■竹島で火がついた韓国大衆の反日感情
 韓国メディアはナショナリズムをむきだしにするところがある。そのボルテージはもちろん
対日関係で一番高くなる。最近、韓国大統領の竹島訪問をきっかけに一気に日韓関係が
冷え込む中で、この種の記事のオンパレードとなった。

 例えば8月22日付朝鮮日報は日本を「百年前と何ら変わらない」と決めつけた。日本は
同じ領土問題を抱えるロシアや中国の前では大人しいが、韓国には「攻撃的かつ挑発的な」
行動をとる。大統領の発言に対する国会の非難決議案は「戦時中でなければ考えられない」。
そして、銀座の五輪パレードは民族主義な動きで非常識、と脱線気味の発言まで飛び出した。

 こうしたメディアの論調から、市民の反日感情の激しさがうかがわれる。言うまでもなく
その背後には歴史的な経緯がある。日本は韓国を植民地支配し、その主権を踏みにじってきた。
こうした過去のしこりが百年そこそこで消えることはない。おまけに近年韓国は日本をライバル視
できるところまで経済力を伸ばしてきた。さらに隣国であるがゆえの対抗心が過剰な競争意識に
拍車をかけている。

 一方、尖閣諸島に加え竹島でも荒っぽい動きが起きてビックリした日本でも、韓国に対する
厳しい論調が目立った。メディアは毅然とした対応を求め、国会は非難決議を採択し、政府も
強く韓国を批判した。対韓関係はもしかすると対北朝鮮関係以上に悪化した。

■ナショナリズムカードに両国民は乗せられるか
 こうした突然の対立を欧米メディアはどう見ているか。一言で言えば、国内問題から国民の目を
逸らすためにナショナリズムカードを切ったというのが一致した見方だ。

 例えば9月8日付エコノミスト誌によれば、韓国大統領は汚職による実兄逮捕などもあって
支持率が極端に低下していた。また韓国では退任後に大統領自身や親族が政敵から徹底的に
追及されることが半ば慣例化している。2月に退任する大統領はそれを心配し、大衆受けする
行動に出て権力基盤の強化を図った。一方、我が野田首相も問責決議が通って法案成立の
見通しが立たなくなっている。いずれ解散に追い込まれる可能性がある中で、韓国への憤りが
高まる世論を背景に対決姿勢を強めざるを得なくなっている。

 同誌はこう述べた後、大きなリスクとして日本で反韓感情がさらに高まることを挙げている。
大阪市長や他の右翼政治家の中に、従軍慰安婦問題で韓国に謝罪した「河野談話」を見直す
動きがある。そうなれば対立は決定的となるだろう。他国で暴徒に国旗が燃やされるのを見れば
誰でもいい気持ちはしない。それは身近なものに対する愛着心の延長線上にある感情だ。この
感情は自然で広範なだけに利用されやすい。だからこそ政治家はこれをナショナリズムに
すり替えて自分たちの都合の良いように操ってきた。今またそれが起きようとしている。

執筆:鈴木敏昭