■都市型震災の恐怖の的、それは火災だ!
 昨年の東日本大震災でも津波の猛威の後、火災は起こった。コンビナート火災での激しく黒煙を
上げながら燃える姿や宮城県気仙沼市の猛火をご記憶の読者もいるだろう。「あの日、通りの向こう
から、飛び火っていうんですか、文字通り、屋根から屋根へ飛び移ってるのが見えて。熱いのと眼が
痛いのとで、おかしくなりそうでした」(元気仙沼市在住/吉野道美さん)

 「火が消えて、地元の消防団と一緒に巡回をやってたら、瓦礫(がれき) から火が弾けて、いやあ、
ホントに弾(はじ)けたんだ。ポンと出てきた私の拳くらいの火の玉が、木造の倒壊家屋のほうに飛んだ
んだ。するとガスのスイッチ捻(ひね)ったみたいに燃えだした」(元気仙沼市在住/桑野真二郎さん)

 「ボヤがずーっと続いていつになったら消えるか途方に暮れた。消防団に協力して頂くのも危険だと
翌日から感じました。化学火災っぽい鼻を突く悪臭も発生していました。火の出処を探そうにも瓦礫で
身動きが取れなかった」(気仙沼市消防隊員/Aさん)

 以上は昨年聞き取りした、猛火に襲われた気仙沼市での証言だ。震災被害で建物の倒壊とともに
恐れられる火災。とくに大規模火災の恐ろしさを、過去の体験も含めて学び、生き残るすべを考えて
いきたい。

■断水で消火が遅れた阪神淡路火災
 1995年1月17日、午前5時46分、淡路島北部を震源とするM7・3の地震が発生した。震源の
深さ16キロ。神戸市長田区の木造住宅密集地では、関東大震災で猛威を振るった「火災旋風」が
確認されている。「遠目やったけど、一回倒れた建物が空のほうへ火と一緒に持ち上がっていくのを
見ました。これは見間違いかもしれない。そう思っていましたけど、火災旋風というのはそういう力が
あると知って驚きました」(元長田区在住/稗田正枝さん)

 火災発生の原因は、揺れにより停止された送電が一時的に再開され、倒壊した家屋で漏電し、
損壊した送電機や家電品が火種になったこと、といわれている。聞き取りをした際、消火活動に
あたっていた当時の消防隊員が「断水してしまって消火ができんかったんがつらかった」と答えてくれた。
まず、地震で火災が起きた際、「断水」で消火ができなくなることがあると覚えておきたい。

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台東区立下町風俗資料館発行「関東大震災と復興の時代」(2012年9月1日発行)より

■大規模火災、その時、我々はどうすればいい?
 地震火災の避難場所に関して都の都市整備局へ問い合わせた。「私どもとしては189箇所の
避難場所は適当であると認識しております。また地区内残留地区は不燃化も進んでおりますので、
大規模延焼は起こる可能性が低いと考えて設定しております」という回答が寄せられた。

 それならばと避難場所のマップを見てみる。新たに想定されている中央区・江東区などの津波予想
地域や隅田川沿い、赤坂見附周辺の液状化地域、副都心などの建造物の崩落及び損壊予想地域と
突き合わせると、189箇所中での実効使用面積は20%から40%は狭まることがわかる
(墨田区在住・若松さんの試算)。

 例えば早稲田大学キャンパス内などは有効面積8万4千平米に対し、避難人口が約5万7千人。
実地に歩いてみたが、建物部や生垣部などの面積を含めている有効面積ではと考えられ、ここでも
区外通行人や車両運転者の人数を勘定に入れていなかった。

 観光や遊興目的の流入人口の多い渋谷区では明治神宮が最大の避難場所としている。全避難地区
割当は区民想定であり避難人口想定である27万人を超えるはずだ。なぜなら都による昼間人口の推計
では渋谷区内は通勤・通学者など含め55万人を数えているのだから。このように自治体が指定する避難
プランは明らかに避難人口と場所のバランスが悪く、地勢的にも考慮されていないものが多いとわかる。

■装備と逃げ場を自分で確保せよ!
 想定される最悪の火災、そして避難指定区域の不備のなか、僕らはどうやって自分や家族の命を
守ればいいのか。これまでに伺った人たちの声を紹介したい。「阪神淡路大震災で思うたことは、
お上の言うとおりに動いてたら命はない言うことやね。日頃からここは安全か? 思うて家族と相談して
おくことや。逃げ場は自分らで探して、近所とも話し合うことやね」(前出・篠原篤さん)

 「火は信じられないほど熱い。そして火の回りは早いんです。まず思うのは身軽にしておくこと。避難に
荷物をたくさん持ってというのは考えられない。まず命を持って逃げる。大事な荷物は命だけです」
(前出・桑野真二郎さん)
 「集団ヒステリーっていうのかね。あれは怖い。戦争の時も逃げ場を失うのは、ダダーっと勢いで
逃げた人たちだ。単独や少人数で正気を保って、逃げるのがいいと思うね」(前出・真崎圭之助さん)

 「火災の場所がどこなのかの情報を得ること。高い場所に登って見るのもいい。観察です。火災旋風の
危険性を持つ場所へ近づかない」(前出・畔田宏さん)
 「水をかける消火が効かない場合があることを知ってほしい。薬局やガススタンド、加工工場、
化学物質を積んでるようなトレーラーへの消火を素人で行わない。逃げる、を心がけて欲しいです」
(前出・伊地知守さん)

 地震活動期のいま、絶えず危機にさらされているといっていいと思う。その中で、命を守ることに真剣に
目を向けることが迫られている。恐怖していても前に進まない。目を開き、経験の声に学び、何が何でも
生き延びること。この単純な命題を地震国日本で暮らす僕らは肝に銘じるしかない。

取材・文/岸川真(作家)