能が低下し生理の周期が不規則となり、
出血の量が減少し生理が1年以上ない場合を指す。一般的には50歳前後で閉経する人が多いが、
40歳以前に閉経を迎える「早発閉経」、55歳以上の「遅発閉経」もある。実際には閉経しても、第三者
から健康な卵子を提供してもらうことで子どもを産むことはできる。だが、早産や多量出血など、
分娩時を含めて何らかの異常が起こるリスクは大きいし、そもそも日本では法律的に認められていない。
最近では、海外で卵子提供を受ける人が増えているが、費用は数百万円にも上るケースもある。

Q:年齢が上がると、ダウン症の子が生まれる確率は上がる?
A:本当。ダウン症候群とは、体細胞の21番目の染色体が通常より1本多いことで発症する先天性の
疾患でダウン症とも呼ばれる。さまざまな染色体異常の病気の中でも、最も多い病気の一つであること
から、高齢出産のリスクとして大きく取り上げられることが多い。根本的な治療薬や治療方法はない。
母親の出産年齢が高いほど、子どもがダウン症を発症する頻度は増加することは、下のデータを見ると
一目瞭然だ。ダウン症の子どもが産まれるリスクがどれだけ上がるかで考えると、20歳と30歳では
約2倍となっているのに対し、高齢出産といわれ始める35歳前後と40歳では約5倍になってしまう。
年齢が上がるとともに、そのリスクの上がり方も大きな幅を見せるのだ。

出産



<出典:Hook EB>

Q:男性不妊は増えている?
A:本当。不妊は女性だけの問題ではない。WHOの調査によれば、男性側にだけ、あるいは男性も
女性も原因があるケースは49%もあるという。なかでも、精子の製造過程に問題があり、精子の数が
少ないなどの異常が出る精子形成障害は男性不妊の約9割を占める。この場合、薬物療法などが
行われる。子どもができない場合は、女性だけではなく男性も不妊検査を受ける必要が出てきていると
いえる。

取材・文/金野和子、オフィス三銃士