ペットが野生化したのか、はたまたコンテナにまぎれて入り込んだのか、真相は明らかになっていない
危険な外来生物たち。本来いるはずのない生物が亜熱帯化しつつある日本で次々に繁殖している。
そして多摩川ではさらなる異常事態が起きていた。

生物

<写真>ワニガメ:水質汚染や乱獲などにより、生息数は減少傾向にある。要注意外来生物に指定。

■国でさえ管理しきれない超危険な外来生物
 現在外来種が、生態系に悪影響を及ぼしたり、人の生命や身体に危害を加えている。日本では
外来種がもたらす病原菌や寄生虫の流入を防ぐため、2004年に特定外来生物による生態系等に
係わる被害の防止に関する法律(外来生物法)を成立させた。この法律により、生活に危害を及ぼす
恐れのある外来種は「特定外来生物」に指定され、飼育や輸入の規制が可能に。だが、しょせんは
後づけの対策、根本的な解決には至っていない。

 これらの問題が起きている背景について、環境省の外来生物対策室に話を聞くと、「特定外来生物
は密輸で運ばれたり、外国からのコンテナ貨物などに付着して上陸することもあります。そのためすべて
を規制するのは困難なのです」と語る。

■被害が急増しているセアカゴケグモの脅威
 日本各地に数多く存在する外来生物のなかでも特に注意したいのが、関西をはじめとして全国の
23府県に生息する「セアカゴケグモ」だ。今年の9月3日、福岡市の介護施設に入所する86歳の
女性がこの毒グモに噛(か)まれて入院するなど、被害が急増している。

 セアカゴケグモの毒液には強力な神経毒が含まれており、嚙まれると進行性の筋肉麻痺が生じる
恐れもある。そんな危険なクモが、今なぜ急激に増殖しているのだろうか。クモ研究家の清水裕行さん
は次のように分析する。

 「乾燥気候を好むセアカゴケグモは、コンクリートとアスファルトで覆われた都市環境での生活に
非常に適しているのです。くわえて近年、ヒートアイランド現象による都市の高温化で越冬が可能に
なったことが、都市部を中心に繁殖している原因だと思われます」

 現在、国や自治体では危険な外来種の駆除活動を行ってはいるものの、予算の関係もあり大規模な
駆除には至っていない。特にセアカゴケグモは天敵が少ないだけでなく、一度に数百匹もの卵を生む
という。この卵は丈夫な袋で保護されているので、殺虫剤程度ではほとんど効果がない。そのため、
徹底的な駆除が急務となっているのである。危険な外来種の問題は、一筋縄ではいかないのだ。

■身近なところで増殖中 意外と知らない外来生物
 関東近郊にも危険な外来生物の影がしのび寄る。たとえば千葉県八千代(やちよ)市など6市町に
またがる印旛(いんば)沼周辺の湿地では、人間にも嚙みつく恐れのある凶暴なカミツキガメの繁殖が
確認されている。

 またカミツキガメの一種であるワニガメは、元はペットとして飼われていたものが捨てられ、今では
全国各地で多数の目撃情報がある。なかには、大きいもので体重100�坩幣紊砲發覆蝓∋劼匹發了悗�
噛みちぎるほどの威力を持っている超危険生物だ。これだけではない。首都圏など12都県に生息して
いるアルゼンチンアリは攻撃性が強く、人家に侵入して人間に嚙みつくこともあるという。毒性はない
ものの、就寝中に嚙まれて「よく眠れない」という被害例がでている。

 また、セアカゴケグモと同じゴケグモ属のハイイロゴケグモは、東京・神奈川などに多く生息している。
「牙が短く、比較的おとなしいとみられて過小評価されていますが、セアカゴケグモと同等の危険性が
あります」(清水氏) 重症になると、進行性の筋肉まひが生じる可能性もある。

 そして意外なのが、かつてはペットとしても人気があったアライグマ。野生化したアライグマが多数
みつかっており、農作物に被害を及ぼしているだけでなく、人を襲う危険性も危惧されている。見た目の
愛くるしさにだまされがちだが、じつは凶暴な一面を持ち合わせている。このように、関東近郊だけでも
多数確認されている外来生物。これらの恐怖と向き合うには一人ひとりが知識を身につけて対策をとる
以外の方法はないのが現状である。

取材・文/常井宏平、オフィス三銃士