■無試験で入学させる制度が大学を劣化させた
田中眞紀子の発言、「いまの大学は愚者の楽園だ!」、ぼくは大賛成です。もちろん、タイミングなどを
考えてほしいけどね。ともかく主旨はズバリYESですね。大学はもう末期的な状態です。死亡診断書を
書きたいくらい。先月の朝日新聞に大手私大(慶応・立命館)も経営難のために、給料に関して教職員と
揉(も)め、組合と裁判沙汰になっている、なんて記事が出ていました。私大は、どこも大変です。多くの
私大が、いつ潰れてもおかしくない状態ですよ。
それに、いわば偏差値戦争とでもいうような状況です。東京の私学の雄と謳われている大学と
いえども、半分は無試験で入れておりますから。信じられないでしょうが、旧帝大や一橋大、東工大
といった超有名な国立と競争するために、定員の半分をまず埋めてから、入試をやるのです。偏差値の
今までの高さを維持するためです。これ詐欺といってもいいくらいのことですね。
それ以下の、いわゆる「MARCH」と言われている大学も、右に習えなのですよ。偏差値50以下に
落ちたらまずい、といった恐怖からでしょう。なにしろ50を切ったら無限に凋落する、と信じられて
いますから。第一、高校側も、そのような偏差値の低い大学に教え子を進学させなくなるのです。
たとえば、高校側からの推薦で入れる場合、まともに受けたら入れないレベルの学生たちを
押し込んできます。大学側は、一応推薦入学した学生の学習状況を追跡する、と先方の高校に
伝えますが、あまり強くは言えないでしょう。お互いにすでに腹の内を知り尽くしているからです。
高校側も、いい大学に一人でも多く入れたいわけで、それが中学に対する宣伝になりますから。
ですから、高校側も背に腹はかえられないわけですね。
■「お前みたいなブスは死んでしまえ!」
学期末の恒例の「学生による教員評価」のこと。アンケート形式で、授業の内容、教師が黒板に
きちんとした字で書いているか、説明が分かりよいかどうか、などの内容を受講した学生たちに聞く
制度があるんですけど、これがひどいもんなんです。これはすべての講義・授業について尋ねるので
量も膨大です。その点では同情します。
アンケートには、マークするだけではなくて、担当教員に対する「講評(自由感想文)」を書く欄が
あります。もしそこに自筆で書けば、字体から、誰が書いたか判明するかもしれないので、それらは、
アンケートを集約する会社に依頼するのです。後日、きちんとしたデータが印刷されて送られてきます。
ただし、夏休み前に行ったアンケートの結果が、10月か11月ごろに自宅に送られますが、ぼくは別に
開いてみようとしないから、ゴミ箱行きですよね。
しかし、このアンケートの分析に信じられないお金が使われているようです。ちなみに、仄聞(そくぶん)
したところでは、私の勤めている大学では年間7000万円がそのアンケート調査に使われていると
言われてます。全国に800ある大学の8割以上で実施されているんです。ものすごい無駄使いだと
思いますよ。でも、文科省の言うようにアンケートをやらなければ、私学の場合、私学助成金が給付
されないわけです。要するに、全国の私学は、助成金欲しさに「教員評価」に協力しているのですよ。
これがどれだけひどいかというと、「自由感想文」に「お前みたいなブスは死んでしまえ!」みたいな
罵詈雑言が平気で書かれていたりして、名指しされた教員は落ち込み、退職まで考えたりするのに、
書く方は「無記名」の気楽なもの。しかもこのような内容が、私のところにも聞こえるとは、いったい、
個人情報の尊重、などといった大学外ではごくごく当然のことが、何故かできていない。
この教員の授業を受ける前に「概要(シラバス)」を読みましたか? という問いに「いいえ」と答えて
おきながら、「授業はシラバス通りにすすみましたか?」という問にも「いいえ」と答えていたりするん
です。しかもそれが相当数いる、ということは、まともに質問を読んでもいなければ、まじめに回答も
していないということです。そういうものに、どうして教員が生活を脅かされないといけないんですか、
ふざけるな、この野郎!と思うこともしばしばですね。
ああ、そうそう、こうしたアンケートの答えがまとめられて、1冊の本にして、各教師に配布するという
ご丁寧な大学がある。同僚がどのように学生に評価されているかが一目でわかるのですよ。
なんのためにそんな愚かなことを行っているのか、わかりませんですが。もっとも、このアンケートは、
アメリカではとっくの昔に廃止されております。そして、これを日本に導入することを積極的に勧めた
大学でも、現在では、すでに止めているそうです。お騒がせな大学ですね。
教員も、学生の人気取りのため、採点に手加減を加えることもあるようで、期末試験の成績評価から
「C」や「D」が減ったということです。大勢の学生から「最低の授業だった」と書かれたら最後、
非常勤講師の場合、大学によっては失職しかねないわけですから。
■「学問」の背景のない学部、大学が乱立している!
