■性欲レベルでは、ベストカップル!?
 本誌7月号でお伝えしたとおり、年上女性と年下男性と思(おぼ)しきカップルが楽しげに
街を歩く様子が前より頻繁に見られるようになった。今回の取材に協力してくれた男女も、
10以上の年齢差さえものともしないラブラブ体験を語る。そうした逆年の差カップルの交際が
実際増えてきたとなると、正直、気になるのはセックス事情だ。

 「性欲という観点から見ると、40 代女性と20代男性はかなり好相性といえる面がありますね」
と話すのは、日本家族計画協会クリニック所長の北村邦夫先生。「人間の性欲を支配している
のは、男性ホルモンの一種であるテストステロンです。この分泌が多いと性欲も高まるのです」
生物学的には、男性の場合、男性ホルモン分泌は18〜20歳でピークを迎え、以後は徐々に
減っていく。その意味では20代は、30代や40代に比べれば、まだまだ潤沢で盛んといえる。

 一方、女性にも男性ホルモンは一定量分泌されているが、20代〜30代前半は女性ホルモンの
ほうが優位なので、相対的に男性ホルモンの分泌は抑えられている。「しかし、女性ホルモンの
分泌が低下し始めるアラフォー世代になると、女性も男性ホルモンの影響を強く受けるので、性欲が
増してくるケースがあると考えられます」(北村先生)

 取材した女性の中からも、「もともとセックスは好きじゃなかったのに、40歳を越えてから
『ムラムラ感』を感じるようになった」という声が聞こえてきた。しかも、女性の男性ホルモン分泌は
閉経後も保たれ、60歳くらいまで続く。そう考えると、アラフォー女性の性的な欲求レベルはむしろ
10〜20歳年下の男性と近く、年下彼氏がアラフォーになってきたころには、女性側も落ち着いてくる
という図式が浮かぶのだ。

 しかし、人間の「性欲」は男性ホルモンだけで語れるほど単純ではない。北村先生によれば、「性は
脳なり」といわれるように、脳の学習成果がセックスライフにも大きく関わっていく。「多くの日本人が
誤解しているんですが、感じているのは『性器』ではなくて『脳』。だから気持ちのいいセックス、楽しい
セックスをしてきた経験が豊富なほど、男女ともにホルモン分泌が下がってくるような年代になっても、
脳に刷り込まれた記憶によって性欲や性感は持続し活性化しやすいのです」

■男性の草食化の本音は「面倒くさいから」
 だが、そうした女性のストレートな欲望に応えるべき男性の性欲、性行動は草食化が著しいと
いわれる。下表にあるように、セックスに対して「関心がない」「嫌悪している」と答えた16〜25歳未満の
男性の割合は、2008年と10年の調査を比べてみても、ほぼ2倍。20代後半でも1・5倍増加した。
20代男性の5〜8人に1人がセックス嫌いであり、しかもその傾向は年々顕著になっている。多くの
若者と接してきた北村先生によれば、その主たる理由はなんと「面倒くさいから」だそう。

40代女子&20代彼氏

<表>「男女の生活と意識に関する調査」2008、2010年
(『セックス嫌いな若者たち』メディアファクトリー、北村邦夫著より)

 「20代男性から性の相談を受けていても、性欲は年相応にあるんです。でも順を追って口説いたり
するのは面倒くさいらしい(笑)。イギリスの動物行動学者のデズモンド・モリスによれば、人間は手を
つなぐ、腰に触れるなど『触れ合いの12段階』を経てセックスへ至るのですが、同世代より下の女性
たちを相手にすると、その長い道のりを一つひとつ越えていかなくてはいけない。おそらくアラフォー
女性たちはもっとさばけていて、単刀直入な口説きに乗ってくれたり女性から誘ってくれたりするのでは
ないでしょうか」人間関係の面倒を飛ばして一気に肉体関係に入れる気楽さは、20代男性には渡りに
船なのかもしれない。

取材・文/三浦天紗子、構成/オフィス三銃士