尼崎市を舞台にした連続不審死事件。続々と遺体が発見される一方で、主犯格の角田美代子
容疑者(64)ら8人が逮捕され、事件の全容解明へ向け捜査が急ピッチで進められている。
複雑怪奇なこの事件、擬似家族の相関関係は簡単に理解できるものではないが、注目されるのは、
長年仕事もせず、マンションでぜいたく三昧の生活を送っていた角田被告らの「資金源」である。

 事件を取材する在阪の社会部記者が語る。「当局が注目しているのは保険金です。この事件の
犠牲者の一部は保険金目的で殺害されている。誰がどのような形で偽装事故に協力していたのか。
生保業界は戦々恐々としていますが、有力メディアのスポンサーでもある生保のスキャンダルは
報道されにくい事情もあって、いまのところ明るみに出ていません」

 一連の事件が発覚する契機ともなったのが、2005年に沖縄県の観光名所「万座毛」で起きた
「転落事故死」事件だった。角田美代子容疑者の義理の妹、角田三枝子容疑者の夫である久芳さん
(当時51)が、高さ30メートルの崖から転落して死亡したとされるこの事件。沖縄県警に「事故死」と
断定され保険金6000万円とマンションを相続したのは角田三枝子容疑者であったが、当時三枝子
容疑者や角田美代子容疑者の夫である鄭頼太郎容疑者(62)らにも多額の保険金がかけられていた。

 「美代子容疑者は問題の沖縄旅行前、亡くなった久芳さんに『死ななければ三枝子や頼太郎が
死ぬことになる。家族のために死んでくれ』と説得したとされています。こうしたモラルリスクを生保の
保険外交員が知りながら契約を交わしていたとなれば、間接的に生保が尼崎事件に協力していたこと
になる。これが露見すれば大変なスキャンダルになります」

 もっとも保険金詐欺容疑は時効成立期間が7年であり、2005年に起きた久芳さんの事件に
ついては、保険金詐欺については時効が成立している可能性がある(自殺教唆の場合は10年で
時効成立)。

 「関係者らの供述によれば、三枝子と久芳さんの間に夫婦関係の実態はなく、保険金目当てに
縁戚関係を作ったとの見方が浮上している。ドラム缶にコンクリート詰めにされて海に遺棄された
久芳さんの兄の橋本次郎さんは、マンションで暴行・監禁され衰弱死したことが分かっているが、
他の犠牲者たちに保険金はかけられていなかったのか。また美枝子、頼太郎以外に多額の保険金を
かけられていた人物がいなかったかどうかが事件の鍵となってくるでしょう」(同)

■「保険金殺人」の陰に「黒い外交員」の存在
 いわゆる保険金詐欺、保険金殺人事件において、必ず浮上するのが「黒い保険外交員」の存在だ。
専門知識を駆使して健康診断を担当する医師を騙し、不正な保険契約を成立させる。大型契約を結び
自身の成績を上げる目的もあれば、犯罪に積極的に加担し、後に成功報酬を受け取るケースもある。

 1997年に起きた和歌山砒素カレー事件では、実行犯の元保険外交員、林真須美(現・死刑囚)が、
多額の保険金詐欺に手を染めていたことが発覚した。真須美の夫も実刑判決を受けている。また
90年代後半に、埼玉県の本庄市を舞台に発生した連続保険金殺人事件(主犯の八木茂は死刑確定)
では、複数の女性保険外交員が不正な保険契約に加担し、犯行に関与していたことが分かっている。

 こうした実態は、知る人ぞ知る「常識」であり、業界の問題点として以前から認識されているものの、
生保のスキャンダルが大新聞、テレビのタブーであるため、ほとんど報道されることがなく終わっている。

 「久芳さんには生保3社に多額の保険金がかけられており、すでにこの時点で業界関係者なら
不自然と気づくはず。また、マンションにしても、久芳さんの死後、契約者の死亡で支払いが免除される
団体信用生命保険から、残債3000万円が支払われた。角田美代子と三枝子の義理姉妹に支配
されていた久芳さんがマンションの名義人になっていること自体、不自然な話ですが、どうして
生保各社がこの実態に気づかなかったのか。解明が待たれるところです」(同)

 事件の主犯格と目される角田美代子被告については裁判員裁判となる可能性が高い。奇怪な
人間関係に隠された「生保の闇」に光が当てられる日はくるのだろうか。

尼崎

<尼崎事件相関図>