10月9日に発売された宝島社新書『どうせ死ぬなら「がん」がいい』が話題だ。老人ホーム医師で、
ベストセラーとなった『大往生したけりゃ医療とかかわるな』の著者である中村仁一氏と、
『がん放置療法のすすめ』などの著書で従来のがん治療に異論を唱えてきた近藤誠氏が、
がん治療の誤解、医療のウソを語り尽くしている。この著書から“衝撃の内容”の一部を紹介する。

がん

<写真>中村仁一氏(右)と近藤誠氏(左)

■医療は恫喝産業。不安をあおり患者を増やす
 本のなかで中村氏は、医療が“恫喝産業”であると発言している。「医療、教育、宗教は恫喝産業だと
思ってます。恫喝のしかたはいろいろありますよ。『命がどうのこうの』って言われたら、みんな不安に
なりますから。医者は恫喝のしかたがうまいです」

 つまり、医者は医療行為という専門性を盾に“お客”を不安にさせて商売している、というのだ。
近藤氏も「不安産業でもありますよ。不安をあおってファンを増やす」と同調する。その“手口”を中村氏
が明かす。

 「不安をかきたてたら、患者は絶対、来ますからね。『治療しなかったらこうなりますよ』って、
不安がらせるし、脅すし。検診でも人間ドックでもそうでしょ。10項目も受けたら、どっか具合悪いって
言われますよ。基準値そのものが、健康な人が『95%に入る範囲』で、前後の2・5%ずつは、はずれる
んだから。それに加えてさらにいろいろ、見つかるわけだから。

 医者は患者を思考停止させた方が繁栄するから、治療のいい面ばっかり言ってマイナス面は隠して、
洗脳するんですね。検診でなにか見つかった患者が『様子を見ますよ』と言うと、『そんなことをしていて
手遅れになったらどうするんだ』って。結局、自分のやりたい方へ誘導する。自分のすすめる治療の
いいことしか言わなくて、マイナス面は隠すか、小出しにして。だからどうにでもなりますよ。相手は素人
なんだから」

 また近藤氏は、医者のやることはヤクザや強盗より罪が深いとバッサリ。「医者はヤクザよりタチが
悪いんです。ヤクザは素人衆を殺すことはないし、指を詰めさせることもない。強盗だって普通は金を
とるだけだけど、医者の場合は患者を脅迫して、金を払ってもらった上に、身体を不自由にしたり、
死なせちゃったりするわけだから」中村氏は、医療の本質を「博打」と表現する。「医療っていうのは、
命を担保にした博打ですよ。どっちへ転ぶかは医者にもわからないんです。ホントのところ」

■「早期がんを手術で取ったから助かった」の誤り
 「早期発見・早期治療で、がんは治る病気になった」というプロパガンダもウソ八百。近藤氏によれば、
人口に占めるがん死者の割合は、1960年代から変わっていないという。中村氏も「がんの早期発見・
早期治療」に疑問を投げかける。

 「そもそも『早期発見・早期治療』というのは、完治の可能性がある感染症の結核で成功した手法。
がんに対して『早期発見・早期治』という言葉を使うと、早く見つければ完治する、という誤解を与えて
しまいますよね」

 近藤氏は、30 年に及ぶ研究と豊富な臨床経験を基に、がんの早期発見には害しかないと断言する。
「よく『がん検診で早期がんが見つかって、手術できれいに取ってもらったから5年経った今も再発せず
に元気でいる。私はラッキー』という話を聞きますが、本物のがんなら、見つかる以前に転移しています。
なんの害もない『がんもどき』を見つけられ、必要のない手術を受けて臓器を傷つけたのだから、損を
したことになります」

 近藤氏によれば、症状がないのに検診などで見つかったがんはほとんど、大きくならないか消えて
しまう「潜在がん」か、命を奪わない「がんもどき」だというのだ。逆に、本物のがんは必ず転移する、
そしてどんな治療をしても根絶することはできないという。

 また、がんの進行は世間で思われているほど速くなく、近藤氏が診てきた150人の「がん放置患者」
の中には、悪性で進行が速いとされるスキルス胃がんを放置し、普通に仕事を続けて9年生きた
会社社長も。

 「もし身の回りに、今まで元気だったのに、がん手術や抗がん剤治療を受けて3カ月や半年で
死んだ人がいたら、それは治療のせいです。本物のがんにしろ『もどき』にしろ、固形がんは治療を
あせらず様子を見るのが賢明。がんが大きくなって『呼吸がつらい』といった不便が生じるとQOL
(生活の質)が落ちるので、そこで初めて手術で切り取るか、放射線で叩いてもらえばいいんです」
(近藤氏)

■がんが痛むのではなく治療で痛む
 がんはひどく痛む。がんにかかったら、最期まで拷問のような苦しみにうめいて死んでいくしかない−−
たいていの日本人がそう思いこんでいるのではないだろうか。がんが忌み嫌われる最も大きな理由も
ここにある。しかし、治療しなければ痛まないがんが、たくさんあるという。中村氏が実体験を披露している。

 「がんを放置した場合は、ぼくが老人ホームで経験した限りでは、実に穏やかに死んでいきます。
強烈な痛みや苦しみを伴うのはがんのせいじゃなく、治療のせいなんだとよくわかりましたよ」

 近藤氏も不必要な手術、抗がん剤が痛みの原因だと指摘する。「確かに、放置すれば痛まずラクに
死ねるがんは、胃がん、食道がん、肝臓がん、子宮がんなど、少なくないです。たとえ痛みが出ても、
モルヒネや放射線などの治療で苦痛を除くことができます。不必要な手術をしたり、抗がん剤治療を
したりするから、苦しい死、悲惨な死になってしまうんです」

 がん患者が苦しんで死ぬと、医者は近親者に「がんで痛んだ」と説明する。治療で痛んだとは、
決して言わない。そして新しい患者に「がんはこわいから、すぐ治療にとりかかりましょう」。濡れ衣を
着せられて、がんはさぞ迷惑だろう。

中村仁一(なかむら・じんいち)
●1940年生まれ。京都大学医学部卒業。財団法人高雄病院院長、理事長を経て、2000年2月より
社会福祉法人老人ホーム「同和園」附属診療所所長、医師。1996年4月より、市民グループ
「自分の死を考える集い」を主宰。2012年1月に出版した『大往生したけりゃ医療とかかわるな』
(幻冬舎新書)が50万部を超えるベストセラーに。

近藤 誠(こんどう・まこと)
●1948年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部放射線科入局。83年から
同大学医学部放射線科講師。がんの放射線治療を専門とし、乳がんの乳房温存療法を積極的に
すすめる。また、医療の情報公開にも力を注ぐ。『患者よ、がんと闘うな』『がん放置療法のすすめ』
(ともに文藝春秋)ほか著書多数。