そして大学が、なぜ乱立するのか。これは私学助成金というおいしい蜜があるからでしょうが、よく
分かりません、たぶんそうでしょうね。私学といえども国からの助成、つまり税金の恩恵に浴している
わけです。経営難と言われても、大学経営には旨(うま)みがあるということでしょう。
ある大学が、学部を新設しようということで、文科省に申請に行った。そうしたら、その窓口になった
文科省の係官が「私を理事にしてくれたらすぐに認可手続きが運ぶように取り計らいましょう」と言った
そうです。大学側は、まさかそんな取引き、というか交換条件は呑めないと断った、そうしたら新設学部
に見合うようなキャンパスの広さがないとかどうのと難癖(なんくせ)をつけられて、学部新設の話は
ツブされたそうです。
そのくらい、文科省は私学に口を出す。金を出す代わりに口も出してくるんです。自分たちの天下り先
とでも思っているんじゃないかな。ところで、新設・乱立する大学、あるいは学部のほとんどが、長い
学部名であって、しっかりした学問が背後に屹立(きつりつ)しているとは思えない名前なんですね。
コミュニケーションなんとかとか。福祉とか観光とか、国際交流・・・、そして「文学部」はほとんどの大学
から消えつつありますね。少なくとも、旧帝大からは消えてしまっております。「文学」はもう、人間が
生きてゆく上で必要とされなくなってきているんでしょうか。
<18歳人口と四年制大学数の推移>
田中眞紀子の発言、「いまの大学は愚者の楽園だ!」、ぼくは大賛成です。もちろん、タイミングなどを
考えてほしいけどね。ともかく主旨はズバリYESですね。大学はもう末期的な状態です。死亡診断書を
書きたいくらい。先月の朝日新聞に大手私大(慶応・立命館)も経営難のために、給料に関して教職員と
揉(も)め、組合と裁判沙汰になっている、なんて記事が出ていました。私大は、どこも大変です。多くの
私大が、いつ潰れてもおかしくない状態ですよ。
それに、いわば偏差値戦争とでもいうような状況です。東京の私学の雄と謳われている大学と
いえども、半分は無試験で入れておりますから。信じられないでしょうが、旧帝大や一橋大、東工大
といった超有名な国立と競争するために、定員の半分をまず埋めてから、入試をやるのです。偏差値の
今までの高さを維持するためです。これ詐欺といってもいいくらいのことですね。
それ以下の、いわゆる「MARCH」と言われている大学も、右に習えなのですよ。偏差値50以下に
落ちたらまずい、といった恐怖からでしょう。なにしろ50を切ったら無限に凋落する、と信じられて
いますから。第一、高校側も、そのような偏差値の低い大学に教え子を進学させなくなるのです。
たとえば、高校側からの推薦で入れる場合、まともに受けたら入れないレベルの学生たちを
押し込んできます。大学側は、一応推薦入学した学生の学習状況を追跡する、と先方の高校に
伝えますが、あまり強くは言えないでしょう。お互いにすでに腹の内を知り尽くしているからです。
高校側も、いい大学に一人でも多く入れたいわけで、それが中学に対する宣伝になりますから。
ですから、高校側も背に腹はかえられないわけですね。
■「お前みたいなブスは死んでしまえ!」
学期末の恒例の「学生による教員評価」のこと。アンケート形式で、授業の内容、教師が黒板に
きちんとした字で書いているか、説明が分かりよいかどうか、などの内容を受講した学生たちに聞く
制度があるんですけど、これがひどいもんなんです。これはすべての講義・授業について尋ねるので
量も膨大です。その点では同情します。
アンケートには、マークするだけではなくて、担当教員に対する「講評(自由感想文)」を書く欄が
あります。もしそこに自筆で書けば、字体から、誰が書いたか判明するかもしれないので、それらは、
アンケートを集約する会社に依頼するのです。後日、きちんとしたデータが印刷されて送られてきます。
