昭和元年創業のうなぎ店職人が試食!!プロが認めた味はどっち?

 自社サイトなどによると、うなぎの産地はすき家、吉野家ともに中国産。そこに大きな違いはない。
しかし、形状は異なる。吉野家はかなり小ぶりで、3片にカットしたうなぎを1つに成形してある。
そのため、テイクアウトして持ち運ぶとコロコロ分かれてしまう。なんでこんなことに?その理由を教えて
くれたのが東京・巣鴨で創業87年のうなぎの老舗「八つ目やにしむら」の従業員、富岡峰人さんだ。

■「吉野家は前からおいしいと思っていたけど・・・」
 「恐らくロスが出ないよう1尾のうなぎを9〜12等分しているんでしょう。さらにそこから縦に切って、
上手く組み合わせて決まった重量を保っているのではないでしょうか」富岡さんによれば、専門店でも
1尾をただ2つにカットして焼くのではなく、同じ大きさのうなぎから同様の組み合わせを作って提供する
のだとか。そうしないと、平均が取れないというのだ。
 
 しかし、すき家は尾の1枚切り身。しかも、大きめのうなぎの3分の1尾はある。これを富岡さんは、
「やはりうなぎらしい大きさにこだわった結果では」と語る。そこで生まれるロスも、ゼンショーのような
“総合外食”であれば自家消費できる、と推測する。とはいえ、販売開始当初、吉野家が490円で
売っていたことを考えると、すき家の780円は高い・・・果たしてその価値はあるのか?

 富岡さんもすき家のうな丼は初めてという。緊張しつつ箸を口に運んだ瞬間・・・。「ウマいっすよ」
え、マジ?「吉野家は前からおいしいと思ってたんだけどね・・・」そう言いながら「初めて」というすき家の
器に何度も箸を運んでは、ムムっと首を傾(かし)げる。「うなぎの(焼きや蒸しの)加減は吉野家のほうが
好みだけど、すき家も悪くないね。・・・ふっくらと骨っぽさもない。濃い目のタレがいい。軍配を上げると
したらすき家かな」脇から味見させてもらうと、吉野家のうなぎの身は3片を合わせてあるだけに、
やや固めに仕上がって、脂っぽさも感じる。すき家はかなり柔らかい加減で蒸しの工程を感じさせる。

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■「固めで、冷めても旨い」ご飯も両社、高評価
 では、米はどうか?買って少々時間が経ってしまったが・・・。「どちらもいい具合に炊き上がって
いるね。うな丼には固めでないと。それを証拠に冷めても旨い。すき家のほうが大粒で嚙むうち甘味も
強いかな」確かにタレが飯によくなじんで、そこでも差が出るようだ。うなぎも「にしむら」ではもちろん
国産を使用しているが、富岡さんによれば、最近では中国や台湾産も侮れないのだとか。

 「そもそも日本人の好むよう養殖され、生きたまま輸入されるので、旨さを引き出すのはあくまで工程。
届いたその日に捌き、機械であれ的確に作業すれば、それほど味の差は出ない」とキッパリ言い切る。
工場生産といえども、吉野家・すき家はかなりの工夫をそこに費やし、年々、質の向上にも努めていると
言えそうだ。うなぎを焼いて20年以上のベテラン職人に思わぬ太鼓判ももらい、チェーンうなぎもまんざら
ではないと思わされた。

取材・文/鈴木隆祐