■糖尿病患者のための食料だったキクイモ
 キクイモはキク科ヒマワリ属の植物で、日本には19世紀半ばに海外から持ち込まれた。9月ごろに
黄色い花をつけ、10月から11月にかけて根に芋が実り、約3000種もの品種があるといわれている。
キクイモは従来、糖尿病に効用があるとされてきた。含有するイヌリンが腸内環境を整え、血糖値を
抑制する作用があるというのだ。タマネギやゴボウなどにも多く含まれる成分だが、特に高濃度に
含まれているのがキクイモである。

 しかし、このキクイモの一種に、抗がん作用をも持ち合わせたものが発見され、治癒作用が
徐々に明らかになっているという情報を耳にした。茨城県龍ケ崎市でキクイモの生産を手がける、
金子保広氏を訪ねた。金子氏はダイオキシン等による土壌汚染を訴えてきた農場主で、約10年前
から白キクイモの生産・販売を始めた。糖尿病に効く健康食として量販店の軒先で販売活動を行う
など、地道な活動を続けてきた。

 ある時を境に、金子氏は生産品種を日本産の白キクイモからフランス原産の青・赤紫色キクイモ
(フランス名:アルティショー・ドゥ・ジェルザレム、以下仏キクイモ)に切り替えた。白キクイモは
形状上、土を除去するための洗浄に手間がかかるため、表面の凹凸が比較的少ない品種を
志向したのが、仏キクイモに切り替えた理由である。

仏キクイモ

<写真>抗がん作用があるとされる仏キクイモ「アルティショー・ドゥ・ジェルザレム」

■ステージ4患者の報告「肺がんが消えた」
 しかし、これが思わぬ結果を生むことになった。「仏キクイモを購入されたお客さんから、『糖尿病
だけでなくがんも治った』という報告が寄せられたのです。最初は私自身、事情がよくわからず驚いた
のですが、それ以降もがん患者の方から健康が回復したという報告が相次ぎました。試しにお客さん
から腫瘍(しゅよう)マーカー(がんが産出する血液中の物質の量を測定した数値)を定期的に聞いた
ところ、たしかに仏キクイモを摂取し始めて以降腫瘍マーカーが低下していたのです」(金子氏)

 糖尿病の指標である「糖化ヘモグロビン(ヘモグロビンA1c)」の数値と共に、前立腺
(ぜんりつせん)がんの腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)の数値も低下したという。
実際、「キクイモでがんが消えた」という体験者からも話を聞くことができた。

 東京都荒川区に住む谷幸恵さん(82歳)は7年前の05年9月、がんが肺内で転移した結果、計7つ
の腫瘍ができ、肺がんの進行度は最高レベルの「ステージ4」だと診断された。いわゆる末期がんで
ある。抗がん剤治療を行ったが、腫瘍はさらに大きくなるばかりだった。抗がん治療の後、処方された
ビタミンCを飲むだけの在宅療法が始まった。糖尿病も患っていた谷さんは、医師と相談の上、金子氏
が販売する仏キクイモを食べ始めた。味噌汁に溶かすなどして、キクイモの粉末150gを2週間程で
摂取していった。

 谷さんはこう話す。「最初はまったくの思いつきでした。でも、糖尿病だけでも治して少しでも長く
生きたい、という欲はありました。すると、病院の検査に行くたび、がんの症状がどんどん良くなって
いったのです」

 07年6月の診断で、7つあった肺の腫瘍のうち2つが消滅したのだという。08年2月の診断では
さらに3つの腫瘍が消滅。その後一時キクイモの摂取を中断したが、イレッサ投薬等によって残る
2つの腫瘍もなくなった。がん発見から7年を経た現在も、健康的な毎日を過ごしている。「キクイモは
自然食の一種ですから副作用も心配ないし、結果的には一番、体に合っていたようで。お医者さんは
『奇跡だ』とおっしゃっていました。目に見えて体の状態が良くなっていったので、楽しみながら食べ
続けています」

■どのようながんに効果が見られるのか?
 なぜ仏キクイモの摂取ががんの改善につながるのか。衛生管理者の資格も持つ金子氏は、
本格的に仏キクイモの研究を開始した。谷さんなど、がんを患う購入者から腫瘍マーカーをはじめとした
医療データを提供してもらい、キクイモ摂取とがんの関係性を調べ始めたのだ。また09年、地元の
国立茨城大学と共同研究契約を交わし、「企業等共同研究員」として仏キクイモに含まれる成分に
関する解析研究をスタートさせた。

 茨城大学で金子氏と共同研究にあたる、農学部白岩雅和教授はこう話す。「キクイモの活性成分に
ついて、イヌリン以外のものはこれまでほとんど研究されていませんでした。イヌリン以外の成分は
どのようなものか、それはがん細胞の増殖を抑制する作用があるのかについて、成分を細分化して
調べています。現在までに、リノール酸、オレイン酸等の複数の不飽和脂肪酸が混ざっている部分に、
抗腫瘍活性が見られることが判明しています」

 どうやらがんに対する効能はあるといえるようだ。大学の研究では、成分の特定に向けた取り組みが
現在も進められている。また金子氏によると、複数の症例が集まるなかで、特に腫瘍マーカーの改善例
が顕著だったのは、「前立腺がん」「大腸がん」「肺がん」などであったという。

 前立腺がんを罹患(りかん)した後、仏キクイモの摂取を始めたという島田幸男さん(71歳・仮名)に
話を聞いた。「肺がんの手術を行い、経過も良好でしたが、今年3月、前立腺がんが見つかりました。
同1月から1日7gずつキクイモを食べていましたが、前立腺がん発覚後は、思い切って摂取量を
約10 倍以上の1日75gに増やしてみたのです」

 大量摂取(1日75g)を開始した翌月の4月、数値はいったん上昇を見せたが、その後は低下の
一途をたどり、わずか4カ月で21.8ng/dlまで数値が落ち着いたという。「1カ月後に腫瘍マーカーの
数値が上昇した時は少し不安にもなりましたが、最初はそうなると聞いてましたし、お通じがよいと
いう感触もあったのでそのまま続けてみたのです。すると、翌月からは数値が下がり、ホルモン剤の
投与も並行して始めた翌々月には、すっかり数値もよくなり一安心しているところです」未解明の
部分もあるが、仏キクイモを食べ健康を取り戻した人が多数いることは事実である。成分の特定など、
今後が注目される。

取材・文/南雲裕介