ただし、夏休み前に行ったアンケートの結果が、10月か11月ごろに自宅に送られますが、ぼくは別に
開いてみようとしないから、ゴミ箱行きですよね。
しかし、このアンケートの分析に信じられないお金が使われているようです。ちなみに、仄聞(そくぶん)
したところでは、私の勤めている大学では年間7000万円がそのアンケート調査に使われていると
言われてます。全国に800ある大学の8割以上で実施されているんです。ものすごい無駄使いだと
思いますよ。でも、文科省の言うようにアンケートをやらなければ、私学の場合、私学助成金が給付
されないわけです。要するに、全国の私学は、助成金欲しさに「教員評価」に協力しているのですよ。
これがどれだけひどいかというと、「自由感想文」に「お前みたいなブスは死んでしまえ!」みたいな
罵詈雑言が平気で書かれていたりして、名指しされた教員は落ち込み、退職まで考えたりするのに、
書く方は「無記名」の気楽なもの。しかもこのような内容が、私のところにも聞こえるとは、いったい、
個人情報の尊重、などといった大学外ではごくごく当然のことが、何故かできていない。
この教員の授業を受ける前に「概要(シラバス)」を読みましたか? という問いに「いいえ」と答えて
おきながら、「授業はシラバス通りにすすみましたか?」という問にも「いいえ」と答えていたりするん
です。しかもそれが相当数いる、ということは、まともに質問を読んでもいなければ、まじめに回答も
していないということです。そういうものに、どうして教員が生活を脅かされないといけないんですか、
ふざけるな、この野郎!と思うこともしばしばですね。
ああ、そうそう、こうしたアンケートの答えがまとめられて、1冊の本にして、各教師に配布するという
ご丁寧な大学がある。同僚がどのように学生に評価されているかが一目でわかるのですよ。
なんのためにそんな愚かなことを行っているのか、わかりませんですが。もっとも、このアンケートは、
アメリカではとっくの昔に廃止されております。そして、これを日本に導入することを積極的に勧めた
大学でも、現在では、すでに止めているそうです。お騒がせな大学ですね。
教員も、学生の人気取りのため、採点に手加減を加えることもあるようで、期末試験の成績評価から
「C」や「D」が減ったということです。大勢の学生から「最低の授業だった」と書かれたら最後、
非常勤講師の場合、大学によっては失職しかねないわけですから。
■「学問」の背景のない学部、大学が乱立している!
そして大学が、なぜ乱立するのか。これは私学助成金というおいしい蜜があるからでしょうが、よく
分かりません、たぶんそうでしょうね。私学といえども国からの助成、つまり税金の恩恵に浴している
わけです。経営難と言われても、大学経営には旨(うま)みがあるということでしょう。
ある大学が、学部を新設しようということで、文科省に申請に行った。そうしたら、その窓口になった
文科省の係官が「私を理事にしてくれたらすぐに認可手続きが運ぶように取り計らいましょう」と言った
そうです。大学側は、まさかそんな取引き、というか交換条件は呑めないと断った、そうしたら新設学部
に見合うようなキャンパスの広さがないとかどうのと難癖(なんくせ)をつけられて、学部新設の話は
ツブされたそうです。
そのくらい、文科省は私学に口を出す。金を出す代わりに口も出してくるんです。自分たちの天下り先
とでも思っているんじゃないかな。ところで、新設・乱立する大学、あるいは学部のほとんどが、長い
学部名であって、しっかりした学問が背後に屹立(きつりつ)しているとは思えない名前なんですね。
コミュニケーションなんとかとか。福祉とか観光とか、国際交流・・・、そして「文学部」はほとんどの大学
から消えつつありますね。少なくとも、旧帝大からは消えてしまっております。「文学」はもう、人間が
生きてゆく上で必要とされなくなってきているんでしょうか。
<18歳人口と四年制大学数の推移>