消費の冷え込みが厳しい地方で今、大モテの新型ファッション販売店がある。ポーラが運営する
「ムービングサロン」がそれだ。実は、大型バスを改造した移動販売店なのだが、内装はゴージャスで、
さながら「走るブティック」だ。

 「地方ではホテルや宴会場が減り、そうした会場で行う展示販売が難しくなっていました。そこで、
当社の鈴木郷史社長の発案で、ムービングサロンを2011年10月にスタートしました。バスなら
どこにでも出向けるし、場所代もかからないからです。また、地方では百貨店などの撤退が相次ぎ、
ファッションの買い物に困るお客様が増えたことも、きっかけになりました」

 ポーラ・オルビスホールディングス広報・IR室の原恭子さんはこう説明する。ラインナップは婦人服、
バッグ、靴、毛皮、宝飾品など女性用の高級ファッション用品約480品目(約半分がポーラのオリジナル
商品)。ホテルやレストランの駐車場などを借り、1日限定で販売するのが基本。同社の販売員
「ポーラ・レディ」が招く固定客が中心だが、飛び込みの新規客も2割ほどいるという。その場で注文を
受けて、販売員が後日、商品の配送と集金を行う仕組みだ。

 現在、バスは2台で東日本、西日本を分担。1年目は全国約300会場を回り、約1万6000人が
来場した。40〜60代が中心で、1日平均売上高は約140万円だった。「客単価は約6万円で、
展示販売よりも高額。ブラックフォーマルウェアや黒真珠のネックレスが人気ですね」と原さん。
2年目は1台当たりの1日平均売上高150万円が目標で、約500会場を回る予定だ。
“地方で高級品”という隠れたニーズをつかんだ発想は、小売業者にとって大いに参考になりそうだ。

バス

<写真>移動販売車「走るブティック」

(文/野澤正毅)