このまま脱原発を政府に任せきりにしてもよいのか。デモをはじめとして、個人レベルでできることは
たくさんある。私たちにいま求められる行動はなんだろうか。
俳優・山本太郎さんに聞いてみた!

「自分にできることで脱原発活動を」 山本太郎(俳優)

 3・11以降、原発の問題に悶々(もんもん)としていましたが、自分が役者である以上、行動を
起こせば仕事に影響がでるとわかっていました。それでも自分にウソをつく方がつらかったんです。
だから去年、一市民として脱原発活動をはじめました。

 あれ以来、放射能の許容量のルールが変わりましたよね。年間1mSvだった被曝限度を
20mSvに変え、子どもたちに与えて安全だとうそどく。それに声をあげなければ、自分もこの行為に
加担しているのと同じです。だから僕は、芸能界から干される覚悟で、ツイッターで脱原発の立場を
表明したんです。

 予想通り、芸能界の風当たりは強かったですね。大手メディアは原発の既得権益者(電力会社、
電機メーカー、建設会社、銀行、保険会社など)からかなりの額の広告費を受け取っています。
だから、以前から僕らの周りには原発の発言自体NGという空気があったんです。

■永田町のデモ活動がフェスのようになったら
 正直、この脱原発活動に対してどれだけの手応えが得られているのかにはうまく答えられません。
ただ、1年前から比べて確実に変化はありました。それまでかたくなに原発ゼロを否定していた
国の姿勢を“ゼロベース”という考えまで変えられたのは、人々の力があったからでしょう。主催者に
よれば、僕が初めて加わった4月10日のデモ参加者は1万5000人にものぼるとのことでした。
いま行われている官邸前のデモでは8月4日のもので20万人といわれてますから、10倍を超える人が
参加するようになったということです。

 人々の意識が明確に変化したのは、大飯(おおい)原発の再稼働が決定してからでしょうね。
結局、大飯は再稼働してしまいましたが、動かされてしまったものは仕方がないと割り切りましょう。
ここから、原発をゼロにする行動を起こすことは決して遅くありません。

 それに、最近は官邸前が鉄柵でブロックされて、大勢の人が集まれないようになりました。けど
僕としては、この状況は逆にチャンスじゃないのかと思っているんです。たとえば、領土問題など
原発以外の問題で国へ意見したい人もいるはず。だから、国会や経産省や外務省の前とかで、
それぞれの場所に訴えるテーマを作って、まるで音楽のフェス会場みたいにみんなが自由に
行き来できるようになればおもしろいと思うんです。

■自分にできることから脱原発を始める大切さ
 僕は、自分の役目を客寄せパンダだと考えています。自分がデモや講演に参加することで、
無関心だった人がひとりでも原発に危機感を持ってもらえればいいんです。一時期、僕は原発の
ある地域の首長選に立候補しようとも考えました。結局、住人の90%以上は原発推進の方々
だから断念しましたが、自分はなにができるのだろうかと、いつも悩んでいます。同じように、もう既に
皆さんが得意な分野で貢献しています。自分のできることから始めること。そうすれば、日本の脱原発は
実現できると僕は思うんです。

山本太郎

<出典:『ひとり舞台 脱原発−闘う役者の真実』山本太郎・著(集英社)より作成>