2007年から定員15名のデイサービスを運営している経営者は言う、「介護業界は地獄である−−」
私はこれまで飲食業、不動産、建築など、いくつかの業界を経験してきたが、こんなひどい世界を
見たことがない。一般的に介護福祉の現場で働く人たちは「3Kと呼ばれる低賃金で重労働だけど、
社会的使命を背負った優しき人たちが支えている」というイメージがある。

 私も介護事業を経験するまではそのイメージ通り、福祉マインドに溢れた優しい人たちが、
高齢化社会という大きな社会問題に立ち向かっている健全な業界だと思っていたが、この認識は
大きな間違いだった。

 介助や支援全般の仕事は、頭を使うことはまったくなく他職種と比べるとおそろしく楽である。また
社会的な優しき人が支えているはずだったが、あくまで私の感覚では、介護職にまともな人は一握り
しかいない。他業種でどこにも雇ってもらえない人、ゆとり教育で育って一切の社会性がはぐくまれな
かった若者、生活保護ギリギリの貧窮者などが集まっていて、一般的なキャリアがある人だけで運営を
している施設は少数だろう。

■低賃金ではなく職員の人間性が一番の問題
 2025年にピークとなる超高齢社会に向けて、2000年4月に介護保険法が施行されてから
介護業界は急展開している。長期間継続しているデフレ社会の中で介護事業は、本当に数少ない
確実に右肩上がりで伸びていく産業であることは間違いなく、介護保険法施行以降はあらゆる業界
から新規参入が続いている。民間参入によって施設は急激に増えて雇用を生んだ。しかし、マスコミや
伝聞で知られている通りに3Kという誤報や低賃金のために人材の集まりが悪く、どこの施設も
事業所も慢性的な人材不足に悩まされている。

 高額の求人費を投入しても応募がないというのは業界の常識で、多くの施設が今日、明日を
乗り切るために全員採用という状態である。介護労働センターが発表した「介護労働実態調査」
(施設介護職)では、非正社員の離職率は07年度32・7パーセント、北海道地区では40パーセントと
いうとんでもない数値で、離職の理由は「人間関係」がダントツとなっている。

 この数字から見えるのは社会性の薄い人たちが集まって常に現場は混乱、社会の役に立ちたいと
志した普通の人たちが絶望して逃げてしまっている、という実態である。優秀な人材に逃げられ、
社会的弱者のセーフティネットとなっている。その負の連鎖は、大なり小なりどこの事業所でも
起こっている。

 一般社会に現実はなかなか聞こえてこないが、介護業界は地域の行政やケアマネジャーを中心と
した狭い範囲での風評が売り上げに直結するという構造があり、誰も本当のことを言えない事情が
ある。現実を行政や地域関係者に知られたら経営的な打撃を受けることは必至であり、「熱い、情熱、
一生懸命、やりがい、夢がある」などなど、どこの事業所も外向きには具体的なことが一切ない
ポジティブな言葉を多用して、現実に蓋をするという道を選択している。業界が拡大するほど人材の
レベル低下は悪化の一途をたどっている。

■人間関係、労使関係でトラブルを起こす
 私は07年から定員15名のデイサービスを運営している。慢性的な人手不足と無知によって、
5年間でさまざまな人たちと雇用契約を結んでしまった。自傷癖、鬱、双極性障害、境界性人格障害、
サイコパス(反社会性人格障害)に覚醒剤常用者。それ以外にも、異常性欲者、幼児性愛者、
最底辺校中退、売春経験者、中年童貞、中年処女などがいた。面接で見抜けるのは自傷癖、
境界性人格障害、最底辺校中退くらいで、基本的に短時間話した程度ではわからない。

 こういう人たちが集まって平穏無事に日常が過ぎていくはずがなく、働いていくうちにだんだんと
異常が見えてトラブルが起こる、ということが繰り返されている。成功体験がある者は皆無で、基本的に
人生はうまくいっていない。それに加えて全員低賃金で、経済的にも精神的にも貧しい。

 失敗を経験して自分が間違っていた、劣っていたと自覚があればどこかで成長し、今までの失敗を
取り戻していく可能性はあるが、彼らの99パーセントは脱落した自分自身への客観性はなく、プライドが
高く、どんな失敗をしても常に言い訳をして自己防衛をする。自覚がないので失敗をしても人や社会の
せいにするのである。

 09年くらいまでは3年間の実務経験と筆記試験が課される介護福祉士所持者は少なくともまともで
あるという判断がついたが、10年以降は介護福祉士にもやっかいな人が増えてきて、資格や
実務経験で人を判断するのは無意味となっている。

 みんな貧乏、職場はまともじゃないのでストレスばかり。そのストレスは弱者から弱者へと向かって
職員イジメ、労働紛争、窃盗、性逸脱などの形になる。利用者への虐待は法律違反として厳しく監視
されて、誰もが表面上は利用者には優しく、利用者への虐待などはレアケースだが、とにかく職場の
人間関係、労使関係でトラブルを起こす。

 職員同士での争いやイジメ、セクハラ、パワハラは日常茶飯、会社がどんな手を打ってもうんざりする
人間関係の破綻は決してなくなることはない。職場環境は劣悪である。すぐに辞めて逃げるのが普通の
感覚である。人手不足が解消されて人材の取捨選択ができない以上、どうにもならないのである。

■トラブルメーカーは覚醒剤常用者だった
 私が最も地獄を見たのは、サイコパスの介護職員にターゲットにされたことだった。心理学者
ロバートD・ヘア氏はサイコパスを「社会の捕食者であり、極端な冷酷さ、無慈悲、エゴイズム、
感情の欠如、結果至上主義が主な特徴で、良心や他人に対する思いやりに全く欠けており、罪悪感も
後悔の念もなく、社会の規範を犯し、人の期待を裏切り、自分勝手に欲しいものを取り、好きなように
振る舞う」と定義しているが、サイコパスは必ず問題を起こして転職を繰り返すので人の出入りの
激しい介護人材市場に常に流通している。

 サイコパスは面接では作話に次ぐ作話、優秀な人材を演じて、実際に表面上は優秀なので
介護事業所レベルでは必ず面接は通過する。ババを引いてしまった事業所には不運が待っている。
弊社のデイサービスに所属していたその介護職員はリーダーシップのある非常に優秀な人だった。
異変に気づいたのは入社してから4カ月後。社会経験のない介護職員たちをあらゆる虚言を駆使して
数名を自分の信奉者にさせて、実態のないセクハラ事件が捏造された。突然牙を剥き出しにして、
代表取締役の私への恐喝である。

 懲戒解雇をしてから労基署などを巻き込んでさらに事態が悪化して、挙げ句の果てにヤクザから
電話がかかってくるような異常事態となった。結局、私がその人物が覚醒剤常用者である事実を
掴んで攻撃はおさまったが、2カ月間はその対応に追われてまったく仕事ができなかった。

 私は超高齢社会に向けて、少しでも社会の役に立とうと社会起業をしたはずなのに、どうして
こんなことになるのだろうか。こんなことを言っている間にも老人は増え続けている。介護業界は
立ち止まれない。私はどう考えても介護業界に明るい未来があるとは思えない。