◆「会いにいける」等身大のアイドル

 AKB48のコンセプトは「会いにいけるアイドル」だ。専用の劇場を秋葉原に持ち、低価格でライブを提供する。ファンはそこに足を運ぶことにより、いつでも等身大の彼女たちに会うことができる。 どんなに人気が過熱しても、この「ライブが原点」の姿勢を守り続けてきたことが、AKB48のコアなファン層を作り上げた。

 「かつて、地方のファンはアイドルに会うため、あるいは情報を取り込むために多額のコストをかける必要がありました。しかし、ネット時代のいまは大幅に少ないコストでアイドルのライブ映像を視聴することができます。またグループアイドルのAKBは人数も多いですから、露出が多く、いろいろな場所でサイン会やイベントを開催できる。そのこともAKBがデフレに強い理由です」<田中秀臣:「AKB48の経済学」(朝日新聞出版) 著者であり、上武大学ビジネス情報学部教授>

  AKBがライブを重視した背景には、音楽業界の収益モデルが劇的に変化したことがあげられる。 これまで歌手たちはCDやビデオを売るために、ライブを行なっていた。 しかしネット時代に突入し、データのコピーやダウンロードが(違法なものも含めて)容易になり、CDの売上は激減。ライブを収入源にする戦略にシフトせざるを得なくなった。

 「いまはテレビでも人気爆発のAKBですが、もし人気が落ちてきたときでも、最悪ライブで売り上げを立てるという考えがある。これは、かつて存在した『おニャン子クラブ』や『モーニング娘。』といった人気グループアイドルの売り出し方とは明確な差異があります」 とにもかくにもテレビに出て、視聴率が取れなくなったらその役目を終える――AKBは、こうしたグループアイドルとはまったく違った航路を選択していることになる。

P17AKB


◆「心の消費」時代に対応したシステム

 AKB48は、ネット時代のアイドルだ。 関連グループや研究生を合わせると、常に100名以上のメンバーが活動しており、それぞれがブログなどで個人の日常を発信している。一般層にも知名度があると言えるのは、テレビにも登場する上位の数人に過ぎないが、水面下の残り100人が、コアなファンとともに、その成長物語を共有する精神的世界を構築している。
 田中教授は、その水面下の世界を「心の消費ネットワーク」と表現する。

【AKB48が示す時代のキーワード】

1.「不況型」アイドル
若者の可処分所得が減少するなか、低コストで萌えと癒しを提供してくれ、さらに成長物語を共有できるアイドルがコアなファンの支持を集めている。ライブが基本だが料金は低価格。「いつでも会える」が最大のコンセプト。

2.「心の消費」ネットワーク
たくさんのAKBメンバーのなかから、自分だけが選ぶアイドルと、小さな物語を共有する。そうした無数の「精神的つながり」が非常に強固なファン層を形成し、ビジネスモデルの中核となっている。

3.「総選挙」システム
ネット時代のアイドルは主導権をファンに預け、公正、透明な運営を心がける。そのことによってメンバーのモチベーションとファンの「応援したい」という気持ちは常に純化され、長期にわたって活躍し続ける土壌が形成される。