もはや日常茶飯事となった警察の不祥事や犯罪。国民の生活と安全を守るはずの警察がなぜ?
などといまさら思うなかれ。元兵庫県警刑事の飛松五男氏と警察ジャーナリストの寺澤有氏、
日本でもっとも警察を知る2人の男が、「警察こそが最大の犯罪者集団」であることを明かす。

【懲戒処分者データが明かす警察の隠蔽(いんぺ い)体質とは?】
 全国47都道府県の警察評価をランキングにしてまとめた。たとえば懲戒処分率ランキング。これを
見ると処分率の高い県警は奈良になる。もちろんひとつの目安にはなる。しかしそこに「数字の
まやかし、統計のミスリードがあることを肝に銘じておかなければいけない」と元兵庫県警刑事の
飛松五男氏は強調する。客観的にみえる“数字が真実とは限らない”からだ。警察発表の数字には、
常に発表する側の警察による隠された意図が色濃く反映される。具体的に見ていこう。

■統計数字の裏を読め警察のごまかしがわかる
 不祥事の目安となる懲戒処分率ランキングでワースト1の奈良県警では12件の処分が下されて
いるが、もっとも重い免職はゼロだ。よもやこの県の警察官はちょっとした間違いや悪事には
手を染めても、クビになるほどの犯罪をする度胸はなかったと考える人はいないだろう。

 「処分がないのには、処分できない理由があるのです。ありがちなのは2つ。処分を軽くしてもらう
ために、上司に女や金を握らせるか、『手心を加えないとあんたの悪事もバラす』と圧力を加えている
かのどちらかです」(飛松氏)

 そういわれて改めてランキングをみれば、たしかに不自然な数字が目につく。懲戒処分数は
少なくないのに免職はない、あるいは処分自体がないなどという警察があるのだ。「ある地域の
警察官だけが、揃いも揃って無垢などということがあると思いますか」(寺澤氏)

 その意味では、ランキングでは最優秀に属する山形県警と宮崎県警は、すべてを隠蔽して一切
外部に漏らさない体制堅固な組織か、自己浄化さえ不可能な腐りきった組織と考えられなくもない。
また、奈良と並んで、処分数は多くても免職のない兵庫県警などでは、問題を起こした警察官を
退職金の出る処分で退職させ、影響力のある会社や組織に送り込む天下りが頻発しているとも
される。懲戒処分者の警察発表は、さまざまな理由でどうしてもかばいきれず、しかもお手盛りで
処分に手心を加えたものの数字と、割り切ってみるのが順当といえる。

ワースト1














注:平成24年。処分率は処分件数を警察官の人数で割って算出した
割合。数値が高いほど処分された人の割合が多いということ


【あぶり出される真実は交通事故と死亡事故の差に現れる】
■順位の違いは誤魔化しの証拠!?
 上からの指示で、現場が事故数を操作するという。
「交通事故の発生割合と死亡事故の発生割合は、普通に考えれば近いものになるはずです。
そこに差がでてくるのは数字を操作している可能性が高い」(寺澤氏)
死亡事故ランキングでワースト3の島根県警が事故発生ランキングではなんと46位。
ワースト4の岩手県警が45位などはあまりにも差がありすぎる。

 以前、交通事故死の基準が「事故発生から24時間以内の死亡」だった頃は25時間後に死亡させる
ためにさまざまな方策がとられたという。しかし、その条件がなくなった現在、保険などの外部要素が
絡む死亡事故の割合は、誤魔化しが当然の警察発表数字のなかでは信頼性の高さが目立つ。
その結果、発生数を簡単に操作できる一般の交通事故とは数値が違ってくるのだ。

 もっとも死亡事故はともかく警察にとって交通事故は適度にあってほしいものらしい。「交通安全協会
などは、警察にとって非常に美味しい天下り先。ですから交通事故はあまり多くてもいけないが、
激減してはもっと困る存在です」(飛松氏)

取材・文/オフィス三銃士+本誌特別取材班

ワースト2
注:平成24年。発生割合はそれぞれの事故数を各都道府県の人口で
割って算出。数値が高いほど事故の発生頻度が高いということ