大増税と賃金の減少によって、「ワーキングプア」が大量発生。社会の中核を担う30代、40代の
疲弊が日本経済に深刻な影を落とす。

◆就職氷河期から10 年 恐怖のシミュレーション
 2020年、東京 コンビニエンスストアでアルバイトをする小島翔さん(30)は法科大学院に通いながら
司法試験合格を目指している。7年前、有名私立大学を卒業した小島さんはかつて、キャリア官僚を
目指していた。在学中から国家公務員を目指していたものの、あいにく東日本大震災の翌年、政府が
仝務員の採用を大幅にカットすることを決定。一時的に異常に狭き門となった公務員試験に
2度チャレンジしたものの、いずれも採用までには至らなかった。

 小島さんは、民間企業に就職する気持ちになれず、司法試験へ目標を転換したのだった。だが、
生活は苦しい。学費だけは親に出してもらっているが、いまさら生活費の仕送りまでを頼むわけにも
いかず、収入は早朝にできるコンビニバイトと家庭教師、合計月収12万円のみ。家賃5万円の
アパートで暮らしながら、自身の将来を案ずる毎日だ。本来、目標を達成するためにはアルバイトを
控え、勉強に集中すべきことはわかっているのだが、もはやそうも言っていられない。

仝務員の採用カット・・・政府は平成25年度の国家公務員の新規採用数を平成21年度比で
56%減となる3750人程度に抑制する方針をすでに決定している。当初は7〜8割の削減を目指して
いたが、刑務所を所管する法務省や原子力規制庁を新設する予定の環境省などが反発し、この数字に
落ち着いた。
地方公務員についても採用数を制限する動きが広がっており、現在就職活動中の大学4年生は戦後
最大級の「就職氷河年」にブチ当たる格好だ。


◆別れた彼女が別の男性と結婚

 大学時代の仲間にも就職していない友人が多い。収入を聞いたことはないが、自分と似たり寄ったり
であることは間違いない。会っても、お互い将来のことはあまり話題にしないようにしている。ナーバスな
問題になっていることはお互い十分に理解しているからだ。皆、まともな会社に就職したいという希望は
持っているが、どこも採用がない。もちろん、30歳ともなれば、普通の就職が厳しいことは分かっている
のだが。

 5年間、交際した同級生の彼女がいたが数年前に別れた。最近、その彼女が故郷で別の男性と
結婚したことを知った。フリーターという不安定な立ち位置では将来像を描けず、小島さんは
自分から別れを切り出した。別れる際、「弁護士になったら連絡する」とは約束したが、もうその必要も
ないだろう。
10年前、思い描いていた30歳の自分は、新婚家庭を築き、中央省庁の係長としてバリバリ働く姿だった。

 だが、現実は年収150万円のフリーター。結婚など夢のような話だ。 どうしてこうなって
しまったのか、小島さんはやり場のない不安を覚え、深いため息をついた。これまでは「何とかなるさ」と
思っていたが、30歳まで国民年金もまったく払っていなかった小島さん。

 一人っ子として親の老後のことも考えなければならないのに、いまのまま無職だと悲惨な生活が
待ち受けている。小島さんはあと3年以内に司法試験に合格できなければ、司法書士などに目標を
下げて、早く仕事を決めたいと考えている。

年収150万円フリーター・・・フリーターの収入に関する公的調査は意外に少ないが、2004年に
UFJ総研(現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング)が発表した調査レポートによれば、正社員の
平均年収が387万円なのに対し、フリーターは106万円。
また、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査などによれば、大卒男子の生涯賃金ベースでは
正社員が約3億円なのに対し、フリーターは約6800万円という結果が出ている。もちろん20代から
60代までずっとフリーターという人は少ないだろうが、現在フリーターで年間150万円を稼ぐ人は、
それなりに稼ぎのいいフリーターと言えるかも知れない。ちなみに中小企業であっても正社員になれば、
平均年収は22歳で250万円程度になる。