「東日本大震災以降、富士山の東斜面で噴気が発生するなど、マグマの上昇を思わせる兆候がいくつか表れています。すぐに富士山の噴火に結びつくとは限りませんが注視する必要があります」と語るのは琉球大学の木村政昭名誉教授。

 1707年の宝永大噴火を最後に沈黙を続けている富士山。周期論的にみても、いつ大噴火が発生してもおかしくない。

P33富士山


 「富士山では2004年ごろから体では直接感じない低周波地震の発生回数が増えています。この地震はマグマが地下から押し上げられることによって発生するもので、富士山が再び活動期に入ろうとしていることを示す現象ではないかと思われます」(木村名誉教授)

 つまり、いま富士山には、銃身に弾を込めるようにマグマが溜まりつつあり、そこに引き金を引くように大地震の衝撃が加わればマグマが一気に噴き出す可能性があるというのだ。

 さらに噴火後の被害について木村名誉教授は語る。「過去の富士山の大噴火には2つの種類があります。とつは山の周辺だけに溶岩が流れて、青木ヶ原樹海を生んだ平安時代の貞観大噴火(864〜866年)。もうひとつは、江戸にまで火山灰を大量にまき散らした宝永大噴火です。貞観大噴火と同じタイプなら首都圏まで被害が及ぶことはないでしょうが、宝永大噴火のタイプであれば都心部にも数センチの火山灰がたまり交通マヒなどの災害を引き起こす可能性があります」(木村名誉教授)

 火山灰は数ミリ程度の積灰でも新幹線、飛行機はともに運転・運航中止となり物流関係は遮断。呼吸器官や目など人体にも悪影響を及ぼす危険がある。そのほか、上水道汚染、電力の供給停止など首都機能は大ダメージを受けるとされている。 

 こんな恐ろしい予測があるのだが、政府は大地震対策に気を取られ、富士山噴火については「具体的な対策がみえてこない」(木村名誉教授)のが実情だという。

木村政昭 (琉球大学名誉教授)
1940年神奈川県生まれ。海洋地質学を専門に、火山活動と大地震を研究し、阪神・淡路や新潟中越沖地震を予測した。おもな著書に、『富士山大噴火! 不気味な5つの兆候』(宝島社)、『大地震の前兆をとらえた!̶警戒すべき地域はどこか』(第三文明社)など多